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Q&A3: 人前で食事が出来ず外出できない症例に関する質問

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心理士からのメール

お忙しいところ本当に申し訳ないのですが、質問をさせてください。

患者さんは20歳くらいの女の子。
主訴は、「小学校の時から人前に出ると食事ができない、数ヶ月前に地下鉄のホームでめまいをおこしてから一人で外出もできない」
小、中学校ともに不登校ぎみ。
高校入学後一度中退し、現在は通信制の高校2留目。
生活は小学校時から不規則で、昼夜逆転。
友人は中学の時の友達が一人。職歴なし。

父は仕事がら家にほとんど帰ってこない。
また患者の母を「召使いのように使う(患者さんより)」。
患者の母は父の言うことをだまって聞いている。
患者の兄は高校入学と同時に家出し音信不通。

患者は「どの医者も私のことをわかってくれない。
私の病気を気の持ちようだ、まず生活のリズムをきちんとしなさい、ということを言う。
今すごく苦しいのに全然薬の量を多くしてくれない」と主張する。

患者の母も医者にむかって「気の持ちようなのはこの子も十分わかってます。
でも、実際に体が苦しいのだからこの子にあう薬をなんとか、もっと出して下さい。
生活のリズムと言うけれどこの子は小学校の時からこれでやってきたんです」と言う。

患者の父は病院にまったく登場しない。

当院の医者の見立てでは、

  • 母子分離できていない。
      母子ともに"変化の準備"が整っていない。(原井先生だったらどう見ますか?)。
  • 母子ともに生活改善などのモチベーションに欠けるためとりあえずは受容的に聞いて、
      患者の訴え通りに対症療法的に薬を出すしかない(原井先生だったら・・?)。」

私は現在、とりあえず患者の話を受容的に聞くということから始め、
なんとか生活改善のモチベーションを高める方法を探っているところです。
患者の母については、医者が受容的に接しているところです。

回答

> 原井先生だったらどうですか。

この医者の問題点
こういう医者はよくいますね。DSMIVに従った診断ができず,患者の主訴と無関係に耳学問で聞いたコメントを適当につけて患者や家族を傷つける。

#1 本人・家族の主訴を取り上げていない
  これは不親切というものです。どう治療して良いのか分からないから患者さんにこれ以上来ないでくれ,というのが医者の本音なのかな。

#2 診断
  めまいをおこしてから一人で外出もできない
  人前に出ると食事ができない
  不登校

主訴を詳細にとることが行われていないので想像ですが,上記の主訴だけから判断すると,1)広場恐怖を伴うパニック障害 2)社会恐怖 3)大うつ病エピソード 4)精神遅滞などの発達障害の順番で考えます。母子分離ができていない,などは上記のいずれであっても二次的におこります。
この中で治療が容易なのは,三環系抗うつ薬による薬物療法で速い段階で寛解に持ちこめる1)と3)です。患者の薬に対するコンプライアンスはよさそうですから,十分な患者・家族教育を行い,副作用,服薬行動についての細かなモニタリングを行い,早めに量を増やして(子供の方が代謝が早いので大人より量が必要),めまい,抑うつ気分の寛解を図ります。

広場恐怖の治療はこの次になります。in vivo exposureを行うことになります。
治療しやすい,症状,診断から優先して診断し,治療に掛かることが現実的利益を生みます。精神遅滞の診断もあるかもしれませんが,これは正確な診断をつけるのはずっと後で良いでしょう。

いずれにしても速攻でなおるわけではないので,最初は話を主訴に従ってよく聞き,診断・経過・見通しを説明し,治療についての協力を取り付け,患者が協力できるように家族のほかのメンバーの協力を取り付け,面接の周期や電話によるサポートを組み立てていくことになります。

もし,どこかでスーパーバイズを受けたい,勉強したいというならば,良い指導者(私自身が目指していますが)がいるだけでなく,同じ立場の仲間がいる(これは現在の私には用意できません)ことが不可欠です。仲間がいてこそ,コーピングモデルの対象があり,スーパーバイザーまで問題を持って行くまでの相談ができます。

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