原井宏明の情報公開
原井のブログ〜やさしい精神科医療の選び方〜 OCDの会(自助グループ)
  • 各地のOCDの会
  • 行動療法ML
  • メーリングリストの案内
    • 医療・心理療法サービス提供者を対象にした,行動療法や動機づけ面接に関するクローズドの登録制メーリングリストを開設しました。参加希望の方は原井まで略歴をメール(haraih アットマーク gmail.com)でご連絡ください。

強迫性障害(強迫神経症)とは

  1. 強迫性障害の治療
  2. 強迫性障害(強迫神経症)とは
  1. どんなものがあるか | 精神分裂病と同じか | なぜ | だれがなるか | どうなるか | 治療の方法

強迫性障害(Obsessive Compulsive Disorder=OCD)は、強迫神経症とも呼ばれます。この病気の特徴は「強迫観念」と「強迫行為・儀式行為」です。強迫観念とは、自分でもばかばかしい、理屈に合わないと感じるようなある考え・イメージ・衝動が、押えつけようとしても繰り返しわき起こってくるもの。強迫行為とは、たとえば手を洗ったり、物事を確かめたりする特定の行為を繰り返し行うものです。

強迫観念・強迫行為のために一日合計一時間以上の時間を浪費したり、これらが起こるような場面を避けるために家に閉じこもったり、物に触れなくなったりするなどして、生活が困難になります。

どんなものがあるか

強迫観念の内容,強迫行為の種類にはさまざまなものがあります。

もっともポピュラーなのは、排泄物の汚れが広がっていくように考えて長時間手を洗う「不潔恐怖+洗浄強迫」と、スイッチを切ったかどうか、鍵を掛けたかどうかなどが気になり、くりかえし確かめる「確認強迫」です。何もしなければ洗ったり確かめたりする必要もないので、閉じこもりきりになったり、トイレ・入浴・着替えもせず寝たきりになることもあります。

縁起恐怖」は文字通り縁起をかつぐ考え方や行為にとらわれるもので、たとえば神社やお寺などに右側から入ればいいが左側から入ると非常に悪いことが起こるという考えが押さえられずに、間違えると入り直したりします。「不完全恐怖」は、たとえば手紙を投函した後で郵便番号が違っていたのでは、何かを書き落としたのではと気になるあまり、郵便局に問い合わせずにはいられなくなったりします。「収集癖」の場合は、新聞やビラやカタログなど収集したものが古くなって捨てようとしても、ひょっとして捨てた後で必要になるのではと気になってしかたなく、捨てられずに部屋が一杯になってしまったりします。

強迫性緩慢」というものもあります。服装が合っているか、持ち物が適切かどうかなどがいくら確かめても気がかりで、場合によっては出かける約束をしてから実際に外出できるまでに数日かかってしまったりします。周囲からは行動が非常に緩慢で時間がかかっていると見えるわけです。

いずれにしても、単なる完全主義傾向のようなものと違って、特定の観念・行為に限って極端にコントロールがきかなくなり、日常生活を困難にするほどになってしまうのです。

ばかばかしいとわかっていながら、自分の考え・行為を本人自身がコントロールできないので、苦しくつらい病気です。何時間もかかる手洗いなどの行為を家族がやめさせようとしたり、家族が本人の代わりに洗ってやるなどして、家族が巻き込まれることもよく起こります。

精神分裂病と同じか

強迫性障害は精神分裂病とは無関係です。強迫性障害が重くなって精神分裂病になることも,精神分裂病が軽くなって強迫性障害になることもありません。古い医学書には強迫性障害を下手に治療したら精神分裂病になってしまう,と書いてあるものがありますが,誤りです。ただし,精神分裂病と強迫性障害を両方重ねもっている人も少ないですが,あります。

強迫性障害は重症になると歯を磨いたり,風呂に入ったり,人と話したりが出来なくなる人もいます。そうした場合は,あまりにも奇妙であることと,そして日本の医療機関で一番良く使われている精神安定剤(抗不安薬や抗精神病薬)が効かないために”不治の病”と思われてしまうことがあります。こうした場合に,精神分裂病と診断されていることも良くあります。

強迫性障害は、中世から知られている病気です。有名人ではハワード・ヒューズ(1905〜76 アメリカの実業家・飛行士・映画製作者)がいます。彼は生涯にわたって不潔恐怖があり、そのため手洗いなどの儀式行為に追われていました。五十代になると汚れることを避けるため、風呂も入らず、身なりもかまわなくなり、隠遁者として生活するようになりました。汚れることを避けるのに入浴しないというのは理屈に合わないように思われるかもしれませんが、不潔恐怖の人は外から身体につく汚れや尿・便などの汚れを怖れるのが特徴で、いわば身体の中から生じる汚れである垢や汗などは気にならないことが多いのです。

なぜ

強迫性障害の原因については、ずっと昔は,宗教的な理由から,19世紀には脳の障害として,20世紀にはフロイト理論にもとづく子ども時代の体験やストレス、性格などによるとされていました。これらは現在では誤りだということがわかっています。しかし,現在でも決定的な原因はわかっていません。

ただし,幼児期に溶連菌感染による高熱から急に強迫性障害を起こす子どもがいます。こうした子どもの場合は,溶連菌感染によって引き起こされた自己免疫反応による大脳基底核の障害が原因であると考えられています。初期なら抗生物質投与が有効です。

強迫性障害になりやすい特定の性格はありません。親や兄弟に強迫性障害があると強迫障害を起こす可能性が高くなります。

現在,有力な説は,進化生物学的な説明とセロトニン仮説です。強迫症状を引き起こす刺激に決まったパターンがあること,犬や鳥に強迫性障害に類似した病気をもつものがあることから,強迫性障害には生物学的な準備性があることが想定されます。この準備性を進化生物学から説明することが試みられています。セロトニンの脳内投与によりレスポンデント条件付けの効果を変えることができることや,三環系抗うつ薬の中でセロトニン作用のあるクロミプラミンのみが抗強迫作用をもつこと,機能的脳イメージング研究の結果などから,セロトニン動作性ニューロンの機能異常や前頭前野-帯状回-大脳基底核の間を結ぶ回路の機能亢進が強迫症状と関連していると考えられています。

この病気の類縁と考えられているのは、身体表現性障害(例:身体醜形障害、心気症)、解離性障害(例:離人症性障害)、摂食障害、衝動制御の障害(例:抜毛症、病的賭博)、神経疾患(例:トゥレット障害、シデナム舞踏病、パーキンソン病)などです。

現代日本のような清潔にこだわる社会状況は強迫性障害の素因を持った人が病気を起こしやすい状況だと言えます。

だれがなるか

強迫性障害は思春期頃から20歳代にかけて男女とも等しく起こります。調査では一般の人の2〜3パーセントが強迫性障害をもつことが知られています。分裂病よりむしろ多い数です。しかし、専門家にかかる人はごくわずかです。病気がゆっくり進行すること,病気を恥ずかしがる人が多いことなどが理由ですが、治療方法が一般に知られていないことも大きな理由であろうと考えられます。

どうなるか

強迫性障害は思春期,青年期から起こります。

病気の経過の中で、3分の2くらいの方がうつ病を併発します。

強迫性障害は、過去には難治性の病気とされていました。しかしこの10年間にめざましい治療方法の進歩がありました。適切な治療を受けることができれば、8割くらいの人は日常生活を正常に行えるようになります。

治療の方法

治療の方法としては、行動療法と薬物療法があります。最近のセロトニン仮説やSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)などの精神医学研究のトピックは強迫性障害から始まりました。SSRIは日本では現在フルボキサミン(商品名ルボックス,デプロメール)を使うことが出来ます。2000年秋からはさらに他の薬剤が加わる見通しです。

SSRIの他にクロミプラミン(商品名アナフラニール)もよく効くことがわかっています。現在の日本でふつうの精神科医が使える方法は後者のみです。

行動療法は、たとえば手洗い強迫の場合、アルコール依存症の断酒に似た気構えをご本人にしていただく必要があります。一度始めたら本人の意志力では止まらない、ほどほどということができない、という点は飲酒のコントロール喪失と似たところがあります。一度手を洗い始めると、洗えば洗うほど、洗い残したところや水はねがかかったところがさらに気になり、疲れ切ってしまうか気の済むまで洗おうとします。まわりが強制的に止めたりすると隠れて洗うこともしばしばです。

そこで治療場面では、いくら汚れたと思っても、洗いたくなっても、約束の期間はまったく洗わない・洗わせないという方法をとります。患者さんは「ふつうの人は外出から帰ったときに手を洗う」と抵抗しますが、アルコール依存症の人にとって断酒はできても節酒は困難なのと同じように、手洗い強迫の人には人並みの洗い方をすることが困難なのだということをわかっていただかなくてはなりません。まったく洗わないほうがむしろ楽にできるのです。洗わずにいても何も悪いことが起こらないと気づいてもらった上で、治療者と一緒に、ほどほどに洗う練習をくりかえします。治療後にだんだんと元の行為に戻ってしまう場合には、再び洗わない期間を作ったり、時間を制限したりします。こうやって新しい行動を身につけてもらうわけです。確認強迫の場合には、たとえば電気製品を何十個も病室に持ち込んで次々スイッチを切ったり入れたりしてもらうことで、確認しきれず忘れてしまっても悪いことが起こらないのを体験してもらうなどの方法があります。不完全恐怖や強迫性緩慢でも、頭の中で確認をくりかえす余裕がないよう、クイズなどの課題を与え続けたりします。気になっても放っておくしかない状況の体験です。こうした療法を「反応妨害」といい、手洗い強迫の人が汚れにさらされるのに慣れてもらうなど「エクスポージャー(さらすこと)」とともに、行動療法の柱となっています。

  1. どんなものがあるか | 精神分裂病と同じか | なぜ | だれがなるか | どうなるか | 治療の方法
  1. 強迫性障害の治療
  2. 強迫性障害(強迫神経症)とは

Last updated: 01/20/2008 08:03:24
Page Top ▲

Copyright © 2011 原井宏明. All rights reserved.