動機づけ面接 (草稿) in 精神科治療学30巻1号 2015年1月 創刊30周年記念特集①―精神科医療技術の将来

抄録
動機づけ面接(Motivational Interviewing,MI)とは変化への動機づけをクライエントの中から引き出し,強めるために,クライエント中心でありながら治療者が方向性をもって誘導していくコミュニケーションのスタイルである。近年はさまざまな領域に応用され,その効果を示すエビデンスが蓄積されてきた。MIはトレーナーを養成することで普及が進んでいる。MINTと呼ぶ,トレーナーの世界組織がある。日本人のメンバーは2014年には16人になった。日本での普及はこれから加速するだろう。
I. 精神科治療学と動機づけ面接
動機づけ面接(Motivational Interviewing,以下MI)とは変化への動機づけをクライエントの中から引き出し,強めるために,クライエント中心でありながら,治療者が方向性をもって誘導していくコミュニケーションのスタイルである。1983年にMillerによって最初の論文が著された(1)。近年はさまざまな領域に応用され,その効果を示すエビデンスが蓄積されてきている。Mの普及の仕方には他の治療技法にはない特徴がある。その一つはトレーナー養成に力を注いで来たことである。トレーナーたちの集まりが,MINT (Motivational Interviewing Network of Trainers) であり,現在,36ヶ国から1165人のメンバーがいる。MillerがMIを概念化したのは,米国の中にいた時ではなく,ノルウェーにいた時であり,MIの本を書き下ろすことにしたのは,シドニーでRollnickに会った時である。MIは最初から国境を越えた共同作業の中から起こっている。著者は2012年からMINTの理事の1人である。
今回の特集のタイトルは「創刊30周年記念特集①―精神科医療技術の将来―」である。30年前に,その概念が生まれたばかりだったMIが,精神科医にとって将来性のある治療法として取り上げられることはMINTの理事として,また精神科治療学の創刊期に神戸大学病院精神科で研修医をしていたものとして,とても嬉しい。
この論文では最初にMIとは何かを説明する。次に他の精神療法とどう違うのか,将来どうなるのか,最後にMIを学んだ人たちの声を取り上げる。
II. MIとは何か
MIは特定の疾患・問題に対してデザインされた特定の精神療法というより、一種の「会話のスタイル」というべきである。共通語に対する関西弁と言えばいいだろうか。関西弁の「まいど,おおきに」のように,MIにはMIらしい言い回しがある。「○○したい,一方で,○○を止めたいという気持もある」のような”両面をもった聞き返し”や「○○を続けるか,止めるか,それを決めるのはあなた自身です」のように本人の選択を強調するような言い方がその例である。しかし,全くなくても構わないし,たくさん言えばMIらしくなるわけでもない。これを言えば必ずMIだといえるような決めセリフはない。EMDRの目の左右移動や行動療法の機能分析,ACTやDBTのような第三世代の行動療法におけるマインドフルネス・トレーニングのようなコアな技法をもっていない。
MIはアルコール依存症に対する行動療法の効果を調べるためのランダム化比較試験(Randomized Controlled Trial,RCT)の結果からスタートしている。それもポジティブな研究結果ではなく,”Null Result”から生じている。すなわち行動療法と対照群の読書療法を比較したRCTで,両者の間に有意差を見いだせなかったからMIが生まれてきたのだ。地道なデータの積み重ねこそがMIの基盤である。行動療法における学習理論,ACTにおける関係フレーム理論のような,基盤になる特定の理論があるわけでもない。動機づけに関する行動経済学や脳科学も関係がない。説明のために理論を使うことはあるが,それも便宜的なものであり,データに合わなければ捨ててしまう。いわば理論は消耗品である。
データに基づくのだから,MIは豊富なエビデンスを持つ。エビデンス量から言えばアルコールや喫煙,ギャンブルなど嗜癖に関するものが多い。それだけに限らない。メタボリック・シンドロームの患者に対する服薬指導や栄養指導,歯科におけるブラッシング指導にもMIの効果を支持するRCTがある。医療場面だけでもない。教育と社会福祉、刑事司法の領域におけるRCTを集めたキャンベル共同計画というものがある。コクラン共同計画の双子のような存在である。そこでもMIが登場する。言い換えれば,トラウマならEMDR,境界性パーソナリティーならDBTというような,この疾患・問題にはMIを使うのがベストだと主張できるような特徴的な精神疾患や問題をMIはもたない。エビデンス全体からみれば,MIは精神科医がうつや不安に対する治療のために使うものではなく,一般内科医や栄養士,作業療法士などが健康指導のために使うもの,保護観察官が執行猶予中の対象者に対して使うものように見えるだろう。
MIは薬物療法や他の精神療法と組み合わせて使うことが普通である。断酒のような単純な課題ならば,救急場面でのブリーフ・インターベンション(2)のようにMIだけでも有用性を主張できるが,服薬指導や栄養指導,ブラッシング指導ならば指導内容自体がMI以外に必要である。著者の場合,強迫性障害に対する行動療法においてMIを使っている。MIだけでは治せない。ERP(Exposure & Ritual Prevention, エクスポージャーと儀式妨害)が必要である。通常の臨床では,MIはスタンドアローンでは機能せず,他と合わせてつかうものである。
関西弁に例えれば,MIとはその独特なアクセントのようなものである。アクセントだけでは流ちょうな関西弁の会話にはならないが,アクセントがはずれていれば,どれだけ一生懸命上手に関西弁を学んだとして台無しである。「パスタを食べる時,お箸を使いたいねんなあ。そやけど、それは恥ずかしい,やめたい気持ちもあるんやなあ」と言ったとしよう。他がどれだけ上手でもアクセントが東京式ならば,エセ関西弁にしか聞こえない。「箸」を一度,発音させれば,分かる人間にはその話者が関西出身かどうかすぐ分かる。同じように,MIに基づく会話はMIを知るものならすぐ分かる。下手なMIと上手なMIの区別もつく。上手なMIはまったく自然に聞こえ,無理がない。
III. MIの具体例
MIは日常生活場面でのコミュニケーションの改善にも使える。夫婦ふたり暮らしの家庭での場面である。
サラリーマンA夫は、深いため息をつきながら帰宅の途についていた。今日、出張先を出るときに顧客からのクレーム電話が携帯にかかり、対応が長引いた。そのため予定していた列車に乗り遅れたのである。車内でも仕事の書類を広げていたA夫だが、自宅駅のホームに降り立ったとたん憂うつさがこみあげた。A夫を憂うつにさせているのは、帰宅後に妻B子と繰り返されるであろう、いつもの言い争いである。A夫は重い足取りで家へ向かい、玄関ドアを開けた。
シナリオ1
B子 どうして遅かったの? またあの女と会っていたんでしょう。
A夫 また、その話か。いい加減にしてくれ。何度あやまったら気が済むんだ?
B子 そんな風に避けるのが怪しい証拠よ。本当はあの女を誘って遊びに行っていたんでしょ、出張と嘘をついて行っていたってことを白状しなさい。
A夫 白状も何も、僕は嘘はついてないし。出がけにうるさい客からクレーム電話があって電車に乗り遅れたんだ。
B子 あ、そう。なんて都合良くクレーム電話がかかってくること。そんな言い訳、聞き飽きたわ。あなたが隠したって私は気づいているの。ね、本当のことを言ってよ。本当のことを言わないと離婚するから!
A夫 だから、本当のことを言っているじゃないか。どうして人の言うことを素直に聞こうとしないんだ。まったく君は過去のことばかり蒸し返して、僕はあやまっているのに、どれだけ責めたら気がすむんだ。出張から疲れて帰ったのに、こうやってしつこく言うなんて、どうかしてるんじゃないか。しまいには僕だって嫌になる。こんなことばかり繰り返すのなら、こっちこそ離婚したいよ !
シナリオ2
B子 どうして遅かったの? またあの女と会っていたんでしょう。
A夫 私があの女性と一緒にいたと、今さっきまで、ずっと想像していた?
B子 そうよ、あなたは私が一年前のことをそう簡単に忘れないってよくわかっているでしょう。どうして連絡くれなかったの。
A夫 本当は、一年前のことを忘れてしまいたい、忘れようと思えば思うほど気になる、私が一人でいることを自分の目で確認するまではいてもたってもおれなかった?
B子 だって、あなたから電話もないし、よその人と楽しいことをしているから連絡もないんだとつい思ってしまう。
A夫 私 が目の前にいて今はほっとしているけど、ついさっきまでは私にどういってやろう、どうとっちめてやろう、と思っていたんだね。
B子 うん。ごめんね。仕事が忙しいってわかっているんだけど。遅くなるとき、連絡を入れて?メールでいいから。
A夫 うん。わかった。そうする。君が仕事のことを理解してくれていることに私が甘えていた。待っていてくれてありがとう。
この2つのシナリオは、どこが違うだろか?A夫の性格が違うというのは答えにならない。あくまで同じ人格だとしてB子に対する会話のスタイルの違いに注目して欲しい。
IV. MIは何が違うのか
1. 共感が違う
MIの特徴の一つは「聞き返し」を多用することである。シナリオ1では、A夫は妻に対して、「いい加減にしてくれ」「どうして」といった言葉を使っている。これらの言語は要求の機能をもち、相手を自分の思うように動かそうという意図がある。ただし,相手はそのように動くどころか、この会話は最後には「離婚する」「こっちこそ離婚したい」という破局的セリフに行きついてしまっている。シナリオ2では、A夫は妻の気持ちを言い表わすことに集中している。そして最後に自分の気持ちに触れている。つまり、相手や自分の状態を少しでも正確に述べようとして,陳述の機能をもった言語を使っている。その結果、妻が具体的にどうしてほしいのかを引き出すことに成功している。こうすれば言葉尻にこだわるような不毛な言い争いを避けることができる。これから二人の関係を変える手がかりも得られるだろう。
MIはカウンセラーのスキルを評価する方法を確立させている。代表的なものがMITI(Motivational Interviewing Treatment Integrity) (3)である。MITI総合評価尺度から見れば、2つのシナリオの違いは「共感の程度の違い」ということになる。ここでいう共感は常識的な「共感」とは異なるので説明したい。MITIの日本語訳(4)(p.239)から一部を引用する。
この尺度はカウンセラーはがクライエントの視点や気持ちを理解するまたはとらえようと努力する程度を測る。(一部略)カウンセラーがどれだけクライエントが奥深くで何を感じ考えているかについて“試掘”しようと試みるどうかを示す。共感は暖かさ,受容,率直さやクライエントに対する弁護や擁護と混同されてはいけない。これらは共感の評価とは独立している。聞き返しはこの特徴の重要な部分である,この全体的な評価はカウンセラーがクライエントの視点を理解しようし,またその理解をクライエントに伝えようとするすべての努力をとらえることを意図している。
MIは,モンスター・ペイシェントと呼べるような困った患者が来たとしても「あなたはこうすべきだ」という要求の言語を使わず,相手の要求に共感するようにする。それができるためには“精神科医”という専門性,すなわち「患者よりも知識があり、診断・治療・指示をする役割をもつ」という大きな前提も捨てなければならない。モンスター・ペイシェントには本人なりのモンスターになる理由や背景があり,そしてモンスターを育ててしまったのは医療側にも原因がある,そのような状況の中で患者が自分で自分の変わりたい方向を見つけていけるように治療者が援助する,そのような態度がMIである。
2. 発展が違う
MIはどこかの天才セラピストが思いついたものではない。最新・最先端の心理学理論や脳科学から沸いてきたものでもない。MIの「4つのプロセス」「4つの戦略」「維持トーク」「チェンジトーク」といった種々の方法はRCTを中心とした地道な実験的臨床研究から編み出されたものである。MIの標準的教科書と呼ぶべき本がある。MillerとRollnickが1991年に書き下ろした本(5)ばMIの名前を一躍,世に知らせることになった。しかし,これでMIが確立したわけではない。MIは常に研究と実践とともに変化してきた。二人の本は2002年に第2版,2013年に第3版が出版された。事例や技法の説明が,毎回変わっている。第1版ではProchaskaとDiClementeの変化のステージ理論が取り入れられていた。第2版ではアンビバレンスがテーマになった。第3版ではそのどちらもが消えている。以前の4つの原則「共感表出,矛盾模索,抵抗転用,自力支援」は4つのプロセス「かかわり,焦点を絞る,引き出す,計画する」に変わっている。なぜだろうか?
関西弁の学習を考えてみて欲しい。本によっては関西では挨拶するとき,”もうかりまっか?”, “ぼちぼちでんな”と言うと書いてあるだろう。菊田一夫作の戯曲「がめつい奴」(6)の中で使われ,この戯曲をもとにした映画やテレビドラマが大ヒットした結果,この挨拶が日本人の共通常識になった。申し訳ないが,関西でこんな言い方がその通り実際に使われるのはまれである。印象に残る言い方だが,だからといってそれを不適切な場面で使ったらエセ関西弁である。MIも同じである。第1,2版が出た後,本に書いてある通りの言い方を真似して,それをMIと勘違いする人がでてきた。3版ではその時の読者に合わせてMIの記述を変えている。実際に使う人がどうなっているかを見ながら技法の説明を変えるところがMIらしい。MIを間違って使う人を見つけたら,その人が悪いと責めるのではなく,MIの教科書の方を変えるようにしている。
3. 普及が違う
ほとんどの精神療法には創始者がいる。例外は行動療法である。世界各地でほぼ同時期に勃興した条件づけ療法や行動変容などの治療法を1959年にHans Eysenckが“Behavior Therapy”と総称することにした。Eysenckは名称の創始者であるが,行動療法の創始者ではない。行動療法以外の精神療法は,DBTならMarsha M. Linehan,ACTならSteven C. Hayesのように,誰か創始者がいる。MIもWilliam R. MillerとStephan Rollnickがいる。そして普通ならば,創始者がワークショップなどの形式で他の人に教え,教えられた人がまた他の人に教えるということが生じる。教える教えられるための場所として学会・研究会が作られる。この結果,創始者をトップに頂き,その下に直接の弟子たちが並び,さらにその下に孫弟子たちが並ぶというような階層性のあるピラミッドができあがる。創始者が元気な間は学会のトップであり続ける。そして創始者が倒れると弟子たちの間で喧嘩別れが生じる。
MI自体には学会がない。似たようなものはあるが地域限定であったり,会員制度がなかったりする。そしてMillerとRollnickははっきりと「弟子はいない」という。二人は指導者,師匠扱いされることを嫌がる。ではどうやってMIは世界に広まったきたのだろうか?アルコール臨床から始まったものがどうやって栄養指導や刑事司法のところまで拡がってきたのだろうか?
Millerたちは,1993年からTNT (Training of New Trainers) と呼ばれるMIのトレーナーを育成するための3日間集中ワークショップをするようになった。二人は自分たちだけで指導していてもMIの需要にはとても追いつかない,MIのワークショップを独立して開くことができる指導者を促成しようと考えたのだった。こうして育ったトレーナーたちがTNTの終了後も集まるようになり,それがMINT (Motivational Interviewing Network of Trainers) と呼ばれ,毎年の集まりをMINT フォーラムと呼ぶようになった。二人が育てたトレーナーたちの考えやトレーニング方法がMIの教科書の第2版,第3版の改訂に影響を与えている。MIでは「医者が患者にやり方を教える」のではなく,「患者が医者に自分のやり方を教える」のだと考える。トレーニングも同じである。講師が研修生に教えるのではなく,研修生から講師が学ぶ。講師は研修生から知りたいという動機づけを引き出し,必要な情報と研修経験を与え,そしてその情報と経験から研修生が自ら変わっていくように誘う。変わり方は研修生次第である。MIをどこでどう使うかもそうだ。MIが高齢女性の腰曲がり(脊柱後弯症)の治療(7)に役立つなんてMillerたちでも思いつかないだろう。
MIでは創始者も含めて,教える立場の先生の側が,生徒から学ぶと考える。上意下達式で,決まったことを教え/教えられるための学会よりも,教えあうためのインフォーマルな関係を大切にしたフォーラムを作るようにしたところがMIのユニークさである。普通の学会とは異なる,是認と喚起の雰囲気はMINTの仲間からしか味わえないものだ。
4. しかし,変わらない
著者は2003年,TNTに参加した。Millerたちに会い,日本に帰ってからMIを日本で普及させるためのアドバイスをもらった。アドバイスの一つは,デモビデオを作りなさい,だった。2004年に当時勤務していた国立菊池病院の同僚と一緒に「動機づけ面接トレーニングビデオ 導入編」(8)を作成した。10年たった今,考えても,自分自身がMIを身につけるためにも,トレーナーとして他の人が学ぶことを援助するためにも,ビデオを作れというアドバイスが一番役立っていることが分かる。洋書を翻訳したり,自分で書いたりするよりずっとである。喫煙者に対して禁煙を動機づけする10年前の場面を見ると,面接がしっかりとしたMIになっている。当時の解説は今の解説と比べると,著者の頭髪の違いと同じぐらい違う。しかし,MIはMIである。MIを教えるようになった10年たってから見てもMIはMIに見えるのである。トレーニングビデオの続編として2009年に応用編(9)を作成した。2009年版を見ると,もちろんこれもMIなのだが,2004年版のほうがより,わかりやすい標準的なMIになっている。2009年は全体としてはMIになっている自然な流れの中に,その部分だけ取り出して聞けばMIらしくないと感じる言い方が混じっている。
MIはMIとして変わるものではない。しかし,それをどう伝えるか,広めるか,どうトレーニングしていくかについては状況や文脈によって変わっていく。
V. MIで,どう変わるのか?
著者自身,MIでずいぶん変わった。25年前,肥前療養所で山上敏子先生に会った時から,行動療法家であり,今もそうである。しかし,2003年より前の行動療法家にはもう戻れない。
2014年11月に富山で開かれた第40回日本認知行動療法学会(旧称,日本行動療法学会)でMIのワークショップを行った。2005年から毎回行っている定番ワークショップである。しかし,2014年11月は特別だった。研修席に山上敏子先生が座っておられた。後からお葉書を頂いた。普通の褒め言葉の他に「何よりも,私が最も気にしていた,まだ少しあった,ごまかし用の辻褄合わせの論旨がなくなっていたことです。それが一番嬉しかったです」と書いてあった。MIによって著者が一番変わったことは,この山上先生が指摘した点だろう。
この10年間に大勢の人たちにトレーニングを行ってきた。彼らの感想をいくつか取り上げよう。
不協和や抵抗にたじろがなくなった。そして普段の面接の中で相手の言語反応をどう選んで,どう強化するか,オペラント条件づけでいう分化強化のやり方が分かってきた。その結果,クライエントの行動が変わってきたし,仕事も楽にやれるようになった。(心理士)
酒害相談を電話などで受けている。誰が来るか分からない,モンスター・クレーマーのような相談が飛び込んでくることもある。以前は,そういうときに面接を短時間で終わりにさせようとして間違い指摘反射をやっていた。それがなくなってきた結果,前は3時間を越えることもあった面接時間が長くて1時間と,ずいぶん短くなった。電話相談で,話を整理して,短時間で相手が納得できるように持って行けるようになった。(保健所保健師)
日本人でTNTに参加し,MINTのメンバーになったものは2014年で16名になった。精神科医よりも内科医の方が多い。2015年5月には,その内科医の一人が主トレーナーになり,Millerらと共にMINT承認日本語TNTを行う。MITIによって一定レベル以上のMIのスキルがあることを証明された40人を対象にした4日間のワークショップである。新しいトレーナーが生まれることで,日本におけるMIの普及や応用,研究が大きく変わるだろう。「内科医が精神療法を教えられるのか?」と思う精神科医がいるかもしれない。その精神科医がMIを通じて変わるのが楽しみである。

文献
1. Miller WR. Motivational interviewing with problem drinkers. Behav Psychother. US: Cambridge Univ Press; 1983;11(2):147–72.
2. Vasilaki EI, Hosier SG, Cox WM. The efficacy of motivational interviewing as a brief intervention for excessive drinking: a meta-analytic review. Alcohol Alcohol [Internet]. [cited 2014 Nov 8];41(3):328–35. Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16547122
3. Moyers TB, Martin T, Manuel JK, Hendrickson SML, Miller WR. Assessing competence in the use of motivational interviewing. J Subst Abuse Treat [Internet]. 2005 Jan [cited 2014 Jun 25];28(1):19–26. Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15723728
4. 原井宏明. 方法としての動機づけ面接. 東京: 岩崎学術出版; 2012.
5. Miller WR, Rollnick S. Motivational interviewing: Preparing people to change addictive behavior. New York, NY, US: Guilford Press; 1991.
6. 菊田一夫. 菊田一夫戯曲選集 1. 演劇出版社; 1960.
7. Katzman WB, Sellmeyer DE, Stewart AL, Wanek L, Hamel KA. Changes in flexed posture, musculoskeletal impairments, and physical performance after group exercise in community-dwelling older women. Arch Phys Med Rehabil [Internet]. 2007 Feb [cited 2014 Nov 24];88(2):192–9. Available from: http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17270517
8. 原井宏明. 動機づけ面接 トレーニングビデオ日本版 導入編. 2004.
9. 原井宏明. 動機づけ面接 トレーニングビデオ日本版 応用編. 2009.

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