2018 認知行動療法事典第4章アセスメント リード文 草稿

認知行動療法(Cognitive Behavior Therapy, 以下CBT)をCBTらしくしているものの一つがアセスメントである。CBTの概念やモデル、技法は数えきれず、マインドフルネスのように紀元前からあるやり方も取り入れられている。現時点では相反する概念や技法が将来、CBTの範疇に入れられることもあるだろう。従って概念・技法だけでCBTかどうかを判断することはできない。
一方、CBTの実践や知見を専門家の前で発表するとき、聴衆が必ず尋ねるのは「データは?」である。CBTの基礎哲学は行動主義であり、それは内観に基づく主観的なデータの排除を主張する。治療者が「CBTが奏功したと思う」「効果のメカニズムは○○だと思う」としか言えないなら、それはCBTではない。患者には「客観的な見方を身につけよう」と指導しながら、自分自身は内観に基づく主観的な評価・判断しか使わないなら不公平と言うしかない。
評価方法は誰にでもアクセスでき、再現可能な方法であるべきであり(透明性)、診断や予後、治療反応などの評価が持つ意味を誰にでもわかるように説明できなければならない(説明責任)。逆に言えば他の臨床心理学がよく使う投影法をCBTが使わないのは透明性と説明責任を担保できないからである。
「データは?」という質問に対して答えられるようにするための準備がこの第4章である。実臨床における介入法の選択は事後の思い付きによることが多い。初診から終結まで計画通りに進むことは例外的である。一方、アセスメントは思い付きであってはならない。事後にデータを取ることは治療者の思い入れも盛り込むことになる。治療が奏功すれば治療が良かったから、失敗すれば患者・症状が悪かったからとしたくなるのが人間の性であり、事後のデータ収集は確証バイアスを強めるだけである。従って、治療でも研究でも事前のデータ収集計画が必要である。治療者になるための第一歩はこの章で取り上げた方法を事前に習得し、使えるようになっていることである。アセスメント技法の中にはセルフモニタリングのように評価すること自体に治療のエビデンスがあるものがある。
この章では最初に診断の種類を問わず事例の全体をアセスメントする方法を取り上げた。次に診断別・疾患別の尺度(症状プロフィール、重症度)、分野別・課題別の尺度を扱う。ある疾患に対してCBTのエビデンスがあるとは、その疾患の重症度の減少度が他の治療をした場合よりもCBTの方が大きいことを意味している。クライエントにCBTの効果を説明するとき、どのような尺度でそうなのかも説明できる方がよいだろう。最後に、治療者自身を評価する尺度、治療の副作用を評価する尺度も取り上げた。治療者自身もまたCBTの対象であり、評価の対象である。

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