原井宏明の情報公開
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疾患1 統合失調症および他の精神病性障害

  1. 精神医学用語解説
  2. 総論1 | 総論2 | 総論3
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統合失調症 統合失調症様障害(分裂病様障害) 
失調感情障害(分裂感情障害) 妄想性障害

近代精神医学の代表的な精神疾患

 ここでは幻覚や妄想を主とする精神症状,すなわち精神病状態を示すことが主な特徴である精神疾患がまとめられている。

精神科・精神病院と言えば統合失調症がすぐに連想される。精神医療の歴史は統合失調症患者に対する処遇がメインストーリーである。現在でも精神病院入院患者の60〜70%は統合失調症であり,精神保健福祉対策の主な部分は慢性統合失調症患者に対する生活支援である。

現代の精神医療では他の精神疾患が増え,統合失調症の重要性は相対的に減ってきている。人が一生の間に統合失調症にかかる率は1%である。恐怖症や物質関連障害,気分障害よりも低い。

よくある誤解
統合失調症の範囲

古い教科書では統合失調症の範囲を広くとっている場合がある。現代の診断基準では統合失調症の診断には1ヶ月(ICD10)または6ヶ月(DSMIV)以上,症状が持続することが条件である。またうつ病や躁病エピソードや物質の影響化にあるときのみに見られる場合は統合失調症とは診断しない。

“分裂”という言葉

言葉のニュアンスから多重人格などと混同されることがあるが,”分裂”という言葉は統合失調症の症状と無関係である。

病識・本人の意思による治療

統合失調症の患者は現実的な判断ができず,自分が病気であることが分からない(病識欠如),治療は強制的に行わなう必要があると考えられていることが多い。これは誤解で,現実的な判断を失い,自分のことが分からないでいるのは統合失調症の症状が最も活発な一時期(急性精神病状態)のみである。8割方の人は自分が病気であることを知っている。統合失調症のほとんどの患者は自発的に外来を受診し,服薬し,入院が必要になったときも自発的に入院する。

遺伝,家族,ストレスが統合失調症の原因?

1960年代には統合失調症の原因を家族の育て方に求める説が花開いた。これも今では神話の一つである。統合失調症の正確な原因はまだ分かっていない。もともと病気になりやすさ(素因)を持っている人が日常的な刺激から脳の機能障害を発症するというストレス脆弱性モデルが現在,もっとも有力である。

近代精神医学の始まりと一緒に始まった分裂病の歴史

今日の分裂病につながる概念は19世紀の後半に近代精神医学の現れとともに始まった。1852年フランスのBAモレルが"早発痴呆",1874年にドイツのKLカールバウムが"緊張病",1871年にEヘッカーが"破瓜病"という概念を提唱した。1899年にEクレペリンがこれらをまとめて"早発性痴呆"と名付けた。スイスのEブロイラーが病気の本質は精神機能の分裂にあるとして"統合失調症"(Schizophrenie)という新語を作った。この名称が世界に広まった。この後,統合失調症の範囲が精神科医によって異なるようになり,1980年に操作的診断基準が出現するまで診断の混乱が続いた。

統合失調症の治療は向精神薬が出現するまでにインスリンショック,ロボトミーなどの様々な冒険が行われた。

1952年のクロルプロマジンの開発以降,統合失調症の幻覚・妄想が確実に治療できるようになり,統合失調症の予後・治療の仕方が大きく変わった。90年代からは向精神薬の限界も明かになり,向精神薬が効かない症状(陰性症状)が残っている患者に対して心理社会的なアプローチでリハビリテーションを行い,地域で生活ができるように援助することが目指されるようになった。

統合失調症の診断基準

(DSMIV)

統合失調症は思考障害・認知障害・認知障害・感情・運動・対人関係・現実判断などの広い範囲の症状を示す。残遺症状がしばしば見られ,長期にわたり再発を繰り返す慢性疾患である。

特徴的な精神病症状が1ヶ月間(治療が成功した場合は短くても良い)以上,ほとんどいつも存在している。

  • 妄想
  • 幻覚,特に患者の行動や思考を逐一説明する内容であったり,二つ以上の声が互いに会話しているようなものが統合失調症に特異的である。
  • 解体した会話,話題が途中でそれる,つながりがなくなる。
  • 行動にまとまりがない,話していることとする事が一貫しない,理屈が合わなかったり,合目的な行動が行えない。カタレプシーや過度の運動活動性や過度の拒絶,奇異な姿勢などの緊張病性の行動 。

以上の(1)〜(4)の症状を陽性症状と呼び,抗精神病薬によく反応する。

陰性症状。感情の起伏が平板化する。発想や会話の内容・幅が乏しい。意欲が低下。

症状の他に,社会的または職業的機能の低下が見られる。障害の始まりから仕事,対人関係,身辺管理などの面で以前より機能が低下する。例えば,仕事の能力が落ちる,対人関係での配慮が不足する,入浴しなくなるなどが見られる。

また統合失調症と診断するためには障害の持続的な兆候が6ヶ月以上存在することが必要である。これより短い場合は分裂病様障害などに分類され,本来の統合失調症よりも予後がよい。

精神病性障害の分類
統合失調症 妄想型 妄想や幻聴が主体 最もポピュラー
解体型
(破爪型)
まとまりのない会話や行動が主体
緊張型 カタレプシー,昏迷などの運動行動の異常が主体
残遺型 陰性症状が主体
鑑別不能型 以上のいずれでもないもの
統合失調症様障害 統合失調症と同じ症状だが半年以内に良くなるもの
失調感情障害 うつ病エピソードまたは躁病エピソードを合併するもの
妄想性障害 ある程度現実的な内容の妄想が持続するもの
短期精神病性障害 1ヶ月以内に良くなるもの
共有精神病性障害
(folie a deux)
幻覚や妄想をもつ人と一緒に暮らしている人が
類似した症状をもつようになるもの
一般身体疾患によるもの 脳腫瘍などによって精神病症状をしめすもの
物質誘発性精神病性障害 薬物中毒や離脱中に精神病症状をしめすもの
経過

統合失調症の初回発症例の95%は1年以内に社会的適応が可能なレベルにまで回復する。退院後2年間で40〜70%が再発する。50%の患者が1度は自殺を試みる。20年の間に10%は自殺に成功する。30%の患者は就労し人並みの生活を送れる。50%の患者は抗精神病薬の継続と社会的サポートがあれば,ほぼ独立した生活を送れる。20%の患者には長期入院を含めた細かなサポートが必要になる。

治療

抗精神病薬と心理社会的治療,社会福祉的アプローチが必要になる。活発な陽性症状に対しては抗精神病薬によって症状を緩和し,本人の苦痛をとることができる。また一旦回復した患者も薬物を継続することによって再発を予防することができる。毎日の服用が困難な場合は,徐放性のデポ剤の筋肉注射を月に1度行うことができる。

陰性症状や残遺症状は現在利用可能な向精神薬では十分に治療することができない。薬物を服用している患者でも対人関係に障害が残る場合がしばしばある。このため,生活技能訓練(Social Skills Training)などが必要になる。また同居家族の批判的な態度や強い感情表出(High Emotional Expression)が統合失調症の再発と関連することが分かっている。家族に対する心理教育が行われるようになった。

統合失調症の病的体験と芸術

分裂病に罹患したと考えられる有名人には,ドイツ・ロマン派詩人のFヘルダーリン,スウェーデンの作家JAストリンドベリ,ノルウェーの画家Eムンク,ロシアの舞踊家Vニジンスキーがいる。1997年公開の映画にスコット・ヒックス監督の「シャイン」があるが,実在のクラシックピアニスト、Dヘルフゴットがモデルになっている主人公は統合失調症と診断できる。

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