認知行動療法事典:パーソナリティのアセスメント(草稿)

パーソナリティとは人の振る舞いや言葉、認知、判断,感情、好き嫌いなどについて、幼いころからどのような状況でも一貫して見られる、その人らしさとして定義される。日常語では人柄や気性、性格、人格のことである。専門用語としてはパーソナリティと呼ぶ。「人格者」のような価値判断を避けるためである。学問としての心理学とは無関係に、人は人のタイプ分けを長く、広く行ってきた。ギリシャ時代の多血質・胆汁質に始まり、クレッチマーが体型と性格を結び付けた循環気質や分裂気質、日本特有の血液型性格診断にいたるまで多様な性格類型論がある。心理学専門家の中でも類型論志向は根強い。日本の臨床心理学ではロールシャッハ法などの投影法が広く使われている。

一方,実証科学としての心理学に基づくCBTにおいては対象がパーソナリティであっても客観的な手法を用い、信頼性と妥当性が確認されたアセスメント法を使う。類型に当てはめることよりもIQのように連続する次元としてとらえて数値化する。パラノイドや“ボーダー”などの概念は日常用語の性格類型であり、一生変わらないその人らしさであると同時に、CBTにおいては数値で評価し、治療で変えることもできる具体的な行動である。

性格類型を評価するもの

多種多様な性格類型論があるが決定的なものはない。その中でもっともコンセンサスを得ているものはDSM-5の分類である。3群 10類型に分類している。

A群 猜疑性,シゾイド,統合失調型:これらの障害をもつ人は奇妙で風変わりに見えることが多い
B群 反社会性,境界性,演技性,自己愛性:これらの障害をもつ人は演技的で情緒的、移り気に見えることが多い
C群 回避性,依存性,強迫性:これらの障害をもつ人は不安または恐怖を感じているように見える

DSM-5診断には半構造化面接を使うことになっており、パーソナリティ診断のためにはSCID-5-PD (First, Williams, Benjamin, & Spitzer, 2017)が用意されている。事前スクリーニングのための106項目の自記式質問紙が付属しており、これで当てはまる項目が少なければ、評価 に要する時間は30分程度である。多い場合は2,3時間である。評価者は事前のトレーニングを受ける必要がある。そして模擬患者の面接を評価し、所定の標準と一致するまで反復するようにする。

もう一つの標準がICD-10である。こちらにはABCのような群別はない。妄想性と統合失調症質性、非社会性、情緒不安定性、衝動型、境界型、その他の情緒不安定性、演技性、強迫性、不安性(回避性)、依存性、その他に分類している。

特定のパーソナリティを評価するもの

反社会性についてはHare PCL-R(Hare Psychopathy Checklist-Revised) (Hare, 2004)が標準である。125の質問からなる半構造化面接である。評価者はPCL-R日本事務局が行う研修を受講する必要がある。

境界性についてはDIB(Diagnostic Interview for Borderline Patients )(John, Kolb, & Austin, 1981) が標準である。132 の質問からなる半構造化面接である。

多次元に基づく評価

複数の次元の複合体からパーソナリティが構成されるという考えに基づく。現在、一般に使われているものはすべて自記式尺度である。行動療法の創始者としても知られるアイゼンクが作った尺度が良く知られている。MPI(Maudsley Personality Inventory), EPI(Eysenck Personality Inventory),EPQ(Eysenck Personality Questionnaire)の順に改定されている。EPQは外向性-内向性、神経症性-安定性、精神病性-社会性の3次元に加えて、虚偽発見尺度がある。現在はさらに2つの次元を加えた、NEO Personality Inventory—Revised (NEO-PI-R)(下仲, 中里, 権藤, & 高山, 1998)が主流である。これは、パーソナリティの次元は5つ(神経症傾向、外向性、開放性、調和性、誠実性)あるとするものである。240の質問からなる。60項目に短縮したNEO-FFIもある。NEO-PI-Rは30分強、FFIは10分の時間がかかる。

DSM-5においてもパーソナリティ障害の代替DSM-5モデルと呼ばれる多次元に基づく評価を提案している。特定のパーソナリティ障害の診断基準を満たす典型的な患者が、他の障害の診断基準を満たすことが多いなどの現行の診断方法の欠点に対応するためのものである。自己の同一性と志向性、対人関係の共感性と親密さ、5つの病的パーソナリティ特性について5段階で評価するようになっている。

パーソナリティアセスメントの未来

スマートフォンが普及し、ビッグデータを活用できるようになった、たとえばSNSでの投稿やクリック行動から選挙での投票行動を予測可能である(Kristensen et al., 2017)。またヒトゲノム計画の結果、遺伝がパーソナリティに与える影響をデータに基づいて調べることが可能になった。行動遺伝学と結びついて遺伝情報と環境、行動の間の相互関係を調べる研究がさかんになっている(Bleidorn, Kandler, & Caspi, 2014)。

【さらに詳しく知るための文献】

日本パーソナリティ心理学会, パーソナリティ心理学ハンドブック. 福村出版 (2013)

【参考・引用文献】

Bleidorn, W., Kandler, C., & Caspi, A. (2014). The Behavioural Genetics of Personality Development in Adulthood-Classic, Contemporary, and Future Trends. European Journal of Personality, 28(3), 244–255.

First, M. B., Williams, J. B. W., Benjamin, L. S., & Spitzer, R. L. (2017). SCID-5-PD : DSM-5パーソナリティ障害のための構造化面接. (髙橋三郎 & 大曽根彰, Trans.). 医学書院.

Hare, R. D. (2004). HARE PCL-RTM 第2版 日本語版. (西村由貴, Trans.). 金子書房.

John, B., Kolb, M.–than E., & Austin, I. (1981). The Diagnostic Interview for Borderline Patients.

Kristensen, J. B., Albrechtsen, T., Dahl-Nielsen, E., Jensen, M., Skovrind, M., & Bornakke, T. (2017). Parsimonious data: How a single Facebook like predicts voting behavior in multiparty systems. PloS One, 12(9), e0184562. http://doi.org/10.1371/journal.pone.0184562

下仲淳子, 中里克治, 権藤恭之, & 高山緑. (1998). 日本版NEO-PI-Rの作成とその因子的妥当性の検討. 性格心理学研究, 6(2), 138–147.

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