30歳主婦 吐き気恐怖

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原全般性不安障害やパニック障害の患者さんに対して,集中的なエクスポージャーを行うようにしています。そうした患者さんにとって,治療の励みになるのは,医師のアドバイスよりも,先輩の患者さんの記録です。多くの患者さんにそうした記録をよせていただき,また公開の許可をいただきました。ここに感謝とともに掲載させていただきます。

具体的な治療メニューについては後日治療ガイドなどの形でまとめる計画です。

私は30歳の主婦です。
1998年に結婚し、現在8歳の長男、4歳の次男、3歳の長女の母親です。

2004年5月

私が「体調が何かおかしい」と気づいたのは長女を出産して3ヶ月ほど経ったころでした。
家族で車に乗って出かけ、高速道路の出口で渋滞にはまりました。そのとたん今までになったことのないような感覚に襲われました。頭の血の気がサーッとひくような感じがし、ソワソワして落ち着かず、その場にじっとしていられない、「とにかく車から出たい、何これ?車酔い?貧血?」と訳がわからないまま何とも説明できず、主人に「とにかく気分が悪い!料金所まで歩くから!」と言い、車から降りました。
「たぶん車酔いかなぁ?」と思い私が運転することになりましたが、集中できず、その日はなんとか気を紛らわせながら帰りました。

その後数日経った夜、長女にミルクをあげていると、またあのイヤな感覚に襲われました。
ソワソワしだし、その場にじっとしていられなくなりました。
「何これ?私は長女が嫌いなの?長女に対する拒否反応?ストレス?」いろいろなことを考えると涙が出てきて眠れませんでした。
それまでの私は「私は主婦で母親なのだから、家事と子育ては私がするのが当たり前!」
「子供3人に平等にしてあげなくては!次男も長女も3歳までは私が見てあげなくては!自分のしたいことは我慢しなくては!」と一日中バタバタし、気が付くと自分の食事も忘れているような時間にも心にも余裕のない生活をしていました。

それから私の体調は悪くなり、どんどん他の症状が出てきました。
食欲が無くなり、「少しでもいいから食べないと」と食べるとムカムカと吐き気がするようになりました。家から出るのもイヤになり、イライラが止まらず、話をするだけで涙が出て、自分ではどうしていいかわかりませんでした。子供にもイライラし「自分はいつか虐待しだすのではないか?」と考えるようになり、どうやって子供を育てていいかわからなくなりました。

2004年6月

長男が通っている保育園の園長先生に相談し、次男も保育園に預けることにしました。
保健センターの保健婦さんに相談し、7月に心療内科を受診しました。
「産後うつ」という診断で数ヶ月程で良くなると聞き少しは安心しましたが、それからは
「なんで私はこうなったのだろう?私の子育ては間違っていたのか?2歳になったばかりの次男も見てあげられないなんて私は母親失格だ!私は欲しくて産んだ子供がストレスになっていたのか?私は我が子が好きじゃないのか?そのうち頭がおかしくなって虐待をしだすのか?自殺願望もでてくるのか?」と不安でどうする事も出来ない毎日を泣きながら過ごしました。
薬とカウンセリングを続け、半年程で少しずつうつの症状は楽になっていきましたが、「渋滞が怖い、遠出が出来ない、美容室に行けない、外食が出来ない、他人が運転する乗り物に乗れない、ムカムカして吐きそう」などの症状は続いていました。
それはすべて「すぐに逃げ出せない、帰りたいと言うとみんなに迷惑がかかる」という考えからでした。

2005年4月

長女も保育園に預けることにし、やっと元の生活に戻れるのではと思っていると、またうつを再発。
この時からムカムカすることがひどくなり、他の人がいる前で何かを食べることが怖くなり出来なくなりました。外食も友人宅や実家でも食べることができず、飲み物を飲み込むことも出来なくなりました。
「人前で吐いたらどうしよう、みんなに迷惑がかかる、はずかしい」と考えてしまうのです。それは主人に対しても同じで「途中で気分が悪いから帰りたい」と言うと迷惑がかかるし嫌な思いをさせると思うと一緒に出かける事も出来なくなりました。
子供の授業参観も病院の待合室もじっとしていられなくなり途中で部屋を出たりしていました。これも全部うつの症状だと思い「頑張らないようにしなくては!ゆっくり休まなくては!」と頑張らないように頑張っていました。

2006年3月

うつの症状はほとんど無くなったのに、相変わらずすぐに逃げ出せない場所や人の集まりに行けない、自宅以外や他人がいるところでの飲食ができないなどの症状は残っていて、先生から主治医を紹介してもらい受診しました。
このとき初めて自分がパニック障害だということを知りました。
数回目からグループ治療が始まり、私と同じような症状の人、私よりももっと症状が重い人がいて「私だけじゃないんだ。」と思い「ここにくれば治してもらえるんだ。」と思いました。

2006年6月

まずは「なにかあったらどうしよう」→「心配なら行かないほうがいい」と考える心配のしくみを考え直しました。「逃げ出せない所なんてどこにもない!」「行きたいならいけばいいじゃない!」と考えるようにしました。
同じグループ治療をしている女性とランチに行く練習や遠出をする練習、バスや電車に乗る練習をしました。同じ病気という安心感もありパニックの症状はほとんど出ませんでした。
どうしても観たい映画があり友人と行きました。何も考えず真ん中の席に座ると、最初の30分は「帰りたい!ここから出たい!」と手に汗をかき、ソワソワして集中できず、最初のほうの内容はあまり覚えていませんが、そのイヤな感じもだんだんと消えていき最後まで観ることができました。
次に一人で映画に行ったときは何の不安もなく普通に観ることができました。
渋滞も何度も経験していくうちに、何も考えず行けるようになっていきました。

自分で実際にやってみるエクスポージャーを続けていくと、
「渋滞にはまってもそこからずっと動けないわけじゃないし、外食もみんなで楽しく食べて吐きたくなればトイレに行けばいい。授業参観も病院の待合室も気分が悪ければいつでも外に出ればいい。」と楽に考えられるようになっていき、普通に行けるようになりました。
美容室も不安はありますが行けるようになりました。

2006年9月

他人や家族と車で出かけるときのソワソワやドキドキやムカムカ、手に汗をかき集中出来なくなる感じはどうしてもイヤで、「大丈夫かな?吐いたらどうしよう?帰りたくなったらどうしよう?」と考えてしまいます。実際に出かけても、
「帰ろうって言おうかな?」→「行きたいからいくんでしょ?」→「でもこのイヤな感じはいやだ!」→「行けるようになりたいんでしょ?」といろいろな考えが頭の中に出てきました。
「でもなるようにしかならないし、どうしようもないか。」と思うようにし、何度か出かけていると、体のイヤな感じや逃げ出したい感じは数分で消えていくことがわかりました。
最近家族で遠出したときも不安や逃げ出したい感じはありましたが、
「しばらくはイヤだけど我慢してればそのうち消えるか!」と思うとすぐに消えていきました。
以前は「なった時はなった時って考えなくては!」「何も考えないようにしなくては!」と
「〜しなくては!」と思っていたのが、症状が出てもそのままにしていると自然に消えていくことを何度か体験してから「なったから何?だからどうしたの?」と発作や症状が出てもほっとけば消えるという意味がやっと理解できるようになりました。

2007年1月

去年は発作が嫌で行けなかった初売りも、渋滞や行列に並んで行くことが出来ました。
去年は途中でムカムカしだして行けなかった初詣も家族揃って行くことが出来ました。
実家でもムカムカを気にせず、ご馳走を食べたいだけ食べる事が出来ました。
「一年ですごくよくなった。もう治ったみたい」と喜んでいました。
ところがその後、親戚を車に乗せて買い物に行くときに発作が出たのです。
なんとか気を紛らわしながら目的地には行けましたが、
「なんで(発作)出るの?克服したじゃない?まだ完治じゃないんだ。」と落ち込みました。
その後、子供を病院へ連れて行ったときも待合室と診察室で発作が起きました。
「今まで何度も連れてきて、何ヶ月も発作は起きなかった場所なのになんでまた起きるの?私の体調が悪いから?薬を数日飲み忘れたから?」と原因を探しました。また昔の自分に戻ったような気がして、根本にある自分の性格や考え方や体調のせいだ!と思い、それを直さなければパニックもうつも完治しないのでは?と悩む日々に戻ってしまいました。

「なにが原因なのか?どこがいけなかったのか?」と原因を突き止めなくてはと思い、
同じグループ治療をしている男性が書いた感想文を読んでみたり、主治医からもらった資料を読んだりして、一番大切なことを忘れかけていたことに気が付いたのです。

  • 目的本位・・・何がしたいのか?何をしに行くのか?
  • 自分のしたい事をする。発作や体の感覚は問題ではない。
  • 悩みのない人間なんていない。痛みのない人間なんていない。

日々の生活の中で、いかに楽しい事に目を向け、したい事を積極的に出来る人間になれるか?ポジティブになれるか?いろいろな選択肢を考えられる人間になれるか?
私がパニックを治し、楽しい人生を送る「鍵」はそこにあると思いました。

2007年2月

私はうつになってからずっと自分に自信が持てず、自分の性格が嫌でした。すべてがこの性格のせいだと思っていました。でも、今は違います。少しだけ自分の良いところに目を向けられるようになりました。何でも頭の中だけで考えず、まずは興味のあることに挑戦してみること。今やっとそれに向けての一歩が踏み出せました。
パニックに関してはまだ不安なこともありますが、「避けない生活」を心がけています。

主人は私の病気にあまり理解がなく、たくさん言い争いにもなり、イライラさせ、イヤな思いや我慢もたくさんさせてしまったけど、病人扱いせず前と変わらず接してくれたことを今では感謝しています。

主治医の治療を受けることができ、そして、グループ治療で同じパニック障害で悩んでいる方々に出会えて本当によかったと思っています。
ありがとうございました。

Revised: 2007/03/20
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