方法としての動機づけ面接―思春期を指導・支援する人のために

第35回 日本思春期学会総会・学術集会 特別講演

場所 浅草ビューホテル
日時 8月 27日 (土), 13:40 ~ 14:30

動機づけ面接(Motivational Interviewing, 以下MI)とは患者自身の内発的動機づけを治療者が積極的に引き出し,関わることによって行動が変わるようにする独特のコミュニケーションである。ゴール志向的でありながら,クライエント中心の態度を一貫して保つ。患者の問題行動・発言に寄り添いながら,裏側に隠された感情や背景を探り,患者が自ら矛盾に気づき,解消に向かい,自分の力で行動変化を起こしていくように促す。

短期介入法の一つであり,認知行動療法などの他の心理療法や薬物療法などと一緒に使われることが多い。米国国立アルコール研究所による大規模ランダム化比較試験の中で,介入法の一つとして採用されたことがきっかけで広く知られるようになった。現在では,依存症や精神科の枠を越え,生活習慣病における行動変容や公衆衛生領域,終末期医療における決断支援にも有用性のエビデンスが示されるようになった。日本では2005年の国際認知行動療法学会でのワークショップ,2007年の松島・後藤による訳書によって徐々に知られるようになった。和文文献数が2000年代は29件だったものが,2010年からは178件になるなど急速に普及してきている。

演者は精神科医・行動療法家である。肥前療養所に就職してから,強迫性障害とアルコール依存症を主な対象として行動療法をするようになった。クライエント中心アプローチという概念は聞いたこともなく,私にとっての行動療法とは患者に嫌なことを無理矢理させることだった。不潔恐怖の患者に汚れを触らせ,依存症の患者に断酒を強いた。7歳の長男にはうつ病の問題があり,それが理由で小児・思春期の患者を扱う気になれなかった。無理強いは無理と実生活を通じてわかっていたからだ。そんな私が2004年にMIのトレーナー研修を日本人としては始めて受け,自分自身が大きく変わった。7歳だった不潔恐怖の女児を治せるようになり,その子に大学進学のお祝いを贈ることもできた。今では患者の2割は未成年である。MIのトレーナー経験を通じて糖尿病や関節リウマチの臨床にまで関わるようになった。

どのような精神療法でも言えることだが,MIにも技術的な側面と態度としての側面がある。

なぜMIがここまで広がるのか,行動療法らしい工学的な側面を紹介しながら,その奥にある態度についてもお話ししたい。

方法としての動機づけ面接―思春期を指導・支援する人のために” への2件のコメント

  1. 大阪市立大学大学院発達小児医学教室 川村智行 より:

    原井先生 大阪市大の川村です。
    日本思春期学会総会での特別講演ですね。聞かせていただきたいのですが
    別の研究会の予定がありまして参れません。非常に残念です。
    マインドフルネス・ACTと原井先生を検索してこのPageを見つけました。
    MIの次にマインドフルネス・ACTを臨床で使いたいと本などを読み始めました。やっとマインドフルネス・ACTの世界でも彼方に原井先生の背中が見えています。次の著述も非常に面白かったです。心理学や行動療法などの背景を知らない私にとっては、とても勉強になります。

    • 川村先生
      この私的レポジトリを発見していただき,ありがとうございます。
      行動療法からEBM,MI,そしてACTというのは,私にとっては一歩一歩それ自体は自然な流れで,先を読んでいたわけではありません。
      でも,だからこそ,一人で登ってきたつもりの山道の後についてきてくださる方があることはありがたいです。自分の歩いている道は行き止まりではないと後の方が教えてくれているからです。
      その次は?どこに行くと思われますか?

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