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強迫性障害の診断のトピック

  1. 強迫性障害の治療
  2. 専門家の皆様へ
  3. 強迫性障害の診断のトピック

歴史

歴史的な文献に古くから記載されている。宗教的な説明から19世紀末には医学的な説明になり,20世紀にはPierre JanetやSigmund Freudによる心理学的な説明が主流になった。1950年代から行動療法が適用されるようになり,治療では成果を上げたが,病因については十分な説明は出来なかった。

現代の関心事

ここ数年は生物学的な研究が加速されている。PETなどの脳イメージングや遺伝,セロトニン系ニューロンについての研究が進んでいる。

最近では強迫性障害の生物学的モデルの成功をきっかけに強迫性障害の概念を広げる動きが活発である。Obsessive-Compulsive spectrum disorderとして,身体表現性障害(例:身体醜形障害,心気症)や,解離性障害(例:離人症性障害),摂食障害(例:神経性無食欲症,神経性大食症),衝動制御の障害(例:抜毛症,病的賭博,病的買い物,性的衝動強迫),神経疾患(例:トゥレット障害,シデナム舞踏病,パーキンソン病,てんかん,自閉性障害)などが強迫性障害の類縁であると考えられるようになった。

  • 思考や行為の反復が類似していること,
  • 発症年齢や経過,家族歴,合併することが多いことなどが類似していること,
  • セロトニン動作性ニューロンや前頭葉機能の活動が類似していること,
  • Serotonin Reuptake Inihibitorや行動療法に対する治療反応性が類似していること,

などがその根拠になっている。

診断について

強迫性障害は従来,恐怖症と区別されていなかった。DSMでは不安障害として分類されているが,実際の診断基準では不安の存在は必須項目ではない。自発的な観念や行為の反復を制御できないことが強迫性障害の主体である。

強迫性障害の診断には,恐怖症で見られるような自律神経症状を伴う不安症状はなくてもよいこと,ICD10では独立させていること,Obsessive-compulsive spectrum disorderのような研究の動向から考えると,今後は強迫性障害の位置づけが変わると思われる。

強迫性障害は汚染・疑いなどの強迫観念や,洗浄・確認などの強迫行為の種類によって分類することが容易である。一次性強迫性緩慢(Primary obsessional slowness)のようなまれだが比較的まとまった一群と考えられる状態もある。

また,治療反応性予測因子もいくつかわかっている,薬物療法の場合は1)発症年齢が高いほど良い,2)A群人格障害(分裂病型人格障害など)がある場合に不良であるとされている。治療予後を不良にする因子のない,定型的な不潔恐怖+手洗い強迫の患者の場合はE&RPのみで治療できる。行動療法では,1)分裂病型人格障害,2)優格観念(over valued ideation),3)重篤な抑うつまたは躁,4)コンプライアンスの不良,5)家族の重篤な問題,があるときに治療予後が不良であることがわかっている。確認強迫は洗浄強迫より,治療に工夫を要し,改善が起こるまでに時間がかかる。ICD10では,F42.0強迫思考あるいは反復思考を主とするもの,F42.1強迫行為を主とするもの,F42.2強迫思考及び強迫行為が混合するもの,に下位分類が可能であり,下位分類が治療方法の適応を関連しているとしている。一方,DSMIVは症状で分類することに慎重である。

FoaらによるDSMIVのフィールドトライアルは,1)91%の患者がICD10でいう強迫思考および強迫行為が混合するものであり,ICD10の下位分類は意味が乏しい,2)5%の患者が強迫症状の不合理性に気がついていない,3)80%の患者が表には現れない心の中の行為としての強迫行為(mental compulsion)を表に現れる強迫行為と一緒に示す,を報告している。彼女の報告に従い,DSMIVでは強迫行為に外からは観察しにくい心の中の行為(祈ること,声を出さずに言葉を繰り返すこと)が含まれることが明示されている。精神分裂病などに誤診されることを防ぐ目的で,洞察に乏しいものというspecifierが設けられた。

臨床で診断をつける際にしばしば見られる誤り

診断基準を用いた場合のここで取り上げた精神障害の診断一致率は比較的高い(Regierら1994;Sartoriusら1993)。精神科を受診するような例は精神障害と生活の障害があると診断して差し支えないと考えられ,診断閾値もあまり問題にならないと考えられる。問題になるとすれば除外診断である。臨床の仕事の中でよく見かける誤りをあげる。

  • 共存する気分障害を診断しない,または気分障害を優先して他の不安障害を見落とす
    DSMIIIからIIIRへの変化の中で大きなものの一つが,階層性が無くなったことである。診断基準そのものには大きな変化が無いためか見逃されやすい。
  • 強迫性障害の場合に,強迫性人格障害があると診断する
    名称が似ているために,しばしば見かける誤りである。DSMIIIによる構造化面接を用いた研究では強迫性障害で強迫性人格障害を合併するものは6%と報告されている。
  • 重い強迫性障害を分裂病と診断する
    適切な治療を受けなければ強迫性障害は難治性である。幻覚や妄想がなくても生活の障害が著しくて自宅に引きこもった状態であったり,強迫観念が強い場合に分裂病と診断されていることをよく見かける。
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Last updated: 01/20/2008 08:03:21
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