原井宏明の情報公開
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Q&A4: パニック発作と抑うつを呈する18歳の症例に関する質問

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心理士からのメール 1

時間があるときに以下の相談にのっていただけませんか。
記述が具体的なところがあるかもしれませんが、秘密厳守でお願いいたします。(一部改変※)

  • ケース;18歳女性
  • 主訴;
    高温期になると体が重く(下に引っ張られるようで)だるくて、体を起こせなくなる(一ヶ月のうち5日ほど。基礎体温はつけている)。このとき、動悸、過呼吸をおこしやすい。
    生理の2日ほど前から生理4日目くらいまで、激しい生理痛におそわれ、やはり体を起こせなくなる。食欲もなくなる。このときも動悸、過呼吸をおこしやすい。それらを毎日恐れ、不安を強く感じている。今ではほとんど閉じこもった生活。
  • 現病歴;
     
    X-2年、16歳の冬に、生理痛がひどく生理の量も多くなったことから婦人科受診(元々生理痛がひどい方だった)。そのときにもらった鎮痛剤が体にあわなく吐き気がとまらなくなった。
      同じ頃、同居している母方祖母の具合が悪くなり緊急入院した際、Pt.の母は「自律神経失調症」で体調が悪く、Pt.の父も当てにならず、一人っ子のPt.が、吐き気をおさえながら祖母の入院について対応したが、このとき急に不安におそわれ激しい動悸を経験した。その後も生理前になるとだるくて体を起こせなくなり、また、生理痛に対する不安から動悸、過呼吸をおこすようになった。そういう状態を数ヶ月繰り返すうちにPt.の不安は強まり、体を起こせない日も増えていった。
      17歳時、内科に半年入院。身体的な異常所見なし。入院中、父親のぞんざいな態度を見るに見かねた看護婦が、父親に対して「この病気は父親のあなたの態度も影響している」と数回指摘。それを機に、「妻に暴力をふるう」「興奮すると物を壊す」などしていた父親の態度が大分変わった。しかしPt.の病状はまったく回復しないままに退院。
      18歳時、雑誌の「心身症」の切り抜きをもって当院初診。「私はこれじゃないかと思った」と。
  • 家族歴および生育歴:
    省略。ただし物心ついた時から父の暴力(Pt.には決してふるわない)を恐れ、食事ものどを通らないことがあった。社会生活での適応はよく友達も多い。「友達が私の支え」。ただし、人がよく、美人で考え方がしっかりしているため、いろいろなことをよく頼まれ断れなくなる。学生時代の成績は中の下ほど。
  • 治療経過:
    医者より「生理に対する不安感や復職へのあせりが体に影響していると考えられる」と説明。抗不安薬(リーゼだったと思う)と本人の希望により「体力をつけるための漢方薬」が処方された。また「毎日の基礎体温に加え、感情を記録してもらうこと」と「高温期で体が辛くても1日5分は体を起こすようにして」ということを宿題とした(課題設定やカウンセリングをCPが担当)。それができた日については十分に賞賛(Pt.は「体を起こせる」、「外出できる」などに関して過度に意識している。それが出来た日は不安は少ない)。
     初診後1ヶ月:不安や疲労感を記録する日はあるものの(高温期や生理期に限らず)、体を起こせる日が続くようになり、外出も週に数回できるようになった。
     初診後4ヶ月:家族に対する愚痴を言うようになってきた。「家族関係が私の病気に影響しているのかも。私の存在でなんとか家族が絆を保っているという感じ」。体の調子及び不安感は3ヶ月前とあまりかわらず。ただ、「体が辛い日も1日5分は体を起こす」は完全にできるようになったので、体を起こす時間、頻度を段階的にアップ。
     初診後5ヶ月:家でほとんど毎日体を起こして動作すること(簡単な家事の手伝いなど)ができ、また外出できる日が増えてきたため、デイケアに通うことを進める。
     初診後6ヶ月:デイケア参加(とりあえず週に2回の予定)。「思ったより楽しかった」。しかし初日のみ参加し、次の日から風邪をひき(?)ダウン。微熱、下痢、鼻水が5日ほど続いた。その後もだるさがとれず、再び強い不安が再燃。「私の本当の病気は何なんだろう。どうして治らないだろう。どうして体力がつかないんだろう。」それに対し、抗不安薬と抗うつ剤の投与。また、不安を書き出してもらいそれを一つずつ一緒に客観的に吟味していったが不安は一向に軽減されず。強い不安感に加え、数日のうちに過呼吸、食欲不振、不眠で歩けない状態に一気に陥り入院。
  • 考察:
      私の予想 1. デイケア参加が早すぎた。体を起こしたり外出が増えたりと、行動面ではだいぶ改善が見られたと思っていたが、生理に対する不安や復学へのあせりなど、認知面はほとんど変化していなかった。
    私の予想 2. 寝込んだときに、両親から注目が集まることや両親の結束が少し堅くなることが強化子としてはたらいた。
回答

可能性のある診断だけ書き出すと,

#1Premenstrual dysphoric disorder いわゆる月経前緊張症
  但し下記の障害が月経前に悪化するだけの場合は付けないお約束 また正式には採用されていません。

#2大うつ病エピソード

#3広場恐怖を伴うパニック障害
  この二つは合併診断OK。実際よく合併します。細かいところはDSMIVをご覧ください。ハミルトンうつ病尺度,mobility inventory,fear survey scheduleなどを付けてみることをお勧めします。いくつか参考になりそうなスケールを添付します。

> Pt.の母は「自律神経失調症」で体調が悪く
自律神経失調症は多分うつ病と考えていいでしょう。家族負因があることになります。

> 医者より「生理に対する不安感や復職へのあせりが体に影響していると考えられる」と説明。抗
> 不安薬(リーゼだったと思う)と本人の希望により「体力をつけるための漢方薬」が処方された。

リーゼ,漢方とも#1,#2には効きません。治らないまま慢性に経過して,未来への希望を失ってきたら,

> 初診後4ヶ月:家族に対する愚痴を言うようになってきた。「家族関係が私の病気に影響してい
> るのかも。私の存在でなんとか家族が絆を保っているという感じ」。その後もだるさがとれず、
> 再び強い不安が再燃。「私の本当の病気は何なんだろう。どうして治らないだろう。どうして体力
> がつかないんだろう。」

になりますね。希死念慮が心配です。家族のことがあるから死ねないと思っているとは思いますが。

> 抗不安薬と抗うつ剤の投与。また、不安を書き出してもらいそれを一つずつ一緒に客観的に吟
> 味していったが不安は一向に軽減されず。強い不安感に加え、数日のうちに過呼吸、食欲不
> 振、不眠で歩けない状態に一気に陥り入院。

  パニック発作と抑うつ気分がよくならないままの状態で広場恐怖をエクスポージャーやセルフモニタリングで治療するのは苦痛だし,効果を維持することができません。パニック発作が認知される前の時代の行動療法家にとって広場恐怖は治療しにくい,途中で恐怖・不安症状が勝手に上がったり,下がったりする病気でした。
  パニック発作は繰り返すと,次第に身体不調ぐらいの感じになり,あまり劇的要素がなくなります。症状限定性になりますが,それでも発作が繰り返すと広場恐怖がひどくなります。
  パニック発作に対しては効果のある抗不安薬が限られています。(ワイパックス,ソラナックス,コンスタン)しかも,かなりの量が要ります。三環系抗うつ薬を私は使いますが,量を十分使う必要があります。トフラニールなら150mgは最低です。
 私が担当医ならば,本人の身体不調をモニタリングさせてそれをターゲットにして患者教育(パニック発作が軽いと患者は風邪などの症状,疲れなどとして見過ごされやすいので,自分の体調の変化をしる訓練がいる)をして,上記の薬物を使います。

それから,広場恐怖の治療でしょうね。月経前緊張症は決め手になる治療法がありません。

心理士からのメール 2

先生に、この前ご相談した、生理前緊張症、パニック、うつ等疑いの患者さんのことで質問です。
身体化障害の疑いはないと思われますか?

回答

 今の私の考え,主張は,常識や認知療法で考えるような抑うつ気分に対する対処の仕方はうつ病の1年後の転帰に影響を与えていない,ということです。いろいろ解析のし方を変えても,あまりはっきりしたデータを出せませんでした。よく,気持ちが落ち込んだら,あれしなさい,これしなさい,とか趣味があったらな,とか言いますね。それが正しいという根拠がない(もちろん,悪いわけでもない)という主張です。
 合理的認知,正しい認知をしたらうつ病がよくなるという根拠はまだないぞ,ということです。
 抄録を書いた後,いくつかレビューを読んでみて,どうやら,抑うつ気分に対する対処の仕方でうつ病の転帰が違うだろうと言う仮説は,誰がやってもすっきりした結果がでてないことが,私にもわかって来ました。
 ただ,上記の主張には注意が必要です。治療法の研究でよくプラセボと実薬の比較試験,リラクセーション(プラセボ心理療法)と認知行動療法の比較試験というのがあります。こうしたところでのプラセボやリラクセーションは治療なしとは違います。たとえプラセボでも例え内容のない声かけや心理療法でも,何も相手しない,何も治療しないよりはよく効きます。病気が治ったかどうか,ではなくて最後の結果は同じでも病気の最中がラクだったか孤独だったかには,例え根拠の乏しい治療法でも有用だろうという仮説をもっています。

DSMIV,特に診断基準以外の経過のところを読むとあまり合わないと思います。身体化障害は軽快するなどの波がないこと,身体的訴えが強く内科受診を繰り返すことが診断の特徴であること,があります。最初から心理的な要因を考える患者は身体化障害らしくない。
ところでMINI-D(B6版の小さい本)ではなく,大きいほう(A4 こちらが本物)をお持ちでしょうか。
大きいほうをきちんと読んでそれぞれの項目・病歴・家族歴が当てはまるかどうか,を調べるのはよい訓練になります。

心理士からのメール 3

当院受診の前に、1年半ほど、婦人科、内科、漢方の先生(?)をまわったようです。
内科に入院したときに(極度の生理痛、食思不振、動悸などを訴えて)、看護婦さんに、「あなたの病気は、家庭、特に父親に大きく影響をうけていると思う」と言われて、心因を考えたようです。

> ところでMINI-D(B6版の小さい本)ではなく,大きいほう(A4 こちらが本物)をお持ちでしょうか。
> 大きいほうをきちんと読んでそれぞれの項目・病歴・家族歴が当てはまるかどうか,を調べるの
> はよい訓練になります。

小さい方しかもっていないので、大きい方も読んでみます。
先生からは色々なことを教えていただいて本当に楽しいです。

ところで、医者や看護婦が、動悸、食思不振、嘔気、喉の固まりについて、いくら「心配ないものだ」と、その理由もあわせて説明しても、「私、死にませんよね」と何度も何度も確認してきます。そして、「私の体は色々な心配事があるから調子が悪いんじゃないと思う」と、言うのです。
先日は、「頭と体の右半分が、ひどくしびれている。話すこともできない」と筆談で訴え、夜中に「死にたくない。早く医者を呼んできて!」と泣きじゃくりました。CTでは異常所見はありません。

という姿を見るうちに、いわゆる転換ヒステリーのようなものかな、となんとなく思いました。
もう少し、勉強してから、また質問させてください。

回答

この当りは身体化障害らしいですね。身体化障害について英語論文を調べてみましょう。
治療に付いては抗うつ薬,SSRIだろうな,と想像します。

> いわゆる転換ヒステリーのようなものかな、となんとなく思いました。
二次的に疾病利得が起こっているのでしょう。

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