本章は以下のふたつの目的を持つ;(1) 各集団の特殊なニーズに合わせた治療への具体的な提言を提供する、(2) 治療場面での文化的適性の必要性を強調する。後者は様々なクライエントの治療を成功させるために、非常に重要となる。コンセンサス・パネルでは、治療場面での文化的適性は、人種/民族的な感受性を超えて、性別、年齢、性的嗜好、犯罪活動、物質使用、内科および精神的疾患によって結びついた集団の習慣やしきたりついて理解することにまで及ぶべきだと考える。さらに治療提供者は、自分たちの団体の「文化」についても理解し、それが別の文化のメンバーにとってどの程度友好的か、あるいは友好的でないかを判断する必要がある。
本章では、以下の集団に特有な治療課題について議論していく:
重ねて強調するが、これらの集団のメンバー向けの覚醒剤使用障害治療は、クライエントが属する集団(時には複数の集団)のニーズに対する、しっかりとした理解を基盤にして、行われるべきである。
注射によるコカイン使用者 (ICU) は、その他の薬物の注射による使用者たち(IDU)と同様、HIVおよび肝炎を伝染させることによって、大きな公衆衛生問題を引き起こしている。感染は、いくつかの形が考えられる。第一に、ICUは注射器具をその他のIDUと共用することによって感染を広げる。第二に、ICU は、同性愛者や両性愛者など、既にそれ自身がHIV および肝炎リスクを持つ人口と、注射針を共用する可能性がある。第三に、ICUは性行為によってこれらの疾患を、非物質使用者にうつす可能性もある。
米国では、覚醒剤およびその他の物質使用者中、100万から150万人がIDUだと推定される。 これらIDUのうちおよそ85%は、薬物使用に関する治療をまったく受けたことがない、と思われる (Lurie and Drucker, 1997)。治療を受けていないIDUにでは、継続する薬物注射によって多くの悪影響を受けるリスクがもっとも高くなるのは明らかである (Metzger et al., 1993)。
これらIDU中ICUが占める割合については、国立薬物乱用研究所(NIDA)後援の全国AIDSデモンストレーション研究National AIDS Demonstration Research (NADR) プログラムによる推定が、もっとも信頼性が高い。このプログラムは、物質使用障害治療を受けていない現役のIDUに関する、もっとも総合的なプロフィールを提供している。プログラムでは、全国28箇所13,475人の現役IDUについて査定した。主要注射薬物はヘロイン(28%)、コカイン(21%)、およびヘロインとコカインの組み合わせ(35%)であった。これらの推定は、一部の治療標本と一致しているようである。たとえば、ロサンジェルス地域で治療を求めたコカイン使用者の20%が、その前年に注射による薬物使用をしていた (Khalsa et al., 1992)。さらに、これらICUの94%が、別の使用者との注射針共用を報告していた。これらのデータを合わせると、IDU中のコカイン使用者が占める割合は、20%(コカインのみの使用者)から51%(コカインとヘロインの組み合わせ使用者)の間のどこかに落ち着くことが示唆される。そしてこれらの使用者は、注射器具を共用することによって、自らをHIV、肝炎、その他の疾患へのリスクにさらしている。
ICUの間で感染のリスクを増大させる要因のひとつは、彼らの使用パターンである。コカインは、ビンジと呼ばれる、反復的多数回使用の断続的な周期 [サイクル] の中で使用されることが多い。この使用パターンは、ヒトによる実験研究でも確認されている (Ward et al., 1997)。このパターンは、通常ヘロイン依存人口において観察されるよりも、頻繁なビンジ中の注射を引き起こすことが多い 。さらに、注射によるコカイン使用者は、その他の薬物の注射使用者に比べて、より多くの人と注射針を共用する場合が多い。
このようにビンジ中の注射がより頻繁なことは、HIV感染の可能性を高める、という結果を生み出す。注射針を共用することによるリスクとともに、ビンジ中の頻繁なコカイン使用は、ICUにおけるHIV感染のリスクがIDUに比べて2倍 (Chaisson et al., 1989; Anthony et al., 1991)、 クラック喫煙者に比べて1.5倍 (Kral et al., 1998) に高めることが実証されている。
注射による薬物使用の影響を減らすために、様々な介入が試みられてきた (これに関する再考察はDes Jarlais and Friedman, 1996; Sorenson, 1991 を参照)。これらの介入は、IDU一般向けのものだが、これらの研究の成果はICUにも適用可能である。教育のみでは、薬物注射の影響の予防は難しい、ということも強調すべきである。そういったプログラムは、知識を増加させるが行動を変えることはない、という研究結果が示されているからである。
技能訓練、カウンセリング、HIV検査や漂白剤消毒の指導を含む多要素HIV予防プログラムは、長期的には感染のリスクを減少させることが実証されている (Institute of Medicine [IOM], 1995)。 しかし、この研究結果は、漂白剤消毒別の有効性実証に失敗したいくつかの研究からは、支持を受けていない。この原因は、消毒処置自体が有効でなかったためかもしれないし、有効な処置だがその使用が徹底していなかったためかもしれない。1995年の医学研究所(IOM)後援によるHIV感染予防に関する報告Report on the Prevention of HIV Infectionは、疾病対策予防センター(CDC)と物質乱用治療研究所(CSAT)によるガイドラインに沿って行われた場合、漂白剤消毒は注射器具を共用するIDUのHIV感染を予防するのに有効である、と提言している。IOM の報告では、IDUに有効的な [消毒] 処置の訓練を提供することと、もっとも容易で有効な消毒処置を同定するための更なる研究を提言している。Des Jarlais と Friedman はこの意見をさらに拡大させて、HIV予防プログラムは現状のように漂白剤消毒に頼るべきではない、と主張している (Des Jarlais and Friedman, 1996)。しかし彼らは、漂白剤消毒は何もしないよりは有効であり、器具を共用する場合にはなされるべきである、とも提言している。
注射針交換プログラムは、世界中の様々な環境で実施されている (Hurley et al., 1997)。注射針交換処置に関する研究と報告の圧倒的多数は、この処置はHIVと肝炎のリスクを減らすが、さらなる薬物注射使用を引き起こしたり、新たなIDUを作り出したりはしないことを示唆している(Hurley et al., 1997; IOM, 1995)。
しかし、これらのプログラムから目立った利益を受けない人口も存在する。たとえば、モントリオールではHIV感染の減少は見られなかった。モントリオールの注射針交換プログラムでは、一回の訪問でクライエントが獲得できる注射針の数が制限されており、それは通常ICUの薬物使用で使用される注射針の数よりも少なかった、というのがその理由のひとつかもしれない。結果としてクライエントは、別の注射針供給源に頼り、プログラムの効果は無効となってしまった。
これらのデータは、注射針交換プログラムを支持する傾向を持つのは確かだが、これについての比較試験は未だ行われていない。IOM の報告では、コミュニティーがこうしたプログラムを要請している場合は、許可することを提言している。また、注射針交換を多要素治療の一環として実施することと、注射針交換プログラムの有効性を評価するための追加的研究についても、提言している。
研究によると、男性同士で性行為をする者(MSM)とアルコール、覚醒剤、吸入剤、その他の非合法の非注射薬物を乱用する者は、無防備な性行為を行う非物質使用者よりも、HIVに感染する可能性が高い (Paul et al., 1991, 1993, 1994)。通常人口の間と同様、MSMの間での性的冒険は、物質使用、特に覚醒剤使用の影響下で行われるが場合が多い。物質使用を背景に持つ性的冒険は、[薬物の] 脱抑制効果、学習されたパターン(特に覚醒剤使用とある種のハイリスク性行為実践との間の)、自己評価の低さ、リスクに対する誤った認識、安全な実践を交渉する主張性の欠如、無力感、などによって生じると仮定される (Paul et al., 1993)。
あるいは、セックス・ネットワークと性的混合パターン (Renton et al., 1995) によって、MSMの間で物質乱用とHIV感染リスクの高さとの関連性を説明できるかもしれない。Renton らによって示されたように、MSM 物質使用者は、血清疫学的HIV率の高さ、性的混合の高さ、薬物注射使用の多さ、現金・食物・薬物と引き換えの性行為の頻繁さ、などの特徴を持つ非常に特徴的な集団を形成している。したがって、示唆されている物質使用とハイリスク性行為との間のリンクよりも、むしろこれらの要因がの方が、MSM物質使用者間のHIVリスクの高さを説明している、と考えられる。どちらの仮説が、MSMの間の物質乱用とHIV/AIDSの関連性をよりよく説明するにしても、HIV/AIDS と物質使用が相互に絡み合っていることは確かである。残念なことに、IDUと同様、物質を乱用するMSM全体中、物質使用障害治療施設での治療を求めるのは、わずか10%だと推定される。MSMが経験する偏見のため、MSA物質使用者は、普通の物質使用障害治療施設には治療を求めないか、治療に参加する場合は「秘密」を保つことになる。
HIV予防のためのアウトリーチ戦略は、物質使用の介入へと容易に変換できるものである。さらに、ゲイ・コミュニティーの中では、物質使用者に対して非難する傾向が見られるため、アウトリーチ・ワーカーは、クライエントが治療にたどり着くために、これらの非難を乗り越える援助をする必要がある。
この集団における懸念のひとつは、注射による薬物使用、特に塩酸メタンフェタミン (MA) 使用は、注射針によってHIVおよび/あるいは肝炎のリスクを増加させるだけでなく、薬物による判断の誤り、自分が不死身だという感覚、リスクの高い行為、反復的継続的性行為などによっても、これらのリスクが増加するということである。ロサンジェルスのMA使用同性愛男性の研究では、参加者の62.5%がコンドームなしの肛門性交を、56.3%がHIV感染者との性交を報告した (Frosch et al., 1996)。 カウンセラーおよびアウトリーチ・ワーカーにとっては、性行為が使用パターンの中にどのように適合するかに重点を置いた、使用分析を含むリスク・アセスメントが、非常に重要となる。
クライエントだけでなくカウンセラーにとっても、この種の薬物の特定の影響に関する教育は、極めて重要である。近年、注射による薬物使用と性行為に関する、ある程度の逆行が起こっている。というのは、AIDS治療の新薬によって、陽性診断が自動的に死刑宣告を意味することがなくなったからである。この神話を否定するのはもちろんのこと、長期覚醒剤使用の影響に関する情報を与えることによって、MAによって高められる性行為の魅力を弱めることが必要である。長期使用の副作用には、性欲と性行為パフォーマンスの低下が含まれる。特にアイス使用のクライエントでは、オルガスムに達する能力の低下、勃起継続時間の縮小、性的不能の増加が見られる。最後に、カウンセラーの教育では、同性愛男性の性的実践に対する偏見や過敏性を持っていないことを確認することが必要である。
通常 スピードボーリング として知られる使用法の中で、コカインとヘロインが同時に使用されることがある。一部のクライエントは、メサドンはコカインの効果を長引かせ、まろやかにすると主張するが、これはコカイン・クラッシュと結びついている負の強化子を弱めるためだと考えられる (Condelli et al., 1991)。また、コカインおよびヘロインと同時に、アルコールあるいはベンゾジアゼピン系薬、あるいはそれら両方を用いる患者もいる。これは、不安、抑うつ、疲労感、神経過敏などの特徴を持つコカイン・クラッシュの影響を減らすためである。したがって、ヘロイン使用がコカイン依存の可能性を増大させるように、コカイン使用もヘロイン依存のリスクを増加させる (Dunteman et al., 1992)。
メサドンがMAと組み合わされるのは非常にまれではあるが、この集団に関してカウンセラーが知っておくべき問題が、いくつか存在する。それは、治療の困難性、医学的リスク、コカイン使用、カウンセラー訓練、そして高度なサービスの必要性である。
メサドン治療のクライエントにおける、覚醒剤乱用率はプログラムによって異なる。コカイン検査陽性に関するデータによると、都市部人口では、40%から60%の範囲である。これらのデータは、MA使用へのルートが確立されていること、そして、どの覚醒剤が使用されているかを判断するための、さらなる研究が必要とされることを示している。さらに、データによると、メサドン治療クライエント中では、ベンゾジアゼピン系薬を含む鎮静剤使用者の数が極めて多かった。
精神障害を合併する個人の定義は、覚醒剤使用および/あるいはその他の物質使用障害と、以下に挙げた障害のどれかを併発する人々である:
DSM-IVの精神障害の診断は単なる症状の呈示とは異なる、ということを認識するのは大切である (American Psychiatric Press, 1994)。たとえば、覚醒剤使用者の大部分は、治療を開始するとき、抑うつ症状を呈している。同様に、MA使用者は、統合失調症の間で一般的な精神病症状を示すことが多い。しかし、抑うつ症状は精神疾患であるうつ病とは異なるし、精神病症状は統合失調症の証拠とは限らない。通常特定の精神障害(例:うつ病、不安、精神病、双極性気分変動、非社会性行動)と関連付けられる多くの症状集団は、覚醒剤使用の最中あるいは退薬初期に頻繁に見られる。
実際、多くの個人が自分の物質使用障害治療の評価に、自らの精神科診断を持ち込もうとする。[物質使用障害の] 治療開始前に、覚醒剤問題にも関わらず、精神科の治療を求めた覚醒剤使用者も多い(多くの個人は、物質依存よりもうつ病あるいは双極性疾患という診断の方が好ましいと感じているようである)。そのため彼らは、自分が精神障害を持っており、物質使用障害の治療ではなく精神科治療(すなわち、薬物療法、精神療法)を必要とする、と強く主張するのである。
ある個人が以前に精神科診断を受けたから、あるいは、通常精神障害と関連付けられる症状を持っているからといって、その人が「二重診断」のクライエントであると決めてかかるべきではない。覚醒剤使用者の間における精神科コモビディティの的確な診断には、高度な診断知識が要求される。暫定診断を必要な場合も多く、これは追加的データが収集された後修正されることになる。正確な精神科診断を下すには、コカイン使用者の場合で1から2週間のコカイン不使用状態、MA使用者の場合は30日間の不使用状態が必要となることが多い。診断におけるもうひとつの重要要素は、精神症状の発現と物質使用歴との間の歴史的関係について、入念な情報を得ることである。
二重診断が、3つあるいはそれ以上の合併疾患を含むこともしばしばありえる。覚醒剤使用のクライエントは、根底に精神疾患を抱えている場合もあれば、抱えていない場合もある。多くの場合、クライエントが物質抜きの状態になるまで、精神症状の原因を識別するのは不可能である。適切な精神科アセスメントを達成するまでには、1ヶ月の物質不使用状態を必要とすることが多い。 二重診断を持つクライエントの治療は複雑ではあるが、この集団は最悪の状態に落ち込むのが速いため、その分治療を開始するのも速い場合が多い。また、このような深刻な障害を根底に抱えない覚醒剤使用者に比べて、動機付けが高いことも多い。
覚醒剤使用障害と精神障害を合併する個人に対する治療介入に関する、コンセンサス・パネルの提案を以下で検討する。
抑うつ症状は、覚醒剤使用あるいは退薬の一部として生じることもある。可能であれば、クライエントが薬物使用障害から回復し始めるのを待って、抑うつの治療をすることが望ましい。コンセンサス・パネルでは、抑うつ症状に対する薬物療法は、可能な限り延期するよう提唱する。しかし、クライエントに自殺傾向が見られる場合は、入院措置が推奨される。
双極性障害を持つクライエントは、その双極状態が薬物療法によってうまくコントロールされている場合は、従来の治療設定での治療が可能である。覚醒剤使用が、躁病エピソードを引き起こすこともある。そのため、双極性障害を持つクライエントに関しては、投薬管理が最重要課題のひとつとなる。
物質使用行動は、非社会性人格障害(ASP)の診断に直接影響する。たとえば、法律に違反する行為、攻撃性、衝動コントロールの乏しさなど慢性MA使用に関連する行動の多くはASPによく似ている。また、コカイン使用もASPも、暴力と関連している。
ASPを持つクライエントの多くは、刑事司法制度との関わりがあり、組織間(物質使用障害治療、精神衛生、身体的健康 [の各組織] )の調整が重要となる。一般的には、ASPは女性より男性に多く見られ、また物質使用率も男性の方が高い。したがって、物質使用障害治療組織では、ASP および犯罪への関与を持つ男性クライエントを対象とするプログラムが必要である。
コカイン使用はパニック障害を引き起こし、クライエントが物質抜きの状態になった後でも、パニック発作の誘発因として作用する。パニック障害は、既に使用を中止して長期間になるコカインおよびMA両方の使用者の間でも一般的のようで、コカイン退薬の二次的抑うつと関連することが多い。医療提供者は、依存性の高いベンゾジアゼピン系薬を処方する際には、極めて慎重になるべきである。症状を認識し管理するための認知行動的テクニックも、臨床的に有効な戦略となりえる。
アイスを使用する女性は、物質に関連する家庭内暴力、性的暴行、近親相姦のエピソードのためPTSDのリスクが高い場合が多い。
ここで推奨される治療アプローチには、できるだけ早くクライエントを性的暴行あるいは近親相姦のサポートグループへ紹介することが含まれる。女性のみの形式によるグループカウンセリングの提供が必要とされる。そこでは、PTSDおよびアイスからの退薬の結果として起こりえる夢、恐怖感、睡眠障害などに関する指導も含まれる。再発の誘発因についての情報と、常夜灯、ハーブティー [薬草茶]、リラクゼーション法などの悪夢と闘うための具体的な手段についての情報は、クライエントに安心感と、この期間を乗り切るためのスキルを提供することになる。
覚醒剤使用障害とPTSDを併せ持つ個人と関わるカウンセラーには、専門的訓練が必要である。ここでの課題には、再発の誘発因、グループセッションにおいて課題を提供するタイミング、順調な回復を促すために女性たちが必要とする手段と社会的技能、などが含まれる。
一般人口におけるAD/HD の割合は、成人の3%から9%の範囲である。物質使用障害の成人人口中では、AD/ HDの割合は1%から5%の範囲内である。しかし、成人AD/HD人口中、40%が物資使用障害を併せ持っており、通常はマリワナあるいはアルコールに関与していることを示す研究が存在する (Biederman et al., 1993, 1995)。これらの覚醒剤使用障害は、クライエントがAD/HDの治療を開始した際に発見されたものである。
合併障害の診断に達する前に、物質使用とAD/HDの症状に関する明確な使用歴、病歴を得ることは重要である。コカイン使用の副作用は、AD/HDの症状の一部に酷似している場合もあるが、これらは使用の中断とともに消失する。成人AD/HDは通常、そうとは診断されていなかったにしても、幼児童期にこの疾患をもっていたはずである。クライエントの病歴聴取を完了するときには、幼児童期の症状のアセスメントも含めることが重要となる。幼児童期におけるAD/HD 症状の存在は、成人での同疾患の診断を確認する手段となる。
統合失調症人口中の物質使用障害の割合は、30%から50%の範囲であると推定される。この物質使用の大部分は、仲間集団を求める行動に由来している。物質使用は正常である、町中の人たちがやっていることである。物質使用は、統合失調症患者が欠如している幸福感と [社会に] 適合しているという感覚を与えてくれるのである。
精神疾患に対する薬物療法が、効果を発揮する時間を与えるためには、統合失調症を伴うクライエントの物質使用を素早く治療することが重要である。統合失調症患者がコカイン使用を継続した場合、本格的な精神病が発現することになる。またMA使用を継続した場合は、妄想型統合失調症と区別がつかないような精神病状態を呈するようになる。
安定化期間の後、両方の問題に対する治療が、多少の修正は必要なものの、ほぼ同時に可能になる。物質使用障害の治療には、修正を加えたグループカウンセリングを用いるのもよい。しかし、グループは従来の物質使用障害治療のものよりも、少人数でよりコントロールされたものとし、対立的場面は回避されなければならない。治療を有効なものにするためには、各グループセッションでは、特定のスキルやテーマに焦点をあてるようにする。
本節では、物質使用障害の治療を受けているクライエントで、ひとつあるいは複数の内科的疾患を合併するクライエントについて言及する。臨床慣行からも、物質使用障害の治療開始前には、各クライエントに対して、徹底的な健康診断を実行することが望ましい。フォローアップには、クライエントおよびその他の医療提供者への連絡と、彼らの治療記録の再検討が含まれるべきである。さらに、治療提供者は、以下の点での訓練が必要である:
最後に、物質使用障害治療提供者とクライエントの治療にあたる内科医および専門医との間の連携によって、治療成果は向上することの重要性を強調しておく。
本節では、物質使用障害治療提供者の一部にとって特別な注意が必要となる身体的疾患領域のいくつか:疫学、糖尿病、HIV/AIDS、について検討する。
本TIPの第5章では、物質使用人口中に見られるいくつかの内科的疾患について議論した。覚醒剤使用人口はより若年の傾向があるので、通常その内科的疾患についても、物質使用人口全体で観察されるほど深刻ではない。たとえば、覚醒剤使用者の大半は年齢25歳から35歳で、冠動脈疾患など中高年に一般的な疾患は見られない。一般的に主要な身体疾患としては、歯科・皮膚科・耳鼻咽頭科の問題、中耳炎、栄養障害(コカイン使用とAIDSのどちらか、あるいは両方を持つ痩せのひどいクライエント)、喘息、神経障害、発作、そして卒中後の残遺障害などである。また、二次的疾患として、血行性疾患、HIV、肝炎および性病が含まれる。
覚醒剤使用者では特に、恒久的甲状腺機能上昇あるいは低下という形での、甲状腺障害の確率が高い。これは、不純なMAが甲状腺内で組織特異性の化学反応を起こすことに起因している可能性がある。しかし、この領域に関しては、さらなる研究が必要とされる。覚醒剤症で一般的に見られる身体的合併症の一覧表については、第5章を参照されたい。
覚醒剤使用者は肝炎のリスクが高くなることが多く、これは、世界規模での旅行が容易になった今日では、第三世界各国に限られた問題ではない。疾病対策予防センター(CDC)は、A型肝炎だけでも毎年米国で15万人が感染すると推定する。CDCでは、家庭内および性的接触、汚染された注射針の共用、近年の国際的旅行傾向をA型肝炎の主要感染リスクファクターとして挙げている。B型肝炎ウイルス(HBV)は、伝染力がより強く、HIVよりも広く蔓延しており、現在120万人の米国人がHIVの保菌者であると推定される。B型肝炎では、毎年新たに感染する20万人中、最高10%において、慢性疾患(すなわち6ヶ月以上の継続を意味する)に進行する。未治療のままだと、慢性B型肝炎は、肝硬変(肝臓の瘢痕)へと進行および肝臓ガンのリスクが高くなる。覚醒剤使用者向けの治療プログラムでは、各クライエントの最初のアセスメントに、肝炎のスクリーニングを含むべきである。
HIVスクリーニングも、覚醒剤使用障害者の初期スクリーニングとして重要である。クライエントは結果を恐れるため、HIV検査を受けるのに躊躇するかもしれない。しかし、一旦AIDSを発症する恐怖から開放されると、陰性の診断が、覚醒剤使用者にとって、治療により全般的に従うための強力な動機付け要因となる場合もある。陰性結果はまた、クライエントが生活のその他の領域においても、予防的手段を実行するのを奨励するかもしれない。陽性結果はクライエントにとって失望となるが、治療提供者は、これもまたスクリーニングの重要な一部であることを認識しておかねばならない。クライエントのHIV進行状態がはっきりし次第、物質使用障害の回復プログラムに医学的要素を含めた治療プランを立てることが可能となる。
一方で、特殊な課題もいくつか残されている。HIVあるいはAIDSを持つクライエント向けの物質使用障害治療の提供における重要な側面のひとつは、彼らにとって利用可能な、しかし常に変化する複雑な多種の薬物療法に関して、治療提供者には、常に教育が必要とされることである。さらに治療提供者は、これらの新薬で武装したHIV/AIDSクライエントは、人生に対して異なるアプローチを取ることも認識するべきである。彼らは、自分たちの余命が長くなったことを知っており、物質使用へ逆戻りする可能性も出てくる。
覚醒剤使用における問題のひとつは、薬物によって促進されたハイリスクな性行為を通じてHIVに感染するリスクが増加することである。概して、クライエントの認識は、注射針による感染リスクに対しての方がむしろ高いようであるが、これに関してはさらなる研究が必要とされる。他の覚醒剤使用者に比べて、コカイン使用者はHIV暴露の機会が多い。コカイン使用では、ハイを維持するために複数回の注射が必要とされる、注射針を使い切るのも速く、使用者は共用する気になりやすいからである。MAは何回もの注射を必要としないため、MA使用者にとっては、未消毒の注射針よりも、薬物と交換の性行為がHIV感染経路となる場合が多い。
HIV/AIDSを持つクライエントの治療はもまた、プログラム間の連携が治療成功の鍵となる領域のひとつである。可能な限り、各種の治療に精通したスタッフおよび看護師を、クライエントが利用しやすいように配置しておくことも有効である。治療提供者の事例データによると、クライエントは紹介先の予約に行くときに [道に] 迷ってしまう傾向があり、たとえば、メサドン治療クリニックに行こうとして、同じビルに入っている産婦人科のスタッフに助けられたりする。このテーマに関する詳しい情報については、HIV感染を持つアルコールおよびその他の薬物乱用者の治療 Treatment for HIV-Infected Alcohol and Other Drug Abusers (TIP 15) (CSAT, 1995a; 現在改訂版を印刷中) を参照されたい。
たくさんの犯罪が覚醒剤使用者によって犯されており、この人口を慎重に査定することは重要である。刑事司法制度中には、物質使用によって抑制が低減されている間に、犯罪を犯す者が多く、薬物を購入するために盗みを働く者もいる。これらの種類のクライエントが、ここでターゲットとなる治療人口である。刑事司法制度中にはその他にも、薬物を販売するだけで使用はしない者、あるいは薬物使用をするが、自分たちが売る薬物への嗜癖は持たない者たちもいる。自己報告のデータでは、刑事司法制度中72%の個人が物質依存であることが示されている。これらのクライエントは、ケース・マネージメントという観点から見ると、極めて複雑であることが多い。たとえば、一人のクライエントが、刑事司法制度、覚醒剤使用障害治療制度、精神衛生制度に同時に関与している、という具合である。覚醒剤使用障害を持つ刑事裁判関連のクライエントが直面する、具体的な問題に関する研究は、ほとんど存在しない。
このテーマに関する詳しい情報は、TIP 12、 刑事司法制における成人向けの物質乱用治療と中級 [中間] 刑の組み合わせ Combining Substance Abuse Treatment With Intermediate Sanctions for Adults in the Criminal Justice System (CSAT, 1994c); TIP 17、刑事司法制度における成人向けのアルコールおよびその他の薬物乱用治療のプラン Planning for Alcohol and Other Drug Abuse Treatment for Adults in the Criminal Justice System (CSAT, 1995c); TIP 21、 司法制度における未成年向けアルコールおよびその他の薬物乱用治療と移転の組み合わせ Combining Alcohol and Other Drug Abuse Treatment With Diversion for Juveniles in the Justice System (CSAT, 1995e); TIP 23、 治療麻薬裁判所:物質乱用治療と訴訟事例処理手続きの統合 Treatment Drug Courts: Integrating Substance Abuse Treatment With Legal Case Processing (CSAT, 1996); よびTIP 29、施設からコミュニティーへの犯罪者の覚醒剤使用障害治療の連続性 Continuity of Offender Treatment for Substance Use Disorders From Institution to the Community (CSAT, 1998b) を参照されたい。
異なる人種/民族集団を対象とした治療オプションの開発における最重要課題のひとつは、[プログラムを] 文化的感受性を越えた、文化的適性を備えるものにすることである。文化的適性とは、単に表面的な民族的意味の理解ではなく、地域的および社会経済的傾向に関する知識である。
多種多様な人口に働きかける際に、治療提供者は文化的感受性が豊かであることが要求されるため、今日薬物治療の領域で働くために文化的適性は不可欠である。文化的能力は、以下のように、異なるレベルのものが存在する:
文化的感受性では、社会文化的な要因に対する基本的な理解と認識が必要とされる。これらの要因はクライエントの治療ニーズと適切な治療の選択に関連するものである。文化的適性には、クライエントの文化的背景の中でのニーズに対するさらに深い理解が関わってくる。また、クライエントから表現された文化的ニュアンスに対応し、クライエントの思考や行動のより深い意味を解釈することを可能にするような、技能および経験が必要とされる。文化的適性は、よりよい治療判断を下すのに役立つ。これらの判断は、クライエントのニーズと、適切な治療オプションのより効果的に適合に基づいているからである。
アウトリーチに関する課題は、ターゲットとなる民族集団に特有のものとなるが、常に考慮すべきテーマには以下が含まれる:
これらの考慮点の多くは、人種/民族的な慣習に適合するために、治療の進行速度をゆるめることが関与してくる。これに関するコンセンサス・パネルの懸念は、この種のケアに対する支払い方法である。コスト管理型医療は、長期の治療あるいは支払い請求可能な単位に縮小することができないような治療に対する資金提供には消極的である。
1990年の国勢調査データによると、米国人口の約25%が田舎に住んでいる。コロラド・アイダホ・モンタナ・ニューメキシコ・ノースダコタ・ネバタ・サウスダコタ・ユタ・ワイオミングは、州内で半分以上のカウンティ [群] における人口密度が1平方マイルあたり6人以下である「辺境州」とされる。これらの州はすべて西部にあり、MA使用が高い州である。
物質乱用・精神衛生サービス管理局 Substance Abuse and Mental Health Services (SAMHSA)によって実施された全国世帯調査National Household Survey では、12歳から17歳の青少年の間の物質使用率は、大都市地域でも田舎地域でもほとんど変わらないことが明らかになった(SAMHSA, 1998)。異なっていたのは使用される具体的な物質であり、割合ではなかった。
合法的に製造されたMAに対する厳しい法規制のため、その流通は、合法から非合法経路へと制限されるようになった。現在出回っているMAの大半は、秘密ラボで違法製造されたものである。田舎地域は、薬物製造業者やディーラーのターゲットにされるリスクが高くなっている。田舎のコミュニティーは、非合法薬物を生産する人目につかない場所と、当局に発見されるリスクが最低限の流通のための主要輸送経路を提供する。小さな町は、主要幹線道路や州間高速道路の脇に位置することが多く、別の地域への流通、販売のための輸送に便利である。多くの田舎および/あるいは辺境コミュニティーはこのリスクファクターに対して無防備である。治療リソースやこれらの問題の対処訓練を受けたコミュニティーの警察など、インフラ構造が整っていないからである。これは準備が十分でないコミュニティーにとって、目前に迫る深刻な問題である。
西部の諸州でMA治療施設を訪れる人数は、現在コカインを上回り最高になっている。南部州や中西部州のいくつかでも、初めてのMA治療開始率が増加し始めている。
ネバタ州(辺境州のひとつ)では、1997年の公的資金による物質使用障害治療センターにおけるクライエントのデータ・システムによると、物質使用障害の治療を求める個人の52%がMA使用に対する治療を求めていた。
田舎地域では、一番近い治療提供者まで数百マイルの所に住むクライエントに、治療サービスへの交通手段を提供するという課題に直面している。田舎地域では公共交通機関がないことが多いので、サービス提供者のところに行くためにクライエントは、丸1日自動車を運転しなければならないこともありえる。
田舎地域では通常、サービス・システムが断片的で、リソースは限られている。田舎地域では、医療および社会サービスの欠如のため、治療の連続性あるいは専門的な治療への紹介さえもが妨げられている。多くの田舎地域では、治療サービス自体が利用可能でない。地域で唯一の社会サービス提供者は、通常コミュニティーの多様なニーズでパンク状態であることが多い。田舎地域の社会サービス機関は、必要に迫られて複数サービス機関を兼ねている場合が多い。
通常資金は人口に基づくため、田舎地域では治療のために割り当てられる資金は最低限になるのが一般的で、その結果提供できるサービスも最低限のものとなる。地域内では、追加資金を求めるような資金源もほとんど存在しない。適切な資金の欠如が、職員や職員の給与を限定し(これは職員の離職率の高さの原因となる)、このため、託児や輸送などもっともサポートが必要である領域での支援サービスを提供することができなくなる。
田舎では、守秘義務はほとんどありえない。小さな田舎コミュニティーでは、匿名性は存在しないのである。住人は皆お互いを知っており、人の出入りも明らかである。大部分の田舎コミュニティーでは、利用可能な適切なオフィス空間がないため、あらゆる場所を利用することとなり、しばしばプライバシーに欠ける設定となる。
ほとんどの田舎地域では、治療提供者向けの継続的教育は存在しない。その結果、治療提供者は、領域に関する最新の情報に欠けることが多い。
田舎人口向けの治療を提供するために役立つ様々な戦略を以下に示す:
女性の覚醒剤使用障害の治療には、多数の複雑な問題(妊娠、子供、家庭内暴力、社会経済的問題を含む)が関与し、これらの問題は覚醒剤使用障害の診断と治療に影響を及ぼすこともある。女性の覚醒剤使用についてはあまり研究されていないが、近年の研究に、女性のコカインに対する反応における性差を指摘したものがある (Lukas et al., 1996)。さらに、近年のMA使用研究では、女性のMA使用者の割合は、コカイン使用者、ヘロイン使用者よりも高くなっていた (Rawson et al., 1998a)。
MA使用は従来男性と関連付けられていたが、この薬物を使用する女性の数は増加している。使用の理由は、痩せたいという欲求から、やることが多すぎる1日を乗り切るために自己治療を必要とする「スーパーウーマン [超人的女性] 」願望の女性まで、様々である。幼児童期に性的虐待を受けた女性に関するデータでは、これらの女性が成人してから「気持ちをすっきりさせる」ためにコカインを使用することを示唆している。
直接治療に直接は現れないような女性が、治療システムに入り込む入り口として、以下が考えられる:
覚醒剤を含む物質使用を持つ女性に対するアウトリーチに関しては、多くの場合、2つの種類の障害に対処する必要がある。第一に、罪悪感、抑うつ、子供と引き離されるのではという恐れ、薬物を使用しているあるいは密売しているパートナーに対する恐怖など、物質使用障害の治療を求めるための、内的障害物を同定し緩和する。第二に、治療プログラムへのアクセスに恵まれない、託児が必要となる、あるいは地域に密着するプログラムがない、など女性が治療を求めるのを妨げる、外的障害物について検討しなければならない。ひとつの障害物を取り除くだけで、女性を治療へと引き込むことができることも多い。たとえば、託児サービスを提供する治療プログラムでは、それがないプログラムよりも参加率が高くなっている。
治療プログラムでは、治療を開始する女性の身体的健康にも注意を払うべきである。事例的データでは、MAおよびコカイン使用によって女性は男性よりもより急激な身体的衰弱を経験することが示されているが、この観察を支持する確かな研究的基礎は存在しない。一般的には、女性は治療を開始するときには、男性よりも身体的に衰弱している場合が多い。さらに、職場を持たない女性は外で働く女性に比べて、薬物使用が発見されるまでの使用期間が長い場合が多く、したがって治療開始時点での身体状態はより悪くなっている。
治療プログラムでは、使用される覚醒剤の種類についても検討すべきである。アイスは家族やコミュニティーを背景として使用されることが多いので、本項で記述されるような女性問題を増幅させることが多い。
女性を対象とした治療には、以下の点を考慮した全体的アプローチが必要となる:
女性クライントに関して考慮すべき再発課題は、長期MA使用の性行為実現に対するマイナスの影響である。つまり、MAは女性の性欲とオルガスムに達する能力の喪失を引き起こす可能性がある、ということである。それでも彼女らは、性行為を強要された際には、その場を切り抜けるためにMAあるいはコカイン使用に頼る場合もある。さらに、生活するためにコミュニティーに戻ったが、依存関係で生きていかねばならない女性は、性行為と交換で食物や住むところを確保するしかない場合もある。こういった性行為への圧力は、物質使用再開の起因ともなりえる。
集中的外来プログラムは、一見子供を持つ女性に利用しやすいように思われるが、実際はそれなりの障害を提起する。頻繁な来院を必要とするが、現場での託児サービスを提供しないプログラムは、治療体制へのコンプライアンスを促進することはできない。
青少年は、覚醒剤使用の他にも多くの課題を持つ。この集団における乱用および依存への道のりは、物質一般およびアルコールに対する実験的使用、マイナスの仲間集団、ギャングとの接触、未診断の精神障害に対する自己治療の試み、セルフイメージの乏しさ(例:痩せたいという願望)、犯罪活動を実行するための自信をでっち上げる必要性、あるいはこれらの組み合わせや青少年が直面するその他の課題、などが始まりとなる。その他にも、不安や抑うつ、寂しさ、過去の性的あるいは身体的虐待への対処、住む家がないこと、十代での妊娠などが要因となる。
青少年は以下3つの下位集団から構成される:
すべての下位集団に共通する治療の原則は、彼ら青少年にとって死の概念は非常に希薄なので、死への恐怖を与えて生涯の物質不使用を求める戦略は無効だということである。しかし、この集団は、治療提供者に希望を与えてくれる。なぜなら、青少年は未だ自らの疾患の中に定着しておらず、生活中から物質排除さえできれば、あとはどんどん進歩して仲間集団と一緒に必要なことを学んでいくからである。この集団の治療に付随する多くの課題が存在するものの、成功したときにはそれ以上の報いを受けることになる。
現時点での国の研究では、MAあるいはコカインの高い使用率は示唆されていないが、これらの物質に対する警告を深刻に受け止める理由が、少なくともふたつ存在する。第一に、青少年は複数物質使用の傾向があるので、別の物質や覚醒剤の使用率増加が報告された場合は、ある程度MA使用における傾向の指標にもなる。第二に、青少年は手に入れやすい物質を使用する傾向があるので、豊富に出回っている物質の使用率が高くなることが考えられる。
全国的には、1996年の将来のモニタリング研究 Monitoring the Future Study によって、中2、高1、高3生におけるアヘンとコカイン使用の増加が明らかになり、10代のアヘン使用は倍増していた (NIDA, 1998b)。アンフェタミンは薬物リストの中で高位にはおらず、調査期間中2から3%の青少年回答者が使用を報告したにすぎなかった。
青少年の使用の地域性を見てみると、問題地域には、西海岸・中西部・ハワイが含まれる。カリフォルニア州では、青少年の間でのMA使用がマリワナ使用よりも高くなっている。ハワイでは、青少年薬物乱用診断Adolescent Drug Abuse Diagnosis (ADAD) (州から資金を受ける治療プログラム)のデータによると、より若年者(11歳から12歳)がアイス使用の治療を求めてくることから、さらに早い時期でゲートウエードラッグを開始してアイスに行き着いていることが示唆される。アリゾナ州では、青少年の間のMA使用割合に関するデータは存在しないが、都市圏および州内各地において、家庭ベースのラボも含めたラボが急増しているため、州内での入手が簡単で、それゆえ若者の間での使用も高くなっていることが暗示される。
文化的および社会経済的要因による、青少年人口における使用の予測も可能である。ハワイでは、ハワイ原住民系およびフィリピン系青少年の間の使用パターンは、各文化集団全体の使用パターンと呼応している。逆に、MA使用は、今のところアメリカ先住民系青少年の間では大きな問題にはなっていない。若者によるMA使用は、中流の下層および労働者階級の地域で高いが、あらゆる社会経済階級の青少年がMAを使用している。
青少年人口に対するアウトリーチは、ハイリスクの青少年を同定することだけでなく、それらの青少年に手を差し伸べる、最適な方法を同定することにも重点が置かれるべきである。ハイリスクの若者は、やる気に欠け、高校を中退し、早い時期での軽度の犯罪活動への関与を示すことが多い。彼らは、行為障害や抑うつ、AD/HDなど治療困難な精神科問題を抱えていることも多い。
アウトリーチ・ワーカーは、できるだけ早い時期にこれらの若者に到達する必要がある。カウンセラーや教師、学校の事務員およびその他青少年と関わる人々には、放っておくと後に覚醒剤を含む物質乱用の起因となるような、行動パターンを同定する訓練が必要である。観察される問題が多い青少年ほど、物質および覚醒剤乱用、依存のリスクも高くなる。
このデータは覚醒剤に特異なものではないが、物質使用障害にはそれ以前に精神障害が存在する場合が多いことを知っておくのは、青少年を扱う仕事に携わるものにとって有益である。自己治療を予防するためにも、精神障害を治療することは重要である。さらに、この集団の青少年は、衝動的傾向があり、これもまた物質使用へのリスクを高めるものである。うつ病および行為障害を抱える青少年は、精神衛生問題を持たない青少年に比べて、物質使用に関与する可能性が高くなっている。
公的な物質使用障害治療制度は、成人指向の場合が多いので、スクリーニングやアセスメントのために青少年をどこに紹介すべきかを知るのは難しい。彼らは未成年司法制度に現れることが多い。青少年が規律に関する問題で紹介されてきた場合は、共存する、あるいは潜在する精神障害・物質使用障害について審査することが大切である。その目的のために多数の適切なスクリーニング検査およびアセスメントが存在する。これらの一覧表については、近々改訂されるTIP、青少年の物質使用障害スクリーニングと査定 Screening and Assessing Adolescents for Substance Use Disorders を参照されたい。小児科医、教師、学校のナース、学校の心理士などが、青少年物質使用者の紹介源となりえる。これら専門家の混合は、青少年の物質使用障害を検出するための広い網を張るために重要となる。
この人口に精通しないカウンセラーのための警告をひとつ挙げておく。青少年は覚醒剤やその他の冒険的行為を試験的に試し、嗜癖を形成することもない場合も多い。したがって、実験的な物質使用行動を、自動的に問題あるいは依存と決め付けるのは間違いである。この人口にだけ限って言えば、青少年を物質使用者として同定し分類を過剰にしないことが重要である。(このテーマに関する詳しい情報は、改訂版TIP、青少年の物質使用障害スクリーニングと査定 Screening and Assessing Adolescents for Substance Use Disorders [CSAT, 1999a] に見ることができる。
アウトリーチには、予防と初期介入活動も含まれる。予防活動はさらにより早い時期に始めるべきではあるが、中学生あるいは11歳、12歳は総合的予防プログラムには理想的なターゲットである。ひとつの例は、不登校児(物質を使用しているかどうかに関係なくハイリスク集団)を対象とした生活技能訓練プログラムを含むものである。文化および家庭の影響を考慮した予防活動を検討することも大切である。ハワイでは、警察が地元文化のハワイ先住民系の若者を対象に、地元文化の基礎に基づいた予防プログラムを行っている。
青少年を対象とした治療設定とアプローチには以下が含まれる:
青少年向けのプログラムでは、使用の中止とともに、クライエントが物質使用している間に学び損なった生活技能、教育的技能の習得にも重点を置くべきである。青少年には、部分的入院、学校の後週5日の治療参加などプログラムにおける集中性が必要である。通常、成人と青少年の混合は避けるべきである。
治療が家庭の外で行われる場合であっても、青少年向けのプログラムは家族の関与を必要とする。家族そのものが物質フリーであるかどうかは、アセスメントによって判断される。青少年を対象とするアセスメントおよび治療プログラムが、発達学に基づいているものであることも重要である。
青少年期の覚醒剤およびその他の物質使用が、この重要な成人期への発達的過渡期に与える影響を考えると、青年期人口には大きな注意が払われるべきである。覚醒剤使用が、身体的、情動的、精神的発達を妨げる可能性もある。
アイスを使用する青少年は、急速に精神病へ移行することが多い。これは、失調統合症の可能性がある場合の鑑別診断を困難にする。アイス使用では、精神病が統合失調症の現れなのか、MA使用によって誘発されたのかを判定するのが困難である。
覚醒剤使用、特にアイスの使用は、拒食症の若年発症を引き起こすこともある。青少年は、減量するため、および性的抑制に対処するために覚醒剤を乱用することが多い。この人口における劇的な体重減少は、MA使用の危険信号でもある。しかし、拒食症および歯科問題以外は、青少年人口では成人の覚醒剤使用人口ほど顕著な身体的健康問題は見られない。
10代での妊娠もここでの懸念のひとつである。物質使用によって避妊と性病予防に関する判断力が衰えることが、若年での性的活動を増加させるからである。
青少年人口に関する最後の憂慮点として、この集団が利用できる地域のリソースが欠けていることを挙げておく。地域に根ざした機関、特に少数民族集団出身の青少年を対象とする機関の開拓が必要とされる。物質使用障害の予防は、専門家集団の教育課程の一部として、また青少年人口と関わる仕事をするすべての地域人員に対しては継続的教育として、提供していく必要がある。(このテーマについての詳しい情報は、近々発表される改訂版TIP、物質使用障害を持つ青少年の治療 Treatment of Adolescents With Substance Use Disorders [CSAT, 1999b] で見ることができる)。
本付録には以下のクライエント・ワークシートが含まれる:
覚醒剤への引き金というのは、あなたの生活の中で覚醒剤使用を思い出させ、薬物への渇望を引き起こすものです。以下は、人・場所・出来事・物・活動などのリストです。これらについて、どれ、または誰の周りで覚醒剤を使用することが多かったかを、チェックしましょう。各リストの中で、あなたの覚醒剤使用ともっとも強く結びついているものに○をつけましょう。
覚醒剤への引き金には、薬物への渇望を誘発する特定の気持ちや、感情も含まれます。以下は、感情、気持ち、状況のリストです。これらの中で、過去にあなたの覚醒剤使用と結びついていたと思われるものをチェックしましょう。各リストの中で、あなたが一番悩まされているものに○をつけましょう。
覚醒剤使用は、特定の人、場所、活動、行動、気持ちなどと結びつくようになります。これらは、あなたの過去の覚醒剤使用のリマインダーとなります。これらのリマインダー、あるいは引き金についてまったく知らないままでいると、これらは徐々に膨らんでいって覚醒剤使用について考えたり、渇望したり、最後には実際に使用するようになってしまいます。しかし、この過程を予防することもできます。
外的誘発因の多くは、避けることができます。すべての誘発因は除去することができます。しかし、誘発因を無視しようとすると、それらはかえってふくらんで、渇望につながることになります。これらの引き金や名残に直面するのを避けるための、そして、もし直面してしまったら、それらが誘発因や渇望へふくらむのを防ぐための、実行プランを作成しななければなりません。
覚醒剤使用を中止は、止めたいという気持ちと決意だけでは実現しません。そこには、実行と行動が必要です。もっと具体的にいうと、あなたに覚醒剤使用を思い出させるものと遭遇する確率を減らすための、具体的実行プランが必要なのです。
あなたのいる環境には、覚醒剤使用を思い出させるものがたくさんあるので、それらを避けるための具体的な行動を取ることが必要です。これらの行動の中には、一見すると不必要に思われるものもあるかもしれません。しかしこれまでの経験から、あなたに覚醒剤使用を思い出させるものを減らすことは、薬物について考えることや誘発因、渇望を減らすことが証明されています。
あなたが覚醒剤を使用するとき、ものごとの収拾がつかなくなる傾向があります。思いがけないほどたくさんのお金を使ってしまう、考えていたよりずっとたくさんの薬物を使用してしまう。そしてその薬物使用によるマイナスの影響を経験することになります。あなたもこのために、きまずい思いや恥ずかしい思い、そして罪の意識を感じたことがあるでしょう。これらの感情も、一般的な嗜癖過程の一部です。これらの問題に対処するためには、あなたが1日1日を乗り越えていく助けとなる特定の行動パターンをつくりましょう。
これらの種類の感情・思考・行動は、物質使用をしているあなたが、生きていくための手段として身につけたものです。これらの手段を、物質使用をしていないあなたが生きていくための健全な手段に取り替えることが必要です。
再発はひとつの出来事ではありません。物質不使用の時期の後覚醒剤を使用する、というただの出来事のひとつではないのです。そうではなくて、嗜癖や回復と同じように、再発もひとつの過程と考えましょう。同様に、再発は、どこからともなく、いきなり現れるわけではありません。回復と同じで、小さな一歩から始まって、それが最終的に本格的な再発となり覚醒剤使用に逆戻りしてしまうのが普通です。
これら再発を引き起こす小さなステップのひとつは、覚醒剤使用を再開してもよい理由を作り上げることです。たとえば、あなたは、覚醒剤使用が許されるような特定の環境や状況について空想し始めるかもしれません。
問題は、このような状況についての空想が、あなたを再発の危険が非常に高い状況へと導くことです。あなたは突然、自分が危険な状況にあり渇望や衝動を経験していることに「気づく」のです。幸い、あなたがどのようなときに自分の再発を正当化するかを同定することによって、この一連の出来事を断ち切り、再発を防ぐことができます。
あなたは、落ち込んだり、怒りや寂しさを感じたり、おびえているとき、覚醒剤を使用したいと思いますか?そのように感じるとき、何を望みますか?次のように考えたことはありますか?
あなたは、選択の余地はない、とか予期もしないことが自分の身にふりかかってくる、というような幻想を抱くことがありますか?自分に向かって、「たまたまそうなってしまった。私が好きで選んだわけではない。」ということはありますか?次のように考えたことはありますか?
あなたは、自分の行動を他人や状況のせいにしているのに気づいたことがありますか?あなたは、誰かに仕返しするために、覚醒剤を使用したことがありますか?次のように考えたことはありますか?
覚醒剤使用を止めるとき、ほとんどの人がいくつかの問題を経験します。あなたも、とても悲しくなったり、憂うつになったり、非常に疲れて眠いと感じたり、激しい覚醒剤渇望を感じたりして、集中するのがとても難しかったことがあるかもしれません。これらの問題が、覚醒剤使用を急に止めたことに関係しているのに気づくのは、難しくありません。多くの人は、これらは退薬症候群と呼びます。
しかし、多くの人は、これらの症状が覚醒剤を最後に使用してから数ヶ月後に起こりえる、ということを知りません。たとえば、数ヶ月経ってから、悲しくなったり憂うつになったりする人もいますが、抑うつは退薬の最中ほどひどくはないのが普通です。活力がなくなったり、物事についての関心がなくなったりする(無気力症)人もいます。あなたは数ヶ月前に覚醒剤使用を断ったとしても、遅延性の覚醒剤退薬 を経験することがあります。これらの症状は:
:ものです。
以下のリストは、遅延性覚醒剤退薬の一部です。あなたは、そのうちいくつを経験していますか?
あなたは、覚醒剤の問題のため治療にやってきました。そして、覚醒剤の使用をやめることを公約しました。しかし、アルコールに関しては公約していません。特に、飲酒に関する問題を持っていないとすれば、なおさらです。その反面、回復プログラムの人たちや12ステップグループの人たちは、アルコールを含めてすべての薬物の使用をやめるよう、あなたに大きな圧力をかけるかもしれません。どうして飲酒を止める必要があるのでしょうか?
Washton, 1990b より、許可を得て一部編集
あなたは、休暇を待ち遠しく思い、楽しい時間を過ごすタイプですか?それとも、休暇が速くすぎればよい、と望むタイプですか?いずれにしても、休暇や特別なイベントはハイリスクな状況になりがちです。
多くの人にとって休暇は、楽しい時間や家族との時間を意味します。しかし、休暇は楽しい時間でもあると同時に、アルコールを伴うパーティ、家族との集中した関与、仕事からの解放を意味します。家族や友人たちと時間を過ごしたいという気持ちは、治療や回復ミーティングをさぼるのに、いい言い訳になります。仕事からの解放は、退屈、所在のなさ、孤独の時間にもなります。パーティは楽しいかもしれませんが、覚醒剤そのものと、それを思い出させるものにあふれている場合もあります。全体としては、大変な時期といえます。
多くの人にとって休暇は、自分の人生の問題について思い出させられる時間でもあります。クリスマス、[SG1]訳注:
ハヌカ:ユダヤ教の祭り、ちょうどクリスマス付近の8日間にあたる。
クワンザ:黒人の権利運動の中で生まれた、自分たちの民族性と伝統を祝う祭典、クリスマスと新年の間に行われる。 ハヌカ、クワンザなどの家族指向の祝日は、独身であったり、離婚していたり、家族がばらばらになっている人たちにとっては、辛い時間となります。これらの祝日は、子供のころの強烈な記憶を呼び戻すこともあります。これらの祝日や大晦日には、その一年の自分が犯した失敗について振り返る人もいます。全体としては、精神的なストレスが多い時期といえます。
回復過程の中で学ばなければならない重要なレッスンは、可能な限りハイリスク状況を避ける、ということです。したがって、回復においてあなたのもっとも重要な目標のひとつは、誘発因、渇望、再発のリスクが高い状況を避ける方法を学ぶことです。しかし、すべてのハイリスク状況を避けることは不可能です。かつてのディーラーや薬物使用の友人に偶然出会うこともあれば、仕事場の誰かに薬物を勧められることもあるかもしれません。
このようにすべてのハイリスク状況を避けることは無理なので、回復におけるもう一つの重要な目標は、ハイリスク状況に対する対処を学び、それらに対しての準備をしておくことになります。この目標には、これらの緊急事態を処理する、あなたの能力を評価することも含まれます。あなたが特定のハイリスク状況を処理して再発を防ぐことができると感じる気持ちを「自己効力感」と呼びます。
一方、あなたがすべてのハイリスク状況に対処できる、あるいはまずは再発を予防するためのスキルや手段を獲得することなしで、ハイリスク状況に対処できる、と考えるのは賢明ではありません。他方では、ハイリスク状況に対処するスキルやテクニックを獲得するのは不可能だ、と考えるのもまた賢明とはいえません。ここでの課題は、あなたが遭遇する可能性のある特定の状況について、自分がどのように処理できると考えるかを評価することです。
再発に関する自己効力感は、あなたが、自分は特定のハイリスク状況を処理する能力を獲得したと考えることです。ここでは通常、(1)ハイリスク状況へ行くことさえも拒否する、(2)アルコールやその他の薬物の勧めを拒否する、(3)ハイリスク状況から離れる、(4)別の活動をすることによって誘発因を振り払う、(5)スポンサーや回復過程にいる友人と話をする、(6)12ステップまたは回復ミーティングで状況を処理する、ための具体的な実行プランを持つことが必要となります。
現実の経験だけでなく、ロールプレー・エクササイズを通じても、あなたのハイリスク状況処理に関する自己効力感を高めることができます。自信過剰でもっとツールを獲得する必要がある、を気づくかもしれません。または、思ったよりも多くのツールを獲得していたことに気づくかもしれません。
下記のロールプレー・エクササイズでは、カウンセラーが「相手」を演じます。各エクササイズの中で、上で述べたような実行プランの段階を考えてみましょう。そして、自分が本当にその状況にいると想像してみましょう。
各ロールプレー・エクササイズについて、以下の点をどう感じたか述べてください。
ストレス、不安、そして怒りは、あなたの考え方、感じ方に強く関係しています。また、身体的な健康にも強く関係しています。ストレスの体験は、あなたの考え方、知覚の仕方に関連していて、これらは激しい感情的反応を引き起こし、あなたの身体的健康にも影響を与えます。
中でも、ストレス、不安、怒りは危険信号です。これらは、何かが変だという事実を、あなたの身体があなたに警告する手段です。何か変なのかははっきりと伝えてはくれませんが、何らかの変化が必要である、という危険信号なのです。
あなたが覚醒剤使用に関与しているとき、これらの危険信号を無視するのは簡単です。回復での重要な課題のひとつは、あなたの生活の中のストレス、不安、怒りのレベルを低くする方法について学ぶことです。しかしこのためにはまず、自分の危険信号を同定する方法を学ぶ必要があります。この課題を達成するための手助けとして、下の中で、治療を始めてからのあなたに当てはまる項目にチェックしてみましょう。そして、これらのストレス危険信号を経験する直前と最中に、あなたの生活では何があったかを、話合いましょう。
怒りの身体的な兆候はあなたの神経系の一部によって引き起こされるので、無意識に起こります。エピソードの間、あなたはこれらのいくつか、あるいはすべてを経験するかもしれません。これらは一時的なもので、自分自身に冷静になる機会を与えさえすれば、すぐに消えていきます。
人は腹を立てるとき、異なる感情を経験します。無力で心細く感じる人もいれば、攻撃的で敵対的になる人もいます。また、被害者になったように感じる人もいます。
人は怒りに対して、異なる行動的反応を持っています。怒りを爆発させて他の人にどなったり、殴ったりする人もいます。また、沈黙して一人になるために立ち去る人もいます。
あなたが腹を立てることと、何らかの関連があるように思われる状況を検討するのは重要です。特定のパターンを見つけ、それを避けることができるようになるかもしれません。
生活は ストレッサー で満ちています。つまり、この世界には、私たちが何かをするように、あるいは規則に従うようにと、ある種類の圧力をかけるものがたくさん存在するのです。そして ストレス は、これらのストレッサーに対する私たちの内的反応です。たとえば、交通渋滞につかまるのはストレッサーです。腹を立て、イライラして、不安になるのは、渋滞につかまったことに対する反応です。そして、これがストレスです。しかし、ストレッサーがストレスの多い経験へと変わるサイクルを止めるためにできることがあります。これらは、あなたの回復の重要な側面になります。
典型的な場合だと、たくさんの人が、あなたが覚醒剤を使用することを知っています。あなたが思っているよりも、たくさんの人が知っているかもしれません。他の人に言わないで治療を受けようとすると、人々はあなたがまだ使用をしているものと考えます。あなたの覚醒剤使用の友人が電話をしてきたり、立ち寄ったり、会おうとして連絡してきたりします。これらは、大きなストレスになります。しかしもしあなたが回復を宣伝したら、これらの人々はあなたに寄ってこないかもしれません。また友人や家族に伝えることは、あなたの回復のサポートになります。こうして、あなたのストレスを減らすことができます。
回復過程にいるということは、グループ治療や12ステップミーティングに参加する、運動をするなど、たくさんの新しい活動を始めることを意味します。1日の時間は限られているので、中には止めなければならない活動も出てきます。目標は、不健全で実りのない日課をあきらめ、健全なものに取り替えることです。したがって、あなたはどの活動をあきらめるのかについて優先順位を決めなければなりません。あなたの毎日の活動に優先順位をつけることは、あなたのストレスを減らします。
回復の特定の段階で、多くの人が自分は一人ぼっちだと感じます。そのとき、過去の過ちや問題に焦点を当てて、憂うつになったり不安になったりしがちです。しかし、回復の焦点は、他人と一緒にいること、他人にあなたの苦労や成功について話すこと、他人が健康を回復した方法について語るのに耳を傾けること、にあります。もうひとつの道は、物理的にあるいは心理的に一人ぼっちでいることです。これは、ストレスになります。他の人たちと共に回復関連の、あるいは娯楽の計画を立てましょう。これは、あなたのストレスを減らします。
覚醒剤使用の現役時代は、人々は薬物関連の問題に圧倒されてしまうことが多くなります。そして問題が消えうせることを願います。しかし、無視したままだと、これらの問題はより悪くなり、大きくなる傾向があります。幸いながら、問題は解決することができます。しかし解決には、実行プランが必要となります。
覚醒剤関連の問題は、あまりに圧倒的に思われ、強い感情を引き起こすこともあります。一度にひとつの問題に焦点を当てるようにしましょう。
考えられる限りの解決策、これまでに試したことがないものについて、書き出してみましょう。他の人からアドバイスをもらいましょう。
あなたが、うまくいきそうに感じる解決策をひとつ選びましょう。そして、その解決策を実行に移すためのプランを作成しましょう。何をするべきでしょうか?誰が援助してくれるでしょうか?
あなたが望んだように問題が解決されなかったとき、あきらめてはいけません。どうして解決策がうまく働かなかったのか、考えてみましょう。部分的にはうまくいったけれども、完全には解決されなかった、ということはありましたか?新しい解決策の可能性を探して、また実行プランを作成しましょう。一番大切なのは、ぐずぐずと引き伸ばしたり、問題を無視したりしないことです。
人は腹を立てます。これは人生の一部です。あなたも、人生の様々な場面で腹を立てることでしょう。しかし、怒りをもち続けるのは健全ではありません。怒りはあなたを衝動的にし、心にもないことを言ったり、したりすることになります。また、怒りは覚醒剤渇望の誘発因にもなります。
あなたは、回復過程の中でも、腹を立てることがあります。あなたは、深いところにある感情と関連している状況について考えることになります。あなたは、誰にも話し合ったことがない自分の気持ちについて語ることを期待されます。覚醒剤使用のマイナス影響についての認識がふくらむにしたがって、あなたは激しく不愉快な感情を経験するかもしれません。
あなたは、怒りに対処する不健全な方法を身につけている可能性があります。怒りを抑圧して、何でもないようなふりをする傾向があるかもしれません。衝動的に爆発して、他人を身体的あるいは感情的に虐待することによって自分の怒りを表現するかもしれません。それとも、怒りがどんどん積もってあなたを食いつぶすに任せているのかもしれません。しかし、あなたの怒りを管理し、健全な方法で表現する方法を学ぶことは可能です。
覚醒剤が、正常な人間の経験では得られないような劇的な陶酔経験を与えてくれることは確かです。これは、人々が覚醒剤を使用する理由のひとつです。あなたも何度か覚醒剤によって、非常に幸福で、自分がこの上なく強力で不死身なように感じた経験があるはずです。
あなたはまた、非常に憂うつでイライラし、怒りっぽく感じた経験が何度もあるはずです。同じように、財政上や雇用上の問題・家族や友人との問題・健康に関連した不安・法的問題など、あなたの覚醒剤使用に関連した悪影響をたくさん経験したかもしれません。
物事のよい面に注目し、マイナス面を軽視したくなるのは、自然なことです。人生の特定の側面については、このルールに沿って生きるのも悪いことではありません。しかし、回復における課題のひとつは、常にあなたの覚醒剤使用によって起こったマイナスの影響を思い出すことです。再発の兆候のひとつは、各政治使用に関連する楽しい時間だけ、特に陶酔経験を選択的に思い出すことです。「戦争体験談」をし、自分たちの狂気じみた覚醒剤関連の体験を強調する人たちは、自分たちにもそれを聞いている人たちにも、覚醒剤への誘発因、渇望、衝動を引き起こしてしまいます。
回復過程の数週間から数ヶ月になると、あなたは全般的に気分がよいと感じるようになるでしょう。治癒過程は始まったばかりですが、あなたは、いくらかはっきり考えることができるようになり、自分の気持ちをよりよく経験し表現することを学び、問題解決スキルを学んでいます。このとき、あなたの覚醒剤使用のマイナス影響のいくつか、あるいは多くが、消えていく、あるいは軽くなっていきます。
あなたが、覚醒剤使用に戻ることができるかもしれない、という幻想を持つのは、この初期回復段階です。あなたは、もし自分が変化を遂げたとしたら、もう一度覚醒剤を使用できるかもしれない、と考えたりします。自分に向かって、「慎重」にすればコントロールを失わないで覚醒剤を使用することができるかもしれない、とささやくかもしれません。あなたは、自分がコントロールを失うことなく覚醒剤を使用できるかどうかを試すために、「最後にもう一度だけ」覚醒剤を使用してみる時期が来たのではないか、と考えるかもしれません。これらは「使用をコントロールする幻想」と呼ばれます。これらは、再発が間近に迫っているときの典型的な危険信号です。
あなたが「使用をコントロールする幻想」を経験している場合、すぐに実行プランを作成する必要があります。このプランには(1)これらを幻想と認め、この選択肢を否定する;(2)これらを、危険が間近に迫っているという警告として捉える;(3)ただちに12ステップのスポンサー・カウンセラー・回復過程の友人などと話をする;(4)できるだけ早く、12ステップあるいは回復グループのミーティングに出席する;(5)ミーティングでこれらの危険信号について話し合う、などが含まれます。
あなたが覚醒剤を使用していたあの「素晴らしい」日々について考えたり、覚醒剤使用をコントロールできるのではと空想したりすことがあるとしたら、あなたの覚醒剤使用に関しての「醜いリマインダー」とでも呼ぶべきものが役立つかもしれません。これらは、あなたの覚醒剤使用がかなり深刻な悪影響や問題を含んでいたことを思い出させてくれます。
しかし度を越してはいけません。あなたの覚醒剤使用がどんな種類の問題を引き起こしたかを覚えておくことは大切です。しかし、自分に辛くあたるのもよくありません。そうではなくて、選択的記憶やコントロール幻想などの危険信号を経験したときに、 覚醒剤使用の暗い面について思い出すようにしましょう。
あなたが覚醒剤を使用していたとき、あなたの生活は薬物を入手し、使用し、その影響から回復することを中心に回っていました。同時にあなたの生活は、混乱していて手に負えない状況で、骨組みに欠けていました。回復過程は、あなたの生活の中で骨組みを組み立てて、それを健全ね活動で埋めていくための機会です。
リクリエーション 活動は、通常他人と一緒に、楽しい時を過ごし生活を楽しむために、組織活動に積極的に参加することです。そこには、しらふでのダンス、ボーリング、フットボール、トランプに加えて、スポーツ、美術工芸活動、室内ゲームなども含まれます。身体的運動が必要なものもあります。余暇活動 は、主にリラックスし楽しむことが主な目的で、あまり労力は使いません。ここには、散歩をする、会話を楽しむ、読書、映画鑑賞、スポーツ鑑賞などが含まれます。
リクリエーション活動、余暇活動、趣味はすべて、あなたが楽しい時間を過ごし、他人と一緒に楽しみ、あなたの生活に健全な活動を追加するための手段です。これらによって、あなたは薬のことを忘れ、生活の骨組みを作り、さらに新しいことを学ぶこともできるかもしれません。これらの活動によって、あなたは退屈や落ち着きのなさから逃れることができます。また、ストレスや不安も減らしてくれます。
エアロビクスやステップ・エアロビクスなど、激しい運動を定期的にするのを楽しむ人もいます。しかし、健康のためには激しい運動をする必要はなく、早足での散歩やサイクリング、スケートなどもう少しゆるやかな運動でも大丈夫です。また、運動するという目的の運動にはなじめない人もいるようです。その場合、グループでする社交的な運動活動の方が、楽しく感じるかもしれません。ここには、ダンス、テニス、水泳の他に、グループでの散歩、サイクリング、ジョギング、スケートなどが含まれます。
運動には、あなたの身体的健康を増進する、脳の働きを活発にする、睡眠を改善する、活力を提供する、ストレスや不安を和らげる、などのメリットがあります。運動はまた、あなたの生活に骨組みを提供し、体重増加予防にもなります。
あなたは、運動活動に参加するたくさんの機会が、身近にあることに気づいているかもしれません。とても田舎に住んでいるのでない限り(たとえそうであっても)、近くには郡や市のリクリエーション部門や地元のYMCA,ユダヤ人コミュニティーセンター、民間のスポーツクラブやジムなどがあるはずです。これらの多く、特に非営利団体後援のスポーツクラブでは、低料金あるいは無料のサービスが提供されています。イエローページの「スポーツクラブ」「エクササイズ」「リクリエーション」欄を見たり、市や郡のリクリエーション部門に問い合わせたりして、地元の情報を獲得しましょう。
あなたの覚醒剤やその他の薬物、とくにアルコールは、あなたの食生活に悪い影響を及ぼしたはずです。覚醒剤は、あなたがまったく食事をしていない状態であるときでも、空腹感が満たされたような気にさせて、あなたの食欲を抑制します。覚醒剤によって食欲が人工的に抑制されたとき、あなたはあまり食べなくなり、十分なカロリーと栄養を摂取しません。同時に、覚醒剤はあなたの身体の代謝速度を速めるため、実際はより多くのカロリーを必要とする状態なのです。また、あなたが通常、覚醒剤とアルコールを組み合わせて使用する場合、あなたはカロリーの大部分をアルコールから摂取していることになり、これは「空のカロリー」と呼ばれます。
定期的な食事をしないことに加えて、食事の仕方も悪くなっているかもしれません。たとえば、衝動的に食べるようになったかもしれません。また、食事を取るときには、栄養価がほとんどない食物を食べる習慣ができてしまっているかもしれません。
あなたはたぶん、どこかで、毎日の食品を選ぶためのガイドである食品指導ピラミッドについて読んだ覚えがあるでしょう。しかし、それがあなたにどのように当てはまるのかは、考えたことがなかったかもしれません。これらの5つの食品群を見直して、この情報をあなたの生活に取り入れることは、回復の大切な側面となります。規則的に食事をし、これらの食品群の間のバランスがとれた食事をすることは、覚醒剤渇望を減らし、睡眠を増やし、集中力を増加し、退薬関連の不安や抑うつを減少し、回復に必要な十分なエネルギーを提供してくれます。以下では、5つの食品群の基本的な説明と、1日に各食品群を何サービング分摂取すればいいのかについて述べてあります。実際には「1サービング [盛] 」は、かなり少ない量であることを覚えておいてください。
これらは、食物繊維とビタミンの宝庫です。繊維を十分にとることは、便秘を予防します。十分なビタミンは、脳、神経、筋肉、皮膚、骨格の健全な機能を保証します。ビタミンの中には、食品のが持つエネルギーの放出を助けるものもあります。健康な食生活には、毎日3から5サービングの野菜、2から4サービングの果物が含まれます。1サービングというのは、2分の1カップの果物か野菜、小さなサラダ、中くらいのジャガイモひとつ、レタス4分の1という具合です。
これらは、よいタンパク、ビタミン、ミネラル源です。タンパク質は、筋肉、皮膚、血液、骨格の主要成分です。慢性覚醒剤使用によって枯渇する脳内化学物質も、タンパク質からできています。健康な食生活では、毎日6から11サービングのこの群の食品が必要です。1サービングは、パン1枚、2分の1カップのパスタか米、1オンスのシリアルなどです。
これらには、牛乳、アイスクリーム、ヨーグルト、チーズ、カッテージチーズが含まれます。これらの食品は、カルシウム、タンパク質、ビタミン源です。カルシウムは健康な骨格や歯に必要です。健康な食生活では、これらの食品が毎日2から3サービング必要です。1サービングは、1カップのスキムミルク、1と2分の1カップのナチュラル・チーズ、1と2分の1カップの低脂肪アイスクリーム、1と4分の1カップのハード・チーズなどです。
これらの食品は、タンパク質、ミネラル、ビタミンが豊富です。健康的な食生活では、この食品群は1日に2から3サービングに限られます。1サービングは、2から3オンスの鶏肉・魚・あるいは赤身牛肉、卵1個、2分の1カップの調理済み乾燥豆、2分の1カップのナッツ類などです。また、大さじ2杯のピーナツバターは1オンスの赤身肉に相当します。
これらの食品は控えめに摂取すべきなので、分量の目安は示しません。
覚醒剤嗜癖の人々は、衝動に基づいて行動するようになります。規則的な食事をしなかったり、非常に慌しく食事をしたり、栄養価でなく味だけで食品を選んだりすることが、当たり前になります。決まった食事のスケジュールがなく、食事計画もなく、ハンバーガーとフライドポテトのような高カロリー、高脂肪のファーストフードに過度に依存することが多くなります。しかし、ほんの少しの計画を練ることで、食事が、ただの衝動的活動から回復過程の健全な構成要素へと変化します。
慌しく食事を止めるのは重要です。食事のスケジュールを立てることは単純ですが、あなたの1日に骨組みを加えるのにとても有効な手段です。あなたが家族と一緒に住んでいる場合は、食事時間はたとえ短くても、家族全員がそろう時間になりえます。12ステップや回復グループのミーティングなど毎日あるいは1週間の優先事項を整理する時間を持ちましょう。そして、こうした回復のための優先事項と食事と両方を含めたスケジュールを立てましょう。そして、このパターンの継続と更新を決意してください。.
最初は馬鹿らしく思えるかもしれませんが、次の数日あるいは週にどんな食事をしたいかを考える時間と取りましょう。ひとつひとつの食事について考える必要はありません。むしろ、次の数日間の食事で、特に夕食で、どんなものを食べたいのかを考えるという程度です。この方法だと、事前に計画をして、それらの食事を作るのに必要な材料を買うだけですみます。
次の数日間にどんな食事をしたいかを決めたら、それらの食事を用意するのに必要な食料品のリストを作成する時間を取りましょう。この作業は、あなたが計画なしで食料品店を歩き回って、衝動的に買ってしまうのを避けるのを助けてくれます。また、お金の節約にもなります。りすとは、朝食用品目、朝食用品目、夕食用品目、スナックに分けることができます。スナックとしては、果物を第一に考えるようにしましょう。
食事の支度や後片付けが好きではない人はたくさんいます。同居人がいる場合は、誰が何をするかを決めることも大切です。話合いで、1人が料理したらもうひとりが後片付けをするというような決め事をするのもいいかもしれません。
誰でも、時々は外食を楽しみます。あなたにもお気に入りのレストランがあるでしょう。しかし、外食は、覚醒剤使用の期間中に身についた衝動的な行動のひとつである場合も多いのです。したがって、外食をあなたの1週間のスケジュールの中に組み入れることを学びましょう。この方法ならば、外食を健康的な食事スケジュールを守っていることへの褒美、あるいは報酬として捉えることができます。
これは _____________________ (クライエント)の覚醒剤不使用状態の維持を援助するため目的の_____________________ (クライエント) と ____________________ (臨床家)との間の同意書である。
私は、私のカウンセラーに、24週の間私の尿サンプルを採取するスケジュールを作成することを要請する。私は治療前半の12週間は、毎週月曜、水曜金曜の3回、尿サンプルを提出する。後半の12週間(第13週から24週)には、月曜と木曜というスケジュールで週に2回尿サンプルを提出する。私と同性の臨床職員が、サンプル採取を監督する。サンプルは、コカイン、アンフェタミン、オピオイド系薬物、マリワナ、鎮静剤などを含む様々な薬物の検定をされる。各採取時には3オンスの尿が必要とされる。分析に十分な量が提出されない場合は、予定されていたサンプル提出に失敗したとみなされる。
危急の用で遠くにでかける場合は、出発の前に私の治療者に連絡をする。私の治療者は、こういった不在を __________________________ [重要な他者など] に確認する権限を持つ。私が入院する場合は、私の治療者が病院において尿サンプルを採取する手配を整える。私が入院はしないが病気になった場合は、予定された尿サンプル提出について私が手配を行う。交通機関の問題や天候不良のため来院が困難な場合は、(臨床スタッフの助けを借りて)私が尿採取のため来院する方法を手配する。特定の主要祝日には、クリニックは閉院する。私の治療者と私は、こうした祝祭日の週には尿検査スケジュールを変更することに、相互合意する。
適切な医学的理由により、乱用薬物である薬を処方された場合、私は治療者に、私の主治医あるいは歯科医の名前と電話番号を提供する。私がそのような処方を受けた場合、私は、私の治療者が電話または書簡で私の主治医あるいは歯科医に連絡を取ることに、この書面において同意する。私は、治療者に処方箋のコピーを提供すること、あるいは治療者に処方薬の容器を見せることに同意する。
治療の第1週から12週までに覚醒剤陰性の尿サンプルを提出するたびに_______________ ポイント獲得する。私は、覚醒剤陰性サンプルの採取後、獲得ポイントを明記したクーポンを受け取るものとする。このクーポンには、その日に獲得したポイントとともに、これまでの累積ポイント・その金銭的等価が明記される。
治療前半の12週間において、最初の覚醒剤陰性尿サンプルは10ポイント獲得、その後連続する覚醒剤陰性尿サンプル採取について、前回の獲得点プラス5ポイントが加算される。たとえば、水曜日に覚醒剤陰性サンプルを提出し10ポイント獲得した場合、続く金曜日の覚醒剤陰性サンプルでは15ポイント獲得でき、その次の月曜日には20ポイントなる、という具合である。覚醒剤不使用状態を維持に対する追加報酬として、覚醒剤陰性尿サンプルが連続3回採取されるごとに毎週_____________ ボーナスを獲得する。仮に、治療前半の12週の間に覚醒剤陽性尿サンプルが採取されることがなかった場合、______________ ボーナスを獲得する。治療後半の12週間では、この報酬プログラムは違うものとなる。覚醒剤陽性尿サンプルの場合、ポイントではなく_____________ を獲得する。
24週間の治療を通して覚醒剤陰性の尿検査結果が得られると、その直後に以下のことが生じる。 _________________ [プラスの報酬] (第1週から12週)あるいは _____________ [プラスの報酬] (第13週から24週) が与えられる。
すべての尿サンプルについて、薬物使用検査を行う。この同意書は覚醒剤に関してのみ有効だが、記録は、陽性が検出された薬物に関するものすべてが保管される。覚醒剤陽性尿サンプルの提出のたびに、私は _______________ [プラスの報酬] を受け取らない。
事前に私の治療者の許可を得ている場合を除いて、指定の日に尿サンプル提出ができなかったときには、治療者は覚醒剤陽性尿サンプルと同様に扱い、上記の手続きが有効となる。
下記の私の署名は、私がこの尿検査モニタリング過程の条件について、読み、理解し、同意することを認めるものである。この過程については、私は詳しい説明を受け、私がこのプログラムのクライエントである限り、覚醒剤陽性あるいは覚醒剤陰性の尿サンプルを提出する事に伴う結果について、理解していることを証明する。
機能分析は、あなたが自分の覚醒剤使用について理解することを助けるためのテクニックです。これによってあなたは、将来の覚醒剤使用の可能性を減らすための問題解決法を実行できるようになります。あなたは、覚醒剤使用の直接の原因を同定できるようになります。機能分析は、覚醒剤使用の3つの側面について、あなたが検討するのを助けるための手段です:
引き金とは、一般的にあなたが覚醒剤を使用するであろう可能性を増やすような環境、状況、人、場所、感情などのことです。これらはあなたに無理やり覚醒剤を使わせるわけではありませんが、その可能性を増やします。
引き金に出会った場合、気持ちがよくなる、楽しくなる、面倒なことを忘れるなど、覚醒剤使用の即時的な効果に関する特定の考えや気持ちが浮かんでくるはずです。そして、覚醒剤を手に入れて使用するために必要な行動について考えるかもしれません。
いったん引き金にさらされ、覚醒剤についての考えや気持ちが浮かび始めると、あなたは特定の行動を取るでしょう。その中のひとつは、覚醒剤を使用することです。しかし治療を通じて、覚醒剤使用を別の対処行動に替えることができるようになります。
覚醒剤を使用するとすぐに、あなたは、プラスの強力な強化影響を体験するでしょう。これらのプラスの影響には、陶酔感を感じる、活力が湧いてくる、性的欲情が高まる、不愉快な出来事や気持ちを忘れる、悲しみや憂鬱、精神的苦痛などを感じない、などが含まれます。これらプラスの影響は、通常すぐやってきますが長くは続きません。
マイナスの影響には、お金を使いすぎる・ハイリスクの性行為に関わる、他人を苛立たせたりけがをさせたりする、仕事や学校をさぼるなどのように、覚醒剤使用エピソードの最中あるいは直後に起こるものもあります。しかし、家族や社会的人間関係、財政状態、身体的健康、教育目標、職業的安定性、法的地位などにおける障害など、マイナスの影響の大部分は遅れてやってくる、あるいは現れるのに時間がかかります。
クライエント・ワークシート 32、あなたの覚醒剤使用の機能分析、 クライエント・ワークシート 31、機能分析ワークシート を使用する前に、このワークシートを完了しなければなりません。このワークシートは、あなたが覚醒剤使用をする可能性を増加させるような環境、状況、人、場所、思考、感情について同定するのを援助するものです。
クライエント・ワークシート 31 【機能分析ワークシート】 |
このワークシートは、クライエント・ワークシート 31、機能分析ワークシート と組み合わせて使います。これは、 クライエント・ワークシート 30、機能分析実施の準備:あなたの誘発因の同定 を完了してから使うようにしてください。
機能分析ワークシート の「あなたの行動」の欄に、あなたが最近覚醒剤を使用したときの例を簡単に書き込みましょう。.
この覚醒剤使用エピソードの直前に、あなたは何をしていたか考えてみましょう。誰と一緒にいたか、何をしていたか、何時ごろだったのか、覚えていますか?これらを「誘発因」欄に書き入れましょう。
この覚醒剤使用エピソードの直前に、何について考えていましたか?どんな気持ちだったか覚えていますか?思い出す限りの考えや気持ちを「感情と思考」の欄に書き入れましょう。
あなたが覚醒剤使用をした直後に、何が起きましたか?あなたの気分はどんな風に変わりましたか?陶酔感や力強い感じがしましたか?普段よりもエネルギーあるいは活力があるように感じましたか?楽しい、あるいは [使用] 前ほど憂うつではないように感じましたか?何かについて不快に思っていたのが止まりましたか?
このエピソードを含めた覚醒剤使用の長期的な影響は何でしょうか?それは、あなたの友人との関係にどのように影響していますか?あなたの家族に対する影響はどうですか?職場あるいは学校の状況に対しては?あなたの財政状況に対しては?あなたの感情状態に対しては?そしてあなたの身体的健康に対しての影響はどうでしょう?
比較的最近の別の覚醒剤使用エピソードについて、考えて見ましょう。1から5までの段階を繰返しましょう。クライエント・ワークシート 31、機能分析ワークシート が埋まるまで、これを繰り返します。
あなたも、覚醒剤使用を止める方法を学ぶことができます。これまでに、覚醒剤問題を持つたくさんの人たちが使用を中止する方法を学んできました。
覚醒剤使用はあなたが学習したものだ、と考え始めることが重要です。学習された習慣なのです。覚醒剤使用を中止する方法を学ぶためには、あなたの覚醒剤使用がどんな風に始まったのかを正確に理解する必要はありません。他の人たち、出来事、環境を責めることは、あなたが中止する方法を学ぶ助けにはなりません。しかし、覚醒剤使用乱用は、あなたにとって対処可能な問題である、ということを学ぶことは有効です。
この治療プログラムの目的のひとつは、あなたが覚醒剤とその他の薬物の使用を止める方法を学ぶ援助をすることです。もうひとつ同じくらい重要な目的としては、あなたが薬物抜きのライフスタイルを生きる方法を学ぶのを援助することです。覚醒剤使用の中止が実現すれば、あなたは治療から最大のメリットを得ることができるようになります。プログラムとしては、あなたのその他のライフスタイルの改善を援助することに焦点を当てることができるようになるからです。これらの改善は、覚醒剤の長期不使用状態を促進するものです。
誤りは予防することができ、また予防するべきです。しかし、それでも誤りは起こります。あなたが治療中に覚醒剤を使用してしまった場合、それを失敗として見なしてはいけません。むしろ、こうした出来事は、あなたが自分の覚醒剤使用についてさらに学んで、完全に使用を中止する方法をより効果的に学ぶために利用することができます。けれども、これはあなたに覚醒剤を使用する許可を与える、という意味ではありません。
あなたは、治療セッションとセッションの間にこれらの新しいスキルを練習することを学ぶ必要があります。ハイリスクの状況に対処するためには、改善について話合うだけでは十分ではありません。そうではなくて、練習によって学ぶのです。
これまでに、あなたは自分の誘発因をいくつか同定してきました。これらを、ハイリスクの場所、人、時間帯、活動、感情、などに分類してみましょう。これによって、外的 で主にあなたの環境(場所など)に存在していている誘発因もあれば、感情や思考など 内的 な誘発因もある、ということを見ることわかると思います。異なる誘発因には異なる反応が必要です。
特定のハイリスク場所や人など、避けることができる誘発因もあります。ここには、帰宅するのに別の道筋を選んで覚醒剤ディーラーの家の前を通ることを避けたり、よく通っていたバーやクラブの前を通ることを止めたりすることが含まれます。
あなたの環境全体を完全にコントロールすることは不可能ですが、たとえば自宅など、あなたがほとんど完全にコントロールすることができる環境もあります。自宅から覚醒剤、薬物使用用の用具、ディーラーの電話番号などを処分しましょう。また、ハイリスク場所の前を通ることが分かっているような場合は特に、現金を持ち歩くのを止めましょう。
中には避けられない誘発因もあります。あなたにとって現金や家族の1人が誘発因だとしたら、これらの誘発因はいつも避けられるわけではありません。したがって、こうした誘発因に直面するための準備を身につける必要があります。こういった状況(たとえば、現金に触れた後であなたの配偶者に電話をする)の中でも覚醒剤使用に走ってしまわないように、新しい戦略やプランを作るのです。
クライエント・ワークシート 35、自己管理計画ワークシート を何枚かコピーしましょう。各ワークシートにつき、ひとつの誘発因について考えます。下に示した各段階に従ってください。
段階1
あなたが対処する必要のある特定の誘発因をひとつ選びましょう。次のセッションまでに出遭う可能性が高い誘発因を選んでください。それを「誘発因」の欄に書き入れます。
段階2
どんな方法でこの誘発因に対処できるか、考えてみましょう。避けることはできますか?あなたがこの誘発因に出遭わずにすむように、環境を再整理することはできますか?この誘発因に出遭った場合にあなたが行うことができる、何か新しい対処戦略はありませんか?これらを「プラン」の欄に書き込みましょう。各誘発因につき、複数のプランを持つことは可能です。
段階3
カウンセラーと共に、各プランの全体的な影響あるいは結果についてよく考えましょう。これらを「プラスとマイナスの影響」の欄に書き込みます。
段階4
各プランを実行するのは、どのくらい困難ですか?もっとも困難でない場合はを「1」、もっとも困難な場合を「10」として、各プランの困難さの程度を「困難さ」の欄に書き入れましょう。
段階5
妥当だと思われるプランをひとつ選びましょう。カウンセラーと共に、ロールプレー・エクササイズを行ってこのプランの実行を練習しましょう。
カウンセラーと一緒に上記の段階を繰り返して、このセッション中に最低3つの誘発因に取り組みましょう。また、次のセッションまでに、さらに3つの誘発因を同定してきてください。
この尺度は、下記の10領域の中で、あなたの人間関係の幸福度を推定するためのものです。各領域を評定するときに、次の質問に自問自答してみてください:この領域について、今日私は自分のパートナーにどのくらい満足しているだろうか?あなたは、現在の幸福感について答えているということを忘れないでください。つまり回答は、あなたが今日どう感じているかを示すものです。また、ある領域についてのあなたの気持ちが、その他の領域での評価に影響しないように気をつけましょう。
特に覚醒剤使用が関係の一部になっている場合、パートナーの有り難みを忘れるのは容易です。あなたの人間関係の中で習慣となってしまっている否定的な行動を逆転させることは可能です。このワークシートは、そのための簡単で有効な手段について、あなたに思い出させる役割をします。このワークシートは、あなたがパートナーのためにどんなことができるかを思い出させ、これらの行動をあなたがどれくらい行っているかを記録するためです。
クライエント・ワークシート 37 【優しくなるためのリマインダー】 |
Sisson and Azrin, 1989. より許可済み
下記の各領域について、あなたにとって理想の関係での状態を書き込みましょう。簡潔で具体的な回答にしましょう。また、あなたが肯定的に感じる状態を書きましょう。
「家事」について「私は、パートナーが…だといいと思う。」
「育児」について「私は、パートナーが…だといいと思う。」
「社交活動」について「私は、パートナーが…だといいと思う。」
「自立」について「私は、パートナーが…だといいと思う。」
「個人的な」について「私は、パートナーが…だといいと思う。」
「お金の管理」について「私は、パートナーが…だといいと思う。」
Sisson and Azrin, 1989. より許可を得て一部編集
あなた、あるいはパートナーがお互いに対して改善してほしいことがある場合、一番効果的な方法は肯定的なコミュニケーションを用いることです。これは、強く要求したり、ガミガミ言ったり、命令したりする、といった否定的なコミュニケーションによるものよりも、ずっと効果的で気持ちもよいものです。
肯定的なコミュニケーションを行うことはスキルであり、学ぶことができます。また、練習も必要です。初めは不自然な感じがするかもしれませんが、あなたが練習を積み、日常生活の中に組み入れていくうちに自然になっていきます。
要望は、やり方によっては気持ちのいいものとなり、満たされる可能性も高くなります。
欲張ってはいけませんが、消極的になる必要もありません。どうなったら、あなたは本当にうれしいと感じますか?道理にかなっているようであれば、頼んでみましょう。
相手の立場で考えてみて、パートナーがどう感じているかを理解しましょう。パートナーはあなたが必要だと感じているものを??。または、あなたが不満に思っていることにさえ気づいていないかもしれません。
妥当だと感じたら、現在の状況に関するあなたの部分的責任を受け入れましょう。あなたにとってある状況がどれほど重要なのかを、十分わかってもらうことは不可能かもしれません。また同様に、ある状況が生まれたのには、あなたにも等しく責任があるかもしれません。たとえば、あなたが、パートナーにもっと子供の宿題の面倒を見てほしいと考えているとします。あなたとパートナーの両方が子供の宿題を手伝うことが、あなたにとってどれほど重要なのかを、これまでにパートナーに表現したことがなかったことについて、まずパートナーに気づいてもらいましょう。また、あなた自身も子供の宿題の面倒を見るのに十分な時間を割いていなかったことを、パートナーに認めるようにしましょう。
パートナーがあなたの要望の実現をしやすくなるように、援助を申し出ましょう。
あなたは、パートナーに、あなたがうれしく思うことをするよう頼もうとしているのですから、あなたもパートナーに対して、同じことを快くしましょう。
ものごとは、常に白黒つけられるとは限りません。時には、妥協するのが最適な場合もあります。あなたとパートナーの両方にとって何か得るものがある場合は、妥協もいとわないようにしましょう。
この同意書は、あなたが関係の中でプラスの変化を達成し維持するように、援助するために設計されています。治療中、あなたとあなたのパートナーによって要請された相互変化を証明するこれらの同意書を何通か製作するよう要求されます。公約を結んで文書化することによって、あなたは、自分の関係の中でプラス変化の達成および維持に向かって積極的に行動することになります。
私 ___________________________ は、私のパートナーからの要望により、下記の変化を達成するためにできる限りの努力をすることに同意します。私は、この変化が彼/彼女にとって非常に重要であることを理解し、したがって、これは私にとっても重要なものとなります。
私 ___________________________ は、私のパートナーからの要望により、下記の変化を達成するためにできる限りの努力をすることに同意します。私は、この変化が彼/彼女にとって非常に重要であることを理解し、したがって、これは私にとっても重要なものとなります。
この同意書は、新しい同意書が取って代わるか、当事者の一方あるいは双方が参加を終結させた場合を除いて、治療期間を通じて有効となります。
パートナーに話しかけるとき、あなたが見知らぬ人や同僚に対して使うような丁寧な言葉や調子で話しましょう。
パートナーがしたことについて、あなたがうれしいと感じていることを伝えましょう。うまくいっていないことだけでなく、成功していることを強調しましょう。
求められたり、特別な理由がなくても、パートナーが喜ぶようなこと、あるいは特別だと感じるようのことをしましょう。また、これは見返りを期待しないでしましょう。
不満を伝える前に、その価値があるかどうかを自問自答しましょう。重要だと思えることのみについて、不満を表現します。
前向きな議論ができるような場面と時間を選びましょう。どちらかが腹を立てているときや、急いでいるときは、ふさわしくありません。
あなたは何を達成しようとしていますか?あなたが求めているのは何ですか?なぜこれらの変化を欲するのですか?それらの変化は妥当、あるいは達成可能のものですか?
1度にひとつのことに焦点を絞りましょう。問題に関して、具体的な例を挙げるようにしましょう。パートナーに、どんな風に変化してほしいのかを正確に伝えられるよう、準備しておきます。その問題に集中するようにして、他の問題は持ち出さないようにしましょう。
肯定的なやり方で、あなたが気になっていることと、どんな風に改善してもらいたいのかを、パートナーに伝えます。批判やけなす言葉、動機に関する推測などは避けましょう。
双方にとって都合のよい解決策の議論に備えましょう。最後通達を宣言したり、パートナーの考えを却下したりしてはいけません。
たとえ健全な関係の中でも、意見の相違は関係の正常な側面です。恋愛あるいは夫婦関係にある人たちが、いつでも何にでも同意するとは限りません。
人が意見の相違と考えるものには、誤解、あるいはコミュニケーション不足が含まれることが非常に多いのです。
誤解は、あなたがパートナーに伝えようとしているメッセージが、あなたが予期していなかった、あるいは意図していなかった反応をパートナーから引き出した場合に生じます。
誤解は、あなたが内心を明確に、具体的に、あるいは完全に表現できていないことから、生じることが多いものです。あなたのパートナーが、何を知っていて何を知らないかについて、自分で決め込んではいけません。あなたがなぜ不満を言っているのか、なぜ要請をしているのか、その理由をはっきり告げましょう。
あなたは、自分が本当に欲していることを言わないことによって、情報を省くことによって、あるいは言語によるメッセージと矛盾する非言語メッセージを与えることによって、自分が意図しないメッセージをパートナーに伝えている可能性もあります。
このアプローチで用いているコミュニケーション・スキルに従わない場合、人々は口論やけんかをすることになります。たとえば、ひとつのテーマに集中できない場合、腹を立てているときや不適当なときに問題を提起した場合、あるいはあまりに批判的な態度でいる場合、議論は容易に収拾がつかなくなり、喧嘩あるいは口論へと発展します。
喧嘩と口論行動をコントロールするための第一歩は、あなたの喧嘩のパターンを認識することです。喧嘩は議論あるいは解決策なしで問題を持ち出すことである、と捉えることもできます。通常、パートナーとの喧嘩に終わってしまうような種類の状況を書き出してみましょう。
めったに口論はしませんが、重要な問題をまったく口にしないことで衝突を避けているカップルもいます。このような状況では、一方が常に折れるか、双方ともが生じた問題を無視することに熟達してしまっているのが普通です。このコミュニケーション回避のスタイルでは、結果的にパートナーの一方か両方が、憤慨したり、釈然としなかったり、大事にされていないあるいは重要でないと感じたりすることになる。あなたとパートナーの両方にとって重要な問題を認識して、適切な時期に要請や不満を表現するための助けとなるような、コミュニケーション・スキルを習得することが大切になります。
あなたの関係の中に回避問題が存在することを示すヒントとしては: (1) 関係の中に、衝突がまったくないと信じている、 (2) 味気ないお決まりの会話ばかりで、パートナーと心が通じていない気がする、 (3) 喧嘩になるだけなので、ある種のトピックスを避けている、 (4) パートナーに憤慨していて、相手のために尽くす気になれない、などが挙げられます。
パートナーに積極的に耳を傾けることは、重要です。積極的なリスニングとは、パートナーが伝えようとしていることを完全に理解しようとする努力を意味します。具体的には、パートナーが何を欲しているのか、どう感じているのかを理解することです。パートナーが伝えようとしていることを理解していると感じたら、それを要約して、あなたが正確に理解しているかどうかをパートナーに尋ねてみましょう。パートナーに、もっと詳しく説明してくれるように、例を挙げるように、あるいは違う方法で説明してくれるように頼むこともできます。また、パートナーの現在の気持ちについても尋ねましょう。
パートナーがどのように感じているのか、またどうしてそう感じているのかを、あなたは理解できる、ということを相手に知らせるのは重要です。つまり、パートナーの気持ちは、あなたにとって納得できるものだ、ということを伝えるのです。パートナーに同意する必要は必ずしもありません。しかし、相手の考え方は理解できる、ということを伝えましょう。これは、あなたがパートナーのことを大切に思っていて、パートナーがどう感じるかに大いに関心を持っている、というメッセージを伝える重要な方法です。あなたが腹を立てていて、パートナーの気持ちについてすぐに確認できない状態のときは、それができるようになるまで、冷静になる時間を置きましょう。
あなたが十分に耳を傾けていない場合、それは、良好なコミュニケーションを妨げるようなメッセージを送ることになります。十分でないリスニングはパートナーに次のようなメッセージを伝えます:(1) 私は、あなたの意見や気持ちに関心を持っていない; (2) あなたの気持ちなどはくだらないことだ; (3) それらの気持ちを持つのは愚かなことだ; (4) あなたの気持ちは、私が注意を払うに値しないものだ; (5) 私の意見や気持ちの方が、あなたのものより重要だ; (6) 私の意見や気持ちは、あなたのものより妥当である。
セルフ・サマライジング [自己要約] は、議論の最中に何度も何度も意見を再表示し続けることです。クロス・コンプレイニング [交差不満] は、パートナーの片方の不平に、その問題を解決しようと努力する代わりに、もう一方が不平によって応答する場合に生じます。マインド・リーディング [読心] は、片方のパートナーが、相手がどう感じているか、あるいはどうしたいのかをあたかも知っているかのようにふるまうことによって、問題が回避されているときに起こります。これは、相手のパートナーに、自分は重要ではない、議論から取り残されているという気持ちと憤慨を与えることになります。イエス・バット は、パートナーが相手に対して、一連の「うん。でも…」というセリフで応答することです。これは、あなたの、パートナーのニーズを変えたくもなければ、かといって実現したくもない、あるいはパートナーの考え方を理解したくない、というメッセージを伝えることになります。キャラクター・アサシネイション [人格暗殺] は、特定の問題行動あるいは領域での変化を求めるのではなく、パートナーの人格全体を攻撃するような要請や批評をすることです。コンプレイニング・ラット [不満のマンネリ化] は、変化や次善策を示すことをしないで絶え間なく不満をいうことと、プラスの行動変化には気づかないことを特徴とする、コミュニケーションのパターンです。
下記のリストは、覚醒剤使用者における認知機能障害を選別するために使われる、数々の検査である。初めのふたつは、通常、クライエント人口の文化に精通しているカウンセラーによって実施可能なものである。残りの6つの検査については、心理検査の専門家によって実施・解釈される必要がある。
これらの検査は、短時間で容易に実施でき、神経および認知心理学者によって開発された検査バッテリーの中で、広く用いられている。これらの検査は、特にいくつかが組み合わせて実施された場合、認知機能障害の存在を非常に敏感に浮き彫りにするものの、障害の性質や深さについては正確な情報を提供することはできない。検査で陽性の場合は、適切な協力者(例:神経心理学者)のより規模の大きいアセスメントを求めるべきである。
本検査は、18歳以上の成人における5つの領域の知的機能を査定するために設計されたものである。本検査の実施には、認知が損なわれていない個人の場合で約10分、認知障害が存在する個人の場合は、20分から30分を要する。コグニスタットは以下で入手可能である:
本検査は、精神障害あるいは神経疾患による精神症状を持つクライエントの認知機能状態を評価するために設計されたものである。本検査に必要とされる識字のレベルは最小限で、気分障害や覚醒剤使用障害の査定に適している。青少年、成人ともに約30分で施行できる検査である。e BNCE は以下で入手可能である:
本検査は、1秒にひとつの割合で数字を言っていき、クライエントにそれを逆に繰り返すように求めるだけである。たとえば、あなたが「3、8、6」と言う場合、期待される反応は「6、8、3」となる。検者は、3桁から始めて9桁まで上げていく。各レベルで3つの異なる数字列が提示される。クライエントがあるレベルで3つの数字列すべてに失敗した場合、検査は終了となる。本検査の実施には、約5分必要である。これは、ワーキングメモリ容量のを検査するものである。
クライエントは、F から始まる単語(固有名詞を除く)を1分間にできるだけ多く挙げるように求められる。同様に、Aから始まる単語、S から始まる単語について繰り返す。
本検査は、記号数字モダリティ検査と同じもの(すなわち、単純な情報を処理し注意を払う能力)と査定するものである。本検査は、改訂版ウエクスラー成人知能検査 revised Wechsler Adult Intelligence Scale (WAIS-R) の一部であり、以下で入手可能である:
本検査は、脳機能対する感度が非常に高い検査で、基本的には点と点を線で結ぶものである。実施には両パート合わせて約5分が必要となる。本検査の引用は以下から:
本検査には、多くのバージョンが存在する。本検査は、選択的注意と無関係な情報を無視する能力を査定する。コピーは、上記の検査会社のいずれからも入手可能である。
本検査は、最大20分で実施が可能な略式知能検査である。かなり古い検査ではあるが、現在でも、とりわけ老化に関する研究では広く用いらている。本検査の引用は以下から:
Sara L. Simon, Ph.D. によって開発されたRMTには、5つのバージョンがあり、各バージョン中の単語の頻度と長さは同じになっている。検査は非常に単純なため、複数回施行しても学習曲線に影響はないようである。各検査は25の単語から構成され、各単語は縦3インチ横5インチのカードに高さ4分の3で表示される。
クライエントには最初に、これから単語をいくつか見せられること、後からそれらを思い出すように求められること、を教示する。その後、単語カードを1枚につき1秒間ずつ被験者に提示する。クライエントがすべてのカードを見終わると、およそ10分間のインターバルを置く。この間被験者には、ディストラクター [気をそらすための] 課題に取り組んでもらう。この間、数字記号やトレイル・メイキングAおよびBなど、その他の検査を実施することも可能である。
その後、クライエントには再生検査が与えられ、思い出せる単語を書き出すように求められる。クライエントはテスト終了まで、好きなだけの時間をかけてよい。しかし、クライエントが2分以上反応しないでいる場合は、終了するように示唆する。単語のすべてを記憶している人は1人もいない。
次に、クライエントは再認検査を提示され、見せられた記憶がある単語に丸をつけるよう求められる。
嗜癖:
強迫的に薬物を求めることと強迫的な薬物使用、さらに脳内の神経的順応によって特徴付けられる慢性かつ再発性の疾患。
扁桃体:
辺縁系の一部にある脳内の独立した領域で、ドーパミン含有ニューロンが数多く存在する。報奨性の刺激(すなわち、動機付け、強化)への反応としての特定の行動パターンの学習と遂行において何らかの役割を担う。
類似体:
効果においては別の薬物と類似であるが、化学構造はわずかに異なる化合物。
アネルギー:
エネルギーの欠如。
快感消失症:
楽しい活動に対する興味の喪失;快楽を感じることができない状態。
拒食症:
体重減少とやせて衰えた容貌を伴う食欲不振状態。
不整脈:
不規則な心拍。
軸索:
ニューロンの細胞体から別のニューロンへと電気的インパルスを伝える細長い繊維。
ベンゾジアゼピン系薬:
不安を緩和する、あるいは鎮静剤として処方される薬物;もっとも広く処方される薬剤で、バリウムおよびリブリウムを含む。
徐脈:
心拍の低下。
歯ぎしり:
通常は睡眠中に、習慣的、無意識的に歯と歯をきしらせること。
悪液質:
体重減少、筋肉の消耗、衰弱。
中枢神経系 (CNS):
脳および脊髄。
小脳:
複雑な随意筋肉運動、姿勢、バランスなどの協調、調整を統御する脳構造。
Choreoathetoid:
不随意運動。
痙攣発作:
異常で抑制不可能なくらい激しい不随意性の筋肉収縮、あるいはその連続;顔面、胴体、四肢のひきつりあるいは一連の痙動。
渇望:
強力で、しばしば抑えがたい薬物への欲求。
樹状突起:
細く枝分かれしたニューロンの延長で、隣接するニューロンから情報を受け取るために細胞から枝分かれしたつる [巻きひげ] を伸ばす;これらは細胞体に向かって内向きに電気インパルスを伝達する。
皮膚炎:
皮膚の炎症。
デザイナードラッグ(合成麻薬):
精神活性特性を持つ規制薬物の合成類似体。
解毒:
退薬症状を管理する一方で、身体が自ら薬物を取り除くことを可能にする過程;薬物治療プログラムの第一段階であることが多い。
発汗:
おびただしい汗をかくことで、悪寒を伴うことが多い。
最低血圧(拡張期血圧):
心臓の空洞が血液で一杯になっているときに、血液によって加えられる圧力。
ドーパミン:
いくつかの脳領域に存在する神経伝達物質で、運動、情動、動機付け、強化、快楽に関与している。
ドーパミン作動性:
ドーパミンに仲介される、の意。
情動不安:
全般的な不満、落ち着きのなさ、不安などの気分。
グルコース利用:
生理的活動の一般的な指標;脳内では、情報処理と推定される神経的活動の指標となる。
高血圧:
血圧の上昇。
高熱:
体温の上昇。
辺縁系:
特に情動と動機付けに関係付けられている、皮質下脳構造群。
ナルコレプシー:
抑えられない深い眠りの発作に特徴づけられる障害。
ニューロン:
神経系の形態的、機能的単位で、細胞体、樹状突起、軸索から成り立つ。
神経伝達物質:
ニューロン間の信号を伝達する化学物質で、ニューロンの活動を調節する。
側坐核:
辺縁系の一部にある脳内の独立した領域で、ドーパミン含有ニューロンが多く存在する。報奨性の刺激(すなわち、動機付け、強化)への反応としての特定の行動パターンの学習と遂行において何らかの役割を担う。
パラノイア:
体系妄想の存在が特徴的だが、それ以外の人格は損なわれていない精神障害。体系妄想、被害的性質を持つことが多く、追いかけられている、毒をもサービングられる、その他の方法で危害を加えられる、という内容が関連する。
身体的依存:
習慣的な薬物使用と共に起こる、あるいは薬物使用が中止された際の退薬症候群の結果として起こる生理的順応状態。
精神病:
妄想あるいは幻覚など現実概念の障害を示唆する症状を特徴とする精神的、行動的障害。
心理社会的介入:
個人の生活における心理的および社会的両方の領域(例:年齢、学歴、夫婦関係、あるいは個人の生活史中の関連領域)を考察する個人あるいはグループでの介入。
横紋筋融解:
筋肉の痛み・脱力、赤茶色の尿産出を特徴とする、急性で命の危険性も含む骨格筋疾患。
ラッシュ:
薬物投与の直後に得られる、急激に高まる陶酔的快感。
発作:
異常な精神状態、身体状態の突然開始の症状で、複雑な行動、意識障害、痙攣などの特徴を示すことが多い。
セラトニン:
意識状態、気分、抑うつ、不安と関連付けられている神経伝達物質。
セラトニン作動性の:
セラトニンに仲介される、の意。
常同行動:
同一の姿勢、意味のない身振りや運動、話し方(統合失調症のように)の頻繁で、ほとんど機械的な反復。
黒質:
黒質線条体系の一部の独立した脳領域で、辺縁系と相互作用を持ち、ドーパミン含有細胞が数多く存在する。随意指令に誘発される複雑な運動の自動的遂行を学習することに関連している;この領域の変性障害は、パーキンソン病に見られる運動障害の原因となる。
シナプス:
ニューロン間の微視的な隙間、裂け目、あるいは接合部で、ここを越えて化学的信号(神経伝達物質)が伝達される。
最大血圧(収縮期血圧):
心臓の空洞が収縮したときに、血液によって加えられる圧力。
頻脈:
不整脈と胸痛を伴う、あるいは伴わない急速な心拍。
耐性:
初期に経験したのと同様の効果を生むために、より高用量の薬物を必要とする状態;身体的依存につながることが多い。
毒性:
細胞、臓器、あるいは臓器系の機能や構造にとって有害な、一時的あるいは恒久的な薬物の影響。
蕁麻疹:
痒みを伴う膨疹で、通常は全身性。食品、薬物、熱や寒さなどの物理的変化に対する過敏状態が原因となることもある。
腹側被蓋野
中間皮質系の一部である独立した脳領域で、辺縁系との相互作用を持ち、ドーパミン含有ニューロンが数多く存在する。注意持続時間と短期記憶に関連する。
退薬:
馴化した個人が薬物使用を突然中止することによって引き起こされる、心理的および/あるいは生理的症候群。