専門書(著者・訳者)

原井の専門を大きく分けると認知行動療法と動機づけ面接、その他になる。

認知行動療法

対人援助職のための認知・行動療法―マニュアルから抜けだしたい臨床家の道具(金剛出版)2010

認知行動療法に関する私の主著と呼べるものである。第4章症例解説ではパニック症と強迫症を取り上げた。それぞれについてAクリニック、Bクリニックとして治療の違いがどのような転帰の違いにつながるかがわかるようにしている。コラム記事には抗うつ薬の二重盲検ランダム化プラセボ対照試験から学んだことなどを取り上げている。

認知行動療法による子どもの強迫性障害治療プログラム―OCDをやっつけろ! (岩崎宅術出版) 2008
J.S.マーチ (著), K.ミュール (著), 原井 宏明 (翻訳), 岡嶋 美代 (翻訳)

小児の強迫症を対象にした21回の外来セッションの治療マニュアルである。

エビデンスのまとめや親へのアドバイス、学校との協力など参考になる情報が詰まっている。この本からSlow Mindfullness Repetition(意識を傾注して行うゆっくりした反復)を知り、それが一次性強迫緩慢の患者の治療の転機になった。急がせるのではなく、早くできることをわざとゆっくりさせる。これも逆説志向の1つである。

一方、今は21回も行う必要性を感じない。小児も3日間集団集中治療に入れるようになり、数回で十分な例が普通になった。

この本の後書きにて菊池病院強迫専門外来で経験した18歳以下の強迫症48名の治療成績を示している。治療前のCY-BOCSの平均は25.5、治療後は10.8であった。48例中、40例が寛解または部分寛解した。5例の具体例を示している。最年少者は5歳女児である。この子が書いてくれた絵は本の表紙になっている。

ACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)をはじめる セルフヘルプのためのワークブック(星和書店) 2010
スティーブン・C・ヘイズ (著), スペンサー・スミス (著), 武藤 崇 (翻訳), 原井 宏明 (翻訳), 吉岡 昌子 (翻訳), 岡嶋 美代 (翻訳)

アクセプタンス&コミットメント・セラピーの患者用マニュアルである。刺激等価性とルール支配行動の解説から始まり、治療者にも役立つ本である。たとえ話やエクササイズが豊富であり、診断概念がかわった今でも役立ってくれている。回数を決めて構造化してしまった治療マニュアル本との違いだろう。

動機づけ面接

方法としての動機づけ面接―面接によって人と関わるすべての人のために (岩崎学術出版) 2012

動機づけ面接に関する書き下ろし本である。この本の中のサイドコラム④(P151)に

いままでで私が普段と違うコミュニケーションスタイルを取っていることにすぐ気づいたのは1人ぐらいである。彼は広汎性発達障害の幼児に対する応用行動分析を使った自宅での養育の名手である。

これは奥田健次先生のことである。このときの鹿児島での出会いが今に続く彼との親交につながった。本を読んでくれた彼から、名誉なことなので、自分の名前を出して欲しいと連絡があったのでここに記す。

動機づけ面接を身につける 一人でもできるエクササイズ集(星和書店) 2013
デイビッド・B・ローゼングレン (著), 原井 宏明 (監修), 岡嶋 美代 (翻訳), 山田 英治 (翻訳), 望月 美智子 (翻訳)

エクサイズを集めた本である。書き込んだり、相手を見つけて話したり

するうちにMIが身につく仕組みになっている。

 

その他

うつ・不安・不眠の薬の減らし方 単行本 (秀和システム) 2012

素人にもわかる臨床疫学と行動薬理学を目指した。決断樹に基づく決断サポートは類書にはないだろう。しかし、アマゾンなどの書評で見るように、多剤大量処方を声高には非難しないという態度に対して批判を受けた。また高木兼寛が練習艦”筑波”で行った世界初の臨床試験を取り上げるなどして一般人に臨床疫学をわかってもらおうとしたが、結果的には上滑りになったようだ。販売は振るわず、初版で絶版になった。
向精神薬の行動薬理学を一般向きにまとめた本はこの本ぐらいしかない。古本でも入手可能である。