疾患7 身体表現性障害

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痛い 声が出ない 歩けない 原因不明の体の症状

検査では異常がないのに体のことを訴える患者

身体表現性障害とは痛みや吐き気,しびれなどの自覚的な身体症状があり,日常生活が妨げられるものをいう。身体症状の原因として内科的な異常がある場合やパニック障害などの特定の精神疾患があるもの,虚偽性障害・詐病は除外される。DSMIVは身体化障害と転換性障害,疼痛性障害,心気症,身体醜形障害などを臨床上の便宜から一つに集めている。ブリケ症候群,ヒステリー,心因性疼痛などと呼ばれることがある。

これらは病因や経過が共通しているわけではない。ドクターショッピングする例があり,内科や外科医にとって困難な患者である。手術や鎮痛薬投与のために医原性の疾患が起きることがある。

患者の強い治療要求による問題を軽くするためには,患者に対応する医師を一人に集約し,検査などの患者の要求に部分的に応じながら信頼関係を結び,体の症状に精神科的な理由があることに患者が気づくようにし,患者が進んで精神科を受診するようにしていく。身体症状の原因は全て心理社会的なものであると患者に説明することは効果がない。うつ病性障害や物質関連障害,反社会性人格障害などを合併することが多く,合併する精神疾患に対しては抗うつ薬などの精神科的治療が有用である。

身体化障害

30歳以前に様々な身体症状がおこり,数年以上にわたって持続する。体の症状は4カ所以上の痛みと胃腸症状(嘔気,腹部の張り),性的症状(性的無関心,勃起不全,月経不順),偽神経学的症状(麻痺,脱力,痙攣)が組合わさっている。患者の訴えは誇張されていたり,既往歴に一貫性が欠けていたりする。多数の医療機関を渡り歩き,不安障害や大うつ病性障害,物質関連障害,医原性疾患などを合併したり,生活歴と既往歴が複雑で混乱している。生活環境や文化が症状に影響する。女性に多い。慢性に経過し,寛解する事はまれである。身体化障害そのものに有効な薬物はない。

転換性障害

随意運動または感覚機能についての症状または欠陥で身体的異常では説明ができないもの。通常は単一の症状を示す。治療の必要がないようなごく軽度のものも含めれば有病率は高い。発展途上国や教育水準の低い地域に多い。女性に多い。

小児期後期から成人期早期にかけて急性に発症する。個々の転換性症状の持続期間は短く,2週間以内に症状が消失することが多い。再発が多く,約1/4の患者は1年以内に再発する。麻痺や失声,盲は治り易く,振戦や痙攣は治りにくい。自然に回復することが通常であり,治療法の種類は問わない。症状に心理的な原因があると説明することは回復を妨げることになる。

疼痛性障害

痛みの訴えが中心であるもの。痛みを説明するのに十分な身体的異常がなく,心理社会的な要因が症状の経過に影響している。女性に多く,遺伝負因が強い。実地臨床では鎮痛薬が多用されているが,有効性はなく物質乱用・依存を起こす弊害が大きい。バイオフィードバック・セルフモニタリングなどの行動療法,三環系抗うつ薬による鎮痛効果が期待できる。

心気症

身体症状または身体機能に対する誤った解釈に基づき,重病にかかっているのではないかという恐怖や考えへのとらわれ。内科や外科を受診し適切な医学的評価や説明を受けても,現代医学でも分からない奇病にかかっているなどといった考えが持続する。大うつ病性障害や不安障害と合併することもある。多発性硬化症などのように内科的異常を見つけにくい疾患もあるので診断には慎重さが必要である。

男女比は同じである。挿間性の経過をたどる。数ヶ月から数年間の病相期と同じくらいの長さの寛解期が交互して現れる。

規則的な身体的診察が日常生活の障害を防ぐために有用である。

身体醜形障害

想像上のまたは誇張された身体的外見の欠陥へのとらわれ。鼻などの顔の一部に関心が向けられていることが多い。女性に多い。形成外科などで本人が希望した手術などを受けても改善することは少ない。セロトニン動作性薬物が有効な場合があり,強迫性障害との共通性が指摘されている。

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