セルフモニタリング・決断分析・快行動スケジュールなど

セルフモニタリング

セルフモニタリングは患者が自分自身で自分の行動を観察・評価し、記録することである。糖尿病なども含めた幅広い領域で使われ、セルフヘルプの要素を含む介入法の全てに含まれていると言って良い。認知行動療法の特徴はこの手続きを研究対象として、さらに洗練させていることにある。
セルフモニタリングには他の評価法では代用できないユニークな利点がある。痛みなどの感覚、気分や欲求、好悪、満足感などの主観的な評価はセルフモニタリングが主要な評価になり、外部からの観察評価は副次的なものになる。一方、患者は評価することに習熟していないのが普通であり、毎日の記録を取るという習慣もない。セルフモニタリングが信頼性・妥当性・安定性をもつものになるようにスキルトレーニングすることが治療者の役割になる。
セルフモニタリングは経済的であり、治療者側の訓練は数時間程度で足りる。応用範囲が広く、患者の抵抗が生じにくく、副作用もあまりない。時間がないとき、診断不確定の場合などにまず勧められる介入法である。うつ病・パニック障害など自然寛解することが多い疾患については、この方法だけで治療になることがよくある。
セルフモニタリングは市販の日記を使って書いてもらうことから、疾患や問題ごとにカスタマイズした構造化されたものまで多種多様である。ここには原井が一般的に使っているものを例示する。

2週間分A4横置きセルフモニタリング用紙・疾患を問わない一般用

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気分点数の付け方ガイド

1週間分A4縦置きセルフモニタリング用紙・OCD用

エクセルPDFファイル
つけた例のサンプル

快行動スケジュール(Pleasant Events Schedule)日本語版332項目

332項目の人がするさまざまな行動・活動がリストされている。カウンセリング中にこのリストを使うことでクライエントにとって、どのような行動が強化子になるかを効率的かつ網羅的に探ることができる。治療者もクライエントもすぐには思いつかないような行動や人前では口にしにくい行動も取り上げられている。何も楽しみがない、やりたいことがない、と訴えるクライエントに試してみる価値がある。快行動計画法と呼ばれ、行動活性化を目的として使われる。
使い方1 その行動が好きと思う場合に〇をつける
使い方2 1回目は、この1か月間にその行動があったかどうかで〇をつける。2回目にもう一度見直して、それぞれの行動をもっと増やしたい場合には◎(二重丸)にし、減らしたい場合には塗りつぶして●(黒丸)にする。

参考:セルフモニタリングを30年間続けていた患者さんのストーリー

Yさんと「幸か不幸か」

原井のブログに双極性障害の女性がセルフモニタリングを長年続けて、自分の気分変動を管理した話を掲載している。これは原井の一般向けブログ(2017/10)である。
この患者さんにご協力していただいて書いた論文がある。(原井 1997)
30年前の当時に患者さんに書いていただいた感想文がある。本人のOKを得てアップしている。