原井宏明の情報公開
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第5章 考慮段階から準備段階へ

Treatment Improvement Protocol (TIP) Series 35
Enhancing Motivation for Change in Substance Abuse Treatment

  1. 薬物依存治療動機づけ
  2. 第1章 | 第2章 | 第3章 | 第4章 | 第5章 | 第6章 | 第7章 | 第8章 | 第9章 | 第10章 | Appendix A

コミットメントを高める

 考慮段階はしばしば変化の逆説的な段階である。両価感情を持つことが考慮段階を慢性的で、そして非常にいらだたしい状態にさせる。明らかに変化に対する興味は傾倒ではない。両価感情は傾倒への大敵であり、かつ長期の熟考に陥る最大の原因となる。
 クライアントがこの両価感情をうまく処理し、バリアに対処し、問題行動を起こしたくなる気持ちを抑え、そして特殊な問題を処理して行ける自己効果の感覚がいくらかでも増加させる様手助けすることは、全て段階に適した戦略である。(Diclemente, 1991)

 本章ではクライアントの方針決定能力を増強させることで彼(彼女)等の変化への傾倒を増加させる戦略について述べる。ほとんどの戦略の中心にあるものは、前の章で述べた様に答えの一定していない質問や、聞き返すことを通して引き出したり、探究したりするプロセスである。
 この章はまず外在及び内在する動機づけについて検討し、クライアントが方針決定し、傾倒していくのを増強させる為の、内在する動機づけに繋がることを手助けする方法について述べる。次に方針決定の為のバランス戦略に焦点を当てる…これは変化による利益とその代償を探り、クライアントが作り出すであろう変化についてのクライアントの価値観を探るための効果的な道である。
 3番目にはクライアントが変化への方針決定を行う状態に近づく時の個人的選択と責任感の重要性を強調する。

 ゴールを探り、設定する事は又傾倒を強化するのに有効となり得る。というのは、本来変化が成し遂げられた後の人生がどの様なものになるかを想像する過程が、方針決定バランスを強く正方向に傾けることになるからである。

 最後にクライアントがゴール設定する時の自己効果の重要な役割を再度強調する。これらの戦略はここでは直線方向に紹介されているが、探究の各プロセスは最後のものから展開され、クライアントとの検討の中ではこれらのプロセスは同時に、もしくはここで用いられているものと違った順序で起こり得る例として、クライアントはゴール設定や特定の変化(第6章を参照)を始めるかもしれないが、同時に両価感情よりも探り続ける。(Figure 5-1参照)

外在動機づけを内在動機づけへ変化させること

 あなたのクライアントが変化への準備を行うのを助ける為には、クライアントを現時点まで引っ張ってきた外在及び内在する動機づけとなるものの範囲を理解することである。多くのクライアントは外在する動機づけのみを認識しながら考慮段階を進んで行く。そしてこの外在因子が彼らを変化へと押し進め、治療に向かわせる。第4章で検討した様に、多くの異なる外界の動機づけ因子がクライアントをうまく治療に誘いこむかもしれない。それらには、配偶者、雇い主、臨床家、家族、法廷等がある。外在する動機づけ因子はクライアントを治療に入らせ、留まらせるのに有効なものとなり得るが、自己の内在する動機づけが実質的で長続きする変化にとっては重要となる。

 内在する動機づけは、クライアントが"現在の自分の位置"と"希望する位置"との間の相違に気付いた時にしばしば始まる。人生のゴールや深い価値を集中的に探ることが、内在する動機づけを強化する道になり得る。
 クライアントの中には精神的に成熟するに伴い、思春期の反抗、無視といった態度から脱皮し、より実在的な"自分はどこに向かっているのだろう""自分は何者なのだろう"といった関心事を探る様になるものもいる。
 答えを求めているうちに、クライアントは自虐的であったり、他人の迷惑となった過去の過ちや行動をしばしば再評価する。あなた方はくり返し聞くことでこの精神探究を活性化できる。そして動機づけ戦略を通してクライアントが現在の自分の位置と将来希望する位置との間の違いを認識することを助長できる。初めの方の章で述べた様に、クライアントがこの違いに気付く事でしばしば改善に向かう強い欲求を抱く事になる。このことは正方向への変化の為の、自己動機づけの本質的要素である。時々内在する動機づけは、役割を果たそうとする葛藤や家族、集団からの期待から発生する。例えば、物質使用の為に子供の養育権を剥奪された母親は、良い母親としての務めを果たすべきという強い動機づけを抱くかもしれない。

 他のクライアントの中には、慢性的な物質使用で、文化的なコミュニティーとの繋がりを断ち切ってしまうものもいる。彼らは教会へ行くことを止めてしまったり、他人の手助けをしたり、若い人々の模範となる様な文化的に確立された役目を果たすことを無視する様になる。
 丁度他人の尊敬を得たいという欲求がそうである様に、帰属意識や強さの源として文化的伝統と再度繋がりを持ちたいという思慕の念が強力な動機づけとなるものもいる。正方向の変化も又、改善された自己像や自尊心に繋がるのである。

 クライアントが外在する動機づけを、内在する動機づけに変えることを手助けすることは、彼らが変化について考慮することから行動に移そうと決心するのを助ける重要な部分となる。まず、クライアントの現在の状況から取りかかり、そして実在する外在の動機づけと、クライアント自身が気付いていないか、又は表現するのが易しいとわかっていない内在する動機づけとの間の自然な繋がりを捜しなさい。敏感かつ敬意を持った探究により、自己動機づけを行わない様に見えるクライアントにおいても、未開発の内在する動機づけが発見されるかもしれない。

 動機づけ面接の為の標準的な訓練以外にも内在する動機づけを確認し、強化する有用な方法がいくつか存在する。
 第一にあなたのクライアントに興味を示すこと。興味を示し、ずっと関心を維持し続けなさい。クライアントの変化を遂げたいという願望は、ほとんど物質使用に限ったものではなく、彼らは他の行動を変化させる事について語る方が容易だとわかるかもしれない。多くのクライアントは生活上のいくつかの機能的な部分を憂慮しており、地域社会と再度関連を持ちたいとか、経済状態を向上させたいとか、職を探したいとか、恋をすること等を望む。又多くは人生のいくつかの面において高度に機能的且つ生産的であり、特殊な技術や知識、そして他の競争において大いなるプライドを持っており、これを傷つけられる事を嫌う。
 クライアントが彼らのトラブルや能力について自発的に語り出すのを待っていてはいけない。彼らに興味を示してみせ、そして彼らの人生にとって物質使用がいかなる影響を及ぼしているかを尋ねなさい。何の問題も認めないクライアントに接する場合でさえも、関心事を示す為に、彼らの人生について質問し、治療上の同盟関係を強化しなさい。

 もう一つの有用な戦略はクライアントの怒りを正の意味を含めて再表現することで、彼らの強制されたと感じている負の供述を組みたて直すことである。古典的な例を挙げると、クライアントの彼を脅す妻に対する憎しみを持つ場合、それは結婚に対する関心や投資が続いている徴候であると解釈し直すことで、クライアントにその問題行動を解決・変化させ、夫婦関係を守る方向に動かすことになる。

 公然と強制的に治療に入らされたクライアントはある挑戦的な態度をとる。この様なクライアントに対しては、内在する動機づけを確認し強化してあげなさい。それにより変化が外からの脅しによってではなく、内面から起こり得る。外からの脅迫は抵抗を誘発するばかりでなく、もし脅しとなる事柄が起こらなかった場合には…例えば夫が飲酒を再開した時に妻が離婚や別居を行わなかった場合や、釈放された犯罪者が治療の継続に失敗した時に保護観察員によるクライアントの自由の取り消しが行われなかった場合等…既に獲得されたいかなる変化も壊れてしまうかもしれない。
 これらのクライアントは自分達の自由意思で正方向の変化を選択するに違いない。なぜなら違反した場合罰せられるからという理由で変化を望むものではなく、変化が有意義なものであるから望むためである。

家族、仲間、文化的価値等を、変化を求める気持ちに結びつけること

 保護観察の状態で治療を強制されており、人生の大半を刑務所で過ごしてきた南西部のヒスパニック系のグループを扱っていると、彼らは年をとり囚人生活に飽き飽きしていたことがわかった。カウンセリングをやって行くうちに家族や文化とのかかわりを喪失する不安を述べるものもいるし、多くは息子や甥にとっての大人の男性としての役割を果たしたいという希望を表明した。彼らは全員自分達の家族が何世代にもわたって暮らしてきた小社会の中での己の価値と、自尊心という観念を取り戻すことを望んだ。
 新しく動機づけインタビューの訓練を受けた時、ずっと以前に助けを必要としていないと結論付けた集団の中にも、大きな口の切られていない、自己動機づけのタンクがあることを見出した。我々はこの集団に対する我々の過去の概念…つまり彼らは治療を望んでいないという概念…を変えねばならなかった。そして彼らが刑務所の外で、そして社会の中に留まる為の援助と支えを欲しがっているものと見なさねばならなかった。

Carole Otero, Consensus Panel Member

Tipping the Decisional Balance

 どういう決定方針に向かう時も、殆どの人々は考慮中の行動による代償と利益をてんびんにかける。行動変化においては、この様な考えは"decisional balancing"として知られている。これは物質使用の"良い"面…変化すべきでない理由及び物質使用の"より良くない"面…変化すべき理由を認識した上で評価する過程のことである。自己変化についてのリサーチにより明らかになった事であるが、常習性行動をうまく変化させるのに成功した人の多くは、この評価する過程が自分の物質使用問題解決にとって重要であると見なしている(Sobell 他, 1996b)。

 方針決定過程のある点において、再度置き換えられそして決定がなされる。クライアントを正方向の変化に向かわせる目的はもちろんその人に物質使用の負の面を認識させそしてその重さを計らせることでバランスを有益な行動の方向へ傾けることである。Baumeisterは人々が大きな人生の変化を遂げる方法を調べて、balanceが"不満の結晶化"としての変化に向かう時に生じる内面の過程について述べた(Baumeister, 1994)。彼は又この過程にはある状況における代償や問題や、他の好ましからざる局面についての理解を恐らく初めて意識的に結びつけることが含まれていると述べている。
 この負の局面を意識的に結びつけることは、人々のその状況に対する認識を変化させ"そうして広い形での不満や欠点が識別できることになる"。第8章のdecisional balancing exerciseに使うべき道具を参照。

 いかにしてバランスを正の変化側に傾けるか、又負の変化から遠ざけるか?Sobellと彼の同僚はクライアントとdecisional balanceを傾ける演習を行う時に全体で4つの目的があることを確認した(Sobell 他, 1996b)。物質使用と変化を別個に秤にかけている、それらの演習の意図は

  • クライアントの物質使用の代償をクライアントの考え方から目立たせたり、巧みな方法で際立たせること
  • 物質使用から得られると思っている報酬を可能ならば減らすこと
  • 変化によって得られる利益を明らかにすること
  • 可能ならば、変化に対しての障害を確認し、弱めること
Summarize Contents

 クライアントの評価後に個別化したフィードバックを提供したり(第4章参照)内在又は外在する動機づけを探るうちに、もしクライアントの懸念をうまく引き出すことができればそれでもうあなた方のクライアントのdecisional balanceに影響を与える為の重要な情報を収集したことになる。あなた方はクライアントが否定的な感じを抱き、又それこそが重要な内在する動機づけとなる。点や範囲についての生きた知識や文書化されたリストまでも持っている。クライアントが賛否を秤にかけることを手助けする最初の一歩は、クライアントの不安のリストを作り、それに共感を示し、不一致を発展させ、そしてバランスを変化の方に重きをおかせる様な、注意深く要約したものとしてクライアントに提示することである。これらの不安点に関してはクライアントの同意が必要となる為、この要約文はそれがクライアントの本当の不安点であるかという質問で締めくくられるべきである。

Explore Specific Pros and Cons

 物質使用と変化の利益と代償の重さを量ることが方針決定バランスを使う仕事の核心である。臨床家の中にはクライアントに2つの欄からなるリストを書き出す様依頼することが役に立つとわかるものもいる。これは宿題として作られ、話し合いで検討されるか、又は話し合いの中で作られる。あるプログラムでは賛否両論を書き出すワークシートを2枚コピーとして使っており、一枚をクライアントが持ち帰り、もう一方は後に使用するか、将来の話し合いで修正する為に臨床家のもとに置いておく。
 文書化されたリストはあるクライアントにとって決定に至る因子を定量するのに役立つ。理由を書いた長いリストを変化に向かうものと見なし、短いリストはそうでないとすると、結局はバランスが壊れてしまう。一方逆のケースではまだどれだけの仕事がなされるべきかを示すことができ、そして未熟な方針決定を避けることができる。量だけで決定するものではない。多くのクライアントは変化をなすべきでないとするし、この理由が変化すべきとする1ダースもの理由の重さに匹敵することがわかるし、強い両価感情を持つ様になる。
 対立する力の各々の真の強さを知ることが重要である。物質使用を継続する事を支持、もしくは反対する理由、つまり変化に対する正と負の局面はおおいに個人的なものであり、理性的というより感情的なものであることも又覚えておくべきことだ。ある者にとってバランスを正の変化に傾ける要素も、別の人にとってもそうであることは滅多にない。更にこの賛否の表の一項目におかれる価値や重さも、時と共に変化するであろう。

 あなた方が文書化されたワークシートを用いるか否かに拘わらず、クライアントが両価感情を示したり、変化に反対したり、変化が重要でないと考える理由を強調する時は注意深く耳を傾けるべきである。クライアントが物質に引きつけられる理由を率直に明らかにし述べる様勇気付けることは実りあるものである。なぜなら、クライアントは治療プログラムにおいて物質使用の何を好み、何を楽しんでいるかを調べることは滅多にないからである。更にクライアントに物質使用の何が好きなのかを表明する様(例、それは楽しい、和やかになる、興奮する)頼むことはラポールを確立することになり、又クライアントを非審判的な見方で再評価することになる。物質使用の正の面から手がけていくことは又クライアントに物質使用の良くない面について自発的に検討させる事に繋がる様にも見える(Saunders他, 1991)。

 なぜ物質使用が魅力的であるかという情報を得ることはクライアントの変化への傾倒の程度と自己効力感を感じている度合いを測るのに役に立つ。例として、あるクライアントは物質使用にあまり喜びを感じていないかもしれないし、彼らの両価感情は絶対に変化が達成できないという強い信念に基いている。この様なクライアントへの働きかけは、物質使用において非常に魅力的な言葉で語り、変化を遂げる理由が見えないクライアントとは違った線で進んで行く。

 クライアントが過剰の物質使用に固執するもう一つの理由として薬理学的な依存性がある。高濃度のアルコールやバルビタールを含んだある種の物質は使用中止により不快というばかりでなく、危険性を伴ったリバウンド効果を持つ。耐容性…同様の効果を得るのにより大量の物質を必要とする様になること…も又睡眠薬やトランキライザー使用者が処方された量を超えて使用する様になる理由となる。薬物使用や飲酒と関連して形成される習慣は物質に固執するもう一つの強力な原因でこれ壊すことは困難である。パーティーでの社交において手にグラスを持つ感触は、リラックスし陽気になれる事と関係がある。喫煙者は禁煙を試みている時には、自分の手をどう使うかを知らないし、口に何かを入れておきたいと思うであろう。

 あなた方のクライアントが変化を達成したいと思った最初の理由は数少ないかもしれないが、各々の理由は重要であり、探究し支持されるべきである。変化を支持することはしばしばクライアントの内在する動機づけと結びつく為、これらの動機づけを再吟味することが、バランスシートの正の側の項目をより多く引き出すことになる。既に述べた如く、帰属意識、役割、自己尊厳、自己イメージそして伝統的な文化や家族内の価値に戻ること等に関する不安が、変化を求める特異的な理由に結びついているのかもしれない。

 方針決定バランスの訓練をクライアントと共に行うことは、更にもう一つの建設的な機能を持つ。クライアントは変化に関する議論の両方の側に立ち、自分の持つ両価感情のうちの対立する方を声に出すことを強いられる。しかしこれは複雑な過程であり、クライアントが決心と両価感情の間を行き来する時には忍耐と各因子を数回分析し直すことが必要となる。

Normalize Ambivalence

 方針決定バランス訓練に取り組んでいるクライアントは決定に近づいていると…つまり長期間続いてきた行動を今まで行った中で最も変化させようとすることに近づいているし、それゆえ内面の争いにも近づいていると感じる事が多い。そして自分は変化を遂げることができるのか、又変化を欲しているのだろうかと疑う。
 この時点での戦略として大切な事は、クライアントに争いの感情や、不確かさや疑念が生じる事は普通の事であると説明し、安心させる事である。
 過去の多くのクライアントが、たとえ複雑な感情の多くを解決し、決定に近づいているとしても、この時点になると同様の強い両価感情を持ったことを説明することで、本質的にあなたのクライアントの両価感情を正常化することになる。この時点に達したのにうろたえそうに見える他の多くの人々が探究と討論により自分の方向を取り戻してきたというあなたの元気付けの言葉をクライアントは要求している。

Reintroduce Feedback

 第4章で検討した様に、評価に続いて個人別のフィードバックをおこなうことがクライアントに動機づけをさせるのに非常に有用となり得る。あなた方はクライアントが方針決定を考慮することに影響を及ぼす為に評価結果を使い続けることができる。評価に基づく客観的な医学的、社会的、神経精神学的フィードバックを行うことで、多くのクライアントに変化を熟考する様促すことになる。評価の情報を再吟味することでクライアントを変化の必要性に集中させることができる。クライアントの変化に対してクライアント自身よりもより臨床家の方が投資している様に見えると、クライアントは不安になると報告されている(Declemente and Scott, 1997)。客観的な評価データを再導入することでクライアントに変化の必要性に対して持っていた以前の洞察を思い出させることができる。

 例えば、あるクライアントが健康上の不安から過度の飲酒を止める様に内面から動機づけされるかもしれないが、又禁酒が不可能であるかもしれないという恐怖に圧倒されるかもしれない。重篤な肝疾患のリスクや心疾患の家族歴についての医学的評価に基くフィードバックを再導入することで方針決定バランスに重要な重りを加えることになれるであろう。

Examine the Client's Understanding of Change and Expectations of Treatment

 決定の方向に傾きかける時に、何がクライアントに意味を持つのか、又何をクライアントは治療に期待するかということを理解することが重要である。クライアントの中には物質使用を止めたり減量することが生活全体を変えることと同様と信じるものもいる。
つまり、近所付き合いから遠ざけられ、友人や家族との絆を切られてしまうと。
 中には、すべてのことを一晩で変えてしまわなければならないという様な圧倒される様な見通しを考えるものもいる。友人の治療経験から、あるクライアントは治療の中には数週間の入院プログラムや治療施設により長時間滞在することが含まれたり、治療グループのリーダーは対立する方法をまるで新兵訓練所で新兵を打ちのめすかの様に用いるであろうと思うかもしれない。又、数多くの治療プログラムに入りながら変化を試みるのに失敗したものもいる。これらのクライアントにとっては治療という概念そのもの…更にもう一回変化を試みること…が失敗を意味するのである。これらの意味とそれから期待できるものとクライアントと伴にさぐっていると、どんな行動が交渉の余地があり、又そうでないかを感じる様になる。例えば、あるクライアントは家族がそこに住んでいるという理由から近所を有名な薬局を離れて暮らせないと言うかもしれない。又、節酒することしか頭にないと言うものもいるし、更に、他の方法が全て失敗に終わったことから完全に物質使用を止めて、治療集団内に留まることが唯一の選択肢であると強く述べる者もいるであろう。

 治療に期待できることを探ることにより、治療に関する情報を紹介する機会や使える選択肢についてクライアントと予備的な検討を開始する機会を得ることになる。
 クライアントが治療に期待していた事が実際に起こったことと一致した時、より良い結果が得られる(Brown and Miller, 1993)。従ってクライアントの期待を引き起こしクライアントに治療についての教育を開始するのに早すぎることはない。

Re-explore Values in Relation to Change

 方針決定バランス訓練によりクライアントが自分達にとって価値を探り、それを明らかにして表現することを手助けし、そしてこれらの価値と正の変化を結びつけるもう一つの機会が提供される。
 あなた方のクライアントにとっての価値は変化すべき理由とすべきでない理由の両方の中にくり返されるであろう。例えば、近所のギャングとの薬物取引にかかわっている少年(少女)にとっては他の仲間への忠誠心からギャングから足を洗う等という選択肢には交渉の余地はない。
 忠誠心と帰属意識は彼(彼女)にとって大切な価値であり、あなた方はそれを他のグループにも結びつけることができる。つまり、スポーツチームや軍隊の様な帰属意識を生み出し価値の中心核となるものを写しだす組織に類似した忠誠心を鼓舞することのできるグループに。非常に勤勉で学業成績も優秀な家庭出身の若い女性は高校を卒業し経済的に独立することにより同時の価値感の中に戻ろうとするかもしれない。

 クライアントが中心となる価値を口にするのを聞くことは、彼らが正の変化へ傾倒するのを手助けすることになる。もし彼らが、家族、地域社会、文化等と共有できる様な大きな体系の価値の中で変化の過程を作ることができれば、変化を熟考するのがより容易となる。

Other Issue in the Decisional Balance
Loss and grief

 人生のある進路を断念することは、親友を失うのと同程度に強烈にこたえるものであるため、多くのクライアントは悲しみにくれる時間を必要とする。この後にやっと前進し、全く平静になることができる。彼らは、この喪失を認め、嘆き悲しまねばならずあまり早急に彼らを変化の方にせき立てすぎると、結局は決心を鈍らせてしまう。
 この時点では、忍耐と共感が彼らを安心させることになる。あなた方はクライアントが新しく獲得するものが失ったものに取って代わり得ると信じる様手助けできる。

Reservation or resistance

 既に検討した様に、変化に対する深刻な疑念は、しばしば抵抗と呼ばれるが(しかしより一般的には否定と誤解されている)、動機づけインタビューにおいてあなたとクライアントが異なった見通しを持っている合図となり得る。クライアントが準備段階に入る時に、もし準備が完了しないうちに変化に傾倒させられようとしたりクライアントのゴールとあなた方が考えるゴールが一致しない場合には彼らは防衛的になる。彼らはこの抵抗を言葉でなく態度で示すかもしれない。例えば、約束を破ったりもっと時間が欲しいとか、進行を送らせて欲しい、とのメッセージを送るものもいるであろう。これらのクライアントと一緒に両価感情を探り続け、彼らが変化の過程のどの時点にいるかということを再評価すべきである。

Premature decision making

 方針決定バランス訓練によりあなた方は又、クライアントが変化への準備ができているか否かを感じ取れる様になる。もし、クライアントの賛否の表現があいまいであれば、彼らはこの段階での変化へのゴールを非現実的で彼らの能力と資質を良く理解した上でのものではない、と表現するかもしれない。あなた方は、クライアントがあなた方が聞きたがらないだろうと思うことを話しているということを感じ取れるかもしれない。

 まだ変化への方針決定ができていないクライアントは、あなた方にいろいろな方法でそれを知らせ様とする。クライアントが失敗の方向に向くのを許してしまうと、彼らは変化の過程を全て放棄してしまうが、あなたの判断や世話に対する信頼を失ってしまう。傾倒の過程を遅らせてクライアントと伴に考慮段階に戻るべきである。

Keeping pace

 クライアントの中には自ら物質使用を止めた後に治療に入るものもあるし、又、最初の診療予約を取る為にクリニックに電話を入れた日に物質使用を止める人もいる。
 この様な人達は既に物質使用中止に傾倒している。もしあなた方が彼らの不安を引き出したり、方針決定バランス訓練を持参しようとすると、行動に向かっているか行動への準備が完了している彼らが前進するのに役立つ勇気付けや奨励や技術を提供し損なうことになる。この様なクライアントは賛否を口述しなければならない事や決定に至る不安を述べなくてはならない事に我慢ができず挫折する。
 この様なクライアントとは即に変化の計画をたて行動段階に入るべきであるが、但し、残存したり、再出現するかもしれない両価感情には注意を払っておかねばならない。

Free choice

 多くの人々は、通常思春期に家族や社会への反抗として薬物使用や飲酒を始める。物質使用を続けることは彼らの自由でありつづけるという意思表示であるのかもしれない。つまり、他人からある一定の方向に行動し生活する様要求されることからの自由を。
(タバコの喧伝家はしばしば喫煙のもつこの自主性と独立性の面につけ込んでくる)
 この様にあなた方はクライアントが自由を失いたくない為に変化を遂げられないと言うのを聞くかもしれない。この信念があるクライアントにとっては早期に作られた主体性に結びついている為、彼らが変化できない理由のリストの中の強力な要因となっている。しかし、クライアントの年が進むにつれ、反抗するという自由が本当に自由なのか否かをより多く探るようになる。このことに順応してくるとあなた方は思春期の反抗というものは実に限られた選択肢…つまり期待される事と反対のことをやらなければならない…を反映しているのかもしれないと説明できるようになる。クライアントが年をとるにつれ、本当の自由…つまり反抗するのではなく自分が真に選んだ事を行うという自由を率直に選択する様になる。

Emphasizing Personal Choice and Responsibility

 カウンセリングに動機づけ戦略でアプローチする際には、クライアントに選択肢を与えることがあなた方の仕事ではない。選択はあなた方が所有しクライアントに与えるものではなく、クライアント自身が作り出すものである。選択は既に、そして常にクライアントと伴に存在するもので、あなた方がクライアントに選択させるものではない。クライアントが選ぶのだ。あなた方の仕事は、クライアントが基も興味を示す選択を行うのに手助けすることである。動機づけアプローチの間中ずっと伝えるべきメッセージは"クライアント自身の責任"と"選択の自由"である。変化の過程のこの段階ではクライアントはあなた方から以下の様な発言を聞くのに慣れなければならない。

  • 「このことに関して何をすべきかはあなた次第です」
  • 「誰もあなたのためにこれを決定することはできません」
  • 「誰もあなたのためにあなたの薬物使用を変えることはできません。それはあなた自身しかできないのです」
  • 「このまま飲酒を続けるか、又は変わるかあなたが決定できるのです」
Exploring and Setting Goals

 一旦クライアントが正方向の変化を遂げる決心をし、傾倒していることが明らかになったならば、ゴールを設定すべきである。ゴール設定は、行動を探り心に描くことの一切であり準備段階の初期から中期に特徴的である。クライアントの方針決定についての考えを要約し、再吟味してしまえばあなたはもう、クライアントがどのようにしてバランスシートの正の側に載っている変化を遂げる為の理由を扱いたいと望むかという方法について質問する準備ができたと言って良い(Fig.5-2、s5-3参照)。
 ゴール設定は互いに作用し合うことではあるが、それはクライアントの責任である。ゴール設定について語る過程が変化への傾倒を強化する。

 クライアントは人生上のいろいろな分野でゴール設定を行うかもしれない。それは物質使用に限ったものではない。
 いくつかのゴールを設定する者は、それらの順位付けをするのに手助けを要するかもしれない。彼らのゴールは可能な限り現実的かつ特異的であるべきで、そして彼らが以前に述べた物質使用に関する不安を扱ったものであらねばならない。子どもを取り戻すこと、従業員仲間のもとに戻ること、経済的に独立すること、乱用から足を洗うこと、そして学校に戻ること等がクライアントが努めて向かおうとするゴールであろう。クライアントが将来に対してより多く希望を持つ程、彼らは治療上の各ゴールを遂げる様になる。初期のゴールは短く、測り易くそして現実的なものであるべきで、それにより、クライアントが成功の度合いを測定でき変化について希望を持ち、自分自身に対しても良い気分を感じるようなものであるべきだ。

 もしあなたのクライアントがあなたから見て到達不可能と見えるゴールを設定した時にはその懸念について話し合うべきだ。それは、ゴール設定に際してのクライアントとの相互作用過程のッ受容な一部である。
 どのようにしてクライアントがゴールを設定するか、又どんなタイプのゴールを表示するかを観察することであなた方はクライアントの持つ自己効力感、傾倒の程度、そして変化への準備性についての情報を得ることができる。

 あなたのクライアントは、あなたが同意しなかったり、施設の方針に一致しない「行動」の過程を選択するかもしれない。例えば、物質使用を減量しようという決心はあなたの信念である「即に中止すること」や不法物質使用を全く認めようとしない施設の方針と対立するかもしれない。
 詳細についてはFig5-4で扱う。

Goal Sampling and Experimenting

 長期の変化に傾倒する前に、短期間の試験的な物質使用中止や減量をしてみることで益を得るものいる。その成功、又は失敗は大いに物質使用中止というゴールと長期の変化への傾倒を増強する。試みる期間を個人の挑戦として呈示することは特に有効である。
 3ヶ月間の禁酒ができれば長期にわたり、アルコール依存者を緩和できるという知見に基いた上で3ヶ月はの試験期間が推奨できる。あるクライアントにとっては長すぎるかもしれないが、その時はより短い期間としても良い。以下のリストに試験的物質使用中止の利点を述べる。

  • クライアントは物質に染まらない。しらふの状態がどんな気分かを学ぶ機会を得る
  • 現在の習慣的な物質使用パターンが中断され耐性も弱まる
  • 物質依存症ができ上がっているとすれば、あなたやクライアント両者にとって、その程度を知る手助けとなる
  • クライアントにとって一定期間自己抑制して成功する経験となり、又それを実証できる
  • 急性認識障害からの一定期間の回復が提供される
  • クライアントが心から変化に関心を持ち、その第一歩を踏み出す能力がある事を他人(例、配偶者や法廷)に示すことができる
  • 健康、気分、睡眠パターン等の回復と安定化の為の臨時の時間がとれる
  • クライアントが精神的な物質依存を克服する為の新たな技術を必要としている状況をあなたとクライアント両者が確認する手助けとなる

 成人のマリワナ喫煙者に対して一ヶ月間の試験的禁煙の有用性が調べられた(Stephens et al., 1994)。その参加者達は、評価の結果、個人へのフィードバック、そして短い介入カウンセリングの3つの会合から成る介入に割り当てられた。2番目の会合の終わりにカウンセラーは3回目の会合が一ヶ月後に予定されていることを告げ、更にその時にもクライアントが変化を遂げる気があるかを尋ねたが、こうすることで次回の会合の時に、結果について討論ができるようになる。一ヶ月の喫煙は"do-able"として提唱されている…つまり変化をなし遂げるのに充分な長さであるが、傾倒し過ぎる程長くはない。マリワナ使用に関しての研究からわかった事は、この3つの会合を経験したクライアントは同時期に18回の会合から成る治療を受けたグループと同様の結果を治療後の定期視察で示していた。

この試験的な物質使用中止以外に2つの"*warm turkey"アプローチが述べられてきた(Miller and Page, 1991)。

*cold turkey:中毒患者を突然禁断状態にすること

Tapering down

 この"warm turkey"アプローチは喫煙者が禁煙の前に依存状態を減らす為の方法として広く用いられてきた。
 このアプローチは日単位、週単位の使用量を徐々に減らして長期の最終的なゴールである"中止"に持っていくものである。クライアントは毎日の使用量を注意深く記録し必要な時は臨床家とスケジュールについての会合を持つ。

Trial moderation

 "温和な試み"は物質使用中止に強い抵抗を示すクライアントに対し、唯一の受け入れられるゴールであるかもしれない。次の様なメッセージは伝えない事が肝腎である。つまり「まず試してみなさい。そして失敗すれば戻ってきなさい」と。 
 より親身でより動機づけアプローチであれば「それをあなたがしたいのならばできる限り一生懸命やってみなさい。そうすればそれが役に立つか否かわかります」という具合になる。しかし、かなり努力しても温和な試みがうまくいかなかった場合は、物質中止を考えるというクライアントの同意を求めるべきだ。99人の問題ある飲酒が系統だった温和な飲酒を試した後の長期追跡結果では彼らの多くが最終的には一定した問題ない飲酒を続けるのではなく禁酒を決意した。追跡の結果では又、半数以上が成功できた理由を温和な飲酒で得られた禁酒の必要性に関する識見としていた。(Miller 他, 1992)

 早急な禁酒が通常処方されるが、禁酒状態は最良唯一のしらふを続ける為の道であると確定した研究は一つもない。どういう人が"warm turkey"アプローチにとっての最適の志願者となるかを決める為の更なる研究が必要である。臨床的研究的経験によればこれらの方法はあるクライアント、特により重篤でない問題を持つクライアントに対して有効であることが示されている。(Miller et al, 1992)

Enhancing Commitment in the late Preparation Stage

 あなたのクライアントが最初変化を決意しゴール設定を開始した後でも、変化への傾倒はまだ強化されなければならない。変化の過程のどの時点においても迷いは起こり得るものである。この時点では更なる3つの戦略が傾倒を増強するのに有用である。それらはより小さなステップを踏み出すこと、情報を公開すること、そして将来のことを心に描くことである。

Taking small steps:小さなステップを踏み出すこと

 クライアントに変化を遂げ焦点を当てる分野を選ぶのはクライアント自身の選択であるという伝言を伝える為にあなたはクラインアント"次は何をするの"といった要となる質問をしてきたし様々なオプションを呈示してきた。
 クライアント自身が変化を決意する選択権を持ち、更にクライアントが変化の過程をコントロールして行くということを思い出させることで、傾倒を強化できる。もし、クライアントが今考慮している変化に圧倒されている時であれば、今のペースを落とすこともできるし、より小さな一歩を踏み出し始めることもできるという事を彼らに再確認させるべきである。

 あるクライアントにとっては、他人のケースを示すこと、つまり、一度に一歩づつしか進まなくても大きな一見不可能に見える変化を達成した人の例を示すことが特に役立つことがある。人々を動機づけて変化に向かわせる時には、その様々な話やモデルの重要性を過小評価してはいけない。

Going Publics

 変化を遂げたという願望を臨床家以外の人に話すことでクライアントが責任ある状態になり、内面の抵抗に気付くのに役に立つ。この臨床家以外の人とは配偶者、友人、家族、職場の同僚、教会での仲間、又はアルコール中毒著名団体(AA)のメンバー等のいずれであっても良い。通常変化への傾倒を強化するものである。情報を公開することは、後期の準備段階にいて、この時点までは他人に話さなかったであろうクライアントにとっては重要なステップとなり得る。AAは"白いチップ"を用いることで公的な変化への傾倒についての臨床的知識を応用した。AA会合への参加者でまだ禁酒はしていないが、強く望んでいる者は白いチップを取ることができるが、これは禁酒したいという願望を公的に認めることなる。

Envisioning

 変化が遂げられた後、別の人生を心に描くことがあなたのクライアントの傾倒を強化する強力な動機づけおよび有効な方法となり得る。
 更にどのようにして他人がゴールを獲得したかを話す事はすぐれた動機づけになり得る。変化を心に描く為の訓練の一つとして一年を経た時点でクライアントに自分自身を描く様頼むことがあるが、その一年間に彼らは物質使用により最も傷ついた人生の部分的に彼らが望む変化を作り上げている。あるクライアントは将来の日付でその時の人生がどんなものになっているかを記した手紙を自分自身宛てに書くことが大切だと思うかもしれない。この様な手紙はあなたにそこにいて欲しいと書いた休暇の葉書といった調子を持つ。又、他のクライアントはこれらの情景をあなたに語ることで精神的に安らぐ。

The Importance of Self-Efficacy

 成功へのいくらかの希望がなければ、重大な問題の存在を認めるクライアントでさえも正方向の変化に向かって動こうとはしない。自己効力感は行動変化の重要な決定的因子となる…それは、彼らがある方向に行動することができるか、もしくは特殊な仕事ができることから事件を乗り越える訓練もできるという信念である。自己効力感は希望や楽観主義という考えもあり得るが、クライアントは必ずしもある行動を変えることができると信じる全体的楽観視を持つ必要はない。
 クライアントは、ゴールについて交渉している時や変化の計画を発展させている時に最も多く自己効力感について語ろうとする(第6章を参照)。自己効力感についての声明には次に様なものがあり得る、「私はそれはできない」「それは私の力の及ぶものではない」「それは容易に思える」「それなら何とかできると思う」。
それらの声明からあなたは、クライアントが何ができて何ができないと感じているかを確認することができる。

 自己効力感は、自尊心の様な世界的な尺度ではなく、むしろ行動特異性をもつものである。自己効力についてのあらゆる議論の根底にあるものは"どの様な特異的行動を行うための効力か"という疑問である。物質依存に関していえば自己効力の概念は以下の5つのカテゴリーに分けられる(Diclemente 他, 1994)

  • Coping self-efficacyとは人を物質使用に誘惑するかもしれない状況をうまく処理することを意味する。例えば気が動転した時に物質使用するのでなく、むしろ友人と独断的な話をしたり、誰かと語り合うこと等である。
  • Treatment behavior self-efficacy はクライアントの治療に関連した行動をとることができる能力を意味する。例えば、自己をモニターしたり、刺激をコントロールすること等。
  • Recovery self-efficacyとは依存的行動の再発から回復できるクライアントの能力に関連したもの。
  • Control self-efficacyは、様々な刺激的状況下での行動をコントロールできる能力に対するクライアントの自信に焦点を合わせるもの。
  • Abstinence self-efficacyとは、きっかけとなる様な様々な状況下で物質使用を控える能力に対するクライアントの自信を意味する。

 自己効力感を概念化するもう一つの方法は、クライアントが有意義で楽しみに満ちた物質に関連しない活動に参加できるという能力に気づくことである。これは、あなたがあなたのクライアントの日常活動に関連した変化の戦略にかかわる以前に評価しておくべきである。
 自己効力感は静的な構成物ではなく、動的なものである。各々の特定の状況を上手く処理する為の自己効力感は成功した時は増加し失敗と伴に減少する。したがって希望する変化を維持することができるというクライアントの信念を強める為には再発のリスクがある状況の中で成功する技術をクライアントに与えることが大切である。

 臨床家や研究者達は物質使用の再発のリスクを呈する様な状況や状態を調べることで自己効力感を測定することが有用だとわかってきた。クライアントは、ある状況では高い自己効力感を持つし、その他では低いかもしれない。(第8章のクライアントの特定の状況における自己効力感を測定する道具についての記述を参照)
ある研究によれば物質使用の再発は下記の4つの状況のうち1つ以上で起こる(Cummings 他, 1980)

  • 怒り、抑うつ、挫折といった負の感情状態
  • 他人がバーで飲酒しているのを見たり、休日にリラックスしたいという社会的な圧迫感
  • 頭痛がしたり、疲労感を感じたり、他人の心配をする等の身体的な又は他の懸念
  • 物質が欲しくてたまらないとか意志力を試すためのひきつった気持ちを感じているといった禁断症状や切迫感

あなた方は、クライアントと物質使用行動を変化させるための自己効力感について議論する前に、クライアントの人生の中で彼らが高い自己効力感を感じた他の分野や活動を探すべきである。その後で、あなたのクライアントの技術をどのようにして新しい変化への努力に応用できるかを議論すべきである。
  例えば、古い車を再生しようとしているクライアントは何時間も費やして何故エンジンがスムーズに動かないかを考えるであろう…問題点が見つかるまでエンジンを系統的に分解したり部品を再度組みたてたりしながら。
 この根気強く、又忍耐強い問題解決へのアプローチとその裏に潜む好奇心は物質使用の問題点を認識し解決する為の貴重な力として再構築できる。あなたのクライアントの自己効力感をサポートするほかの方法には以下のものがある(Marlatt and Gordon, 1985)。

  • 変化とは徐々に起こる過程であるという事を強調すること
  • モラルに反した行動を捨てることと比較して新しい技術を獲得することに焦点を合わせること
  • 前進に関してのタイムリーで特異的なフィードバックを提供すること
  1. 薬物依存治療動機づけ
  2. 第1章 | 第2章 | 第3章 | 第4章 | 第5章 | 第6章 | 第7章 | 第8章 | 第9章 | 第10章 | Appendix A

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