2014/9/12 現在の精神障害に対する認知療法的アプローチ;その現在とこれから 強迫性障害,14回認知療法・18回摂食障害学会 合同シンポジウム,大阪市

今日,強迫性障害といえばERP(エクスポージャーと儀式妨害)というぐらい,この方法はよく知られるようになっている。儀式妨害とは儀式をしたいという衝動をそのままにし,儀式をしないことである。汚れを広げないようにするための行為も禁止され,消極的回避は積極的に汚す行動に置き換えられる。ERP中は,おぞましさや吐き気などの不快な情動や破滅のイメージなどの恐ろしい思考など患者自身の内的事象を止めたり,避けたり,かわしたり,気ぞらししたりせず,十分に享受し,味わうよう,積極的に関わるよう患者は励まされる。
儀式は単純に止めるという教示で止まるようなものではない。むしろ止めようとすればするほど“したい”という衝動が強くなり,止められなくなる。特にメンタルチェッキングのような頭の中だけで行われている儀式行為に関してはそうである。儀式とは両立しない他の行動を増やすことが役立つ。ハビット・リバーサルや負の練習,などの方法がある。意図的に多種類の強迫観念が連続して起こるようにすることで儀式を妨害することもできる。新しい強迫観念で儀式を中断させるのである。
従来,教科書的には「ERPとは儀式をしないことで強迫観念による不安を減らす方法である」と書かれていることが多い。しかし,不安・不快感低減を目指すことは回避行動を増やすことと機能的に同等である。演者は,不安・不快感を減らすことを目的としてERPをしてはならない,不安・不快感を積極的に起こすためにエクスポージャーをし,それを積極的に味わうために儀式を妨害するのであると説明している。これはACT(アクセプタンス&コミットメント・セラピー)と同じ考えに基づくものである。
一般的なERPは入院や10回以上のセッションで行われることが多い。演者はそれを連続3日間に凝縮し,外来集団療法の形式で行うようにした。これを集団集中外来短期治療プログラム(以下,3日間プログラム)と名付けた。これは,①外来通院自体を状況エクスポージャーとして用いる,②自宅の普段の生活環境でのERPを行う,③毎日3日間連続することにより,変化を患者がはっきり分かるようにする,などの特徴がある。プログラムは毎月数人ずつをまとめて行う。プログラムを終えた患者が翌月の患者に対して治療内容と症状の変化を自分自身の体験に基づいて説明するようにした。同じ強迫性障害の患者が治っていく様子を見ることは,ERPに対する動機づけを強める。当日は3日間プログラムの実際について紹介する。
発表スライド

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